ヴァディム・ホロデンコ~完璧な技術と深い音の陰影をもつウクライナの若き巨匠、初の弾き振り
「秀でた音楽性、完璧な技術と洗練された深い音の陰影、輝かしく想像豊かな解釈」――世界で脚光を浴びるヴィルトゥオーゾ、ヴァディム・ホロデンコが12月に4年ぶりの来日を果たします。12日の紀尾井ホール公演は、なんとモーツァルトの20番とベートーヴェンの4番で初の本格的な弾き振りに挑むというのだから、これは聴き逃せません。来日を前に、弾き振りに対する考えや指揮の立場から見えてくること、2つの協奏曲の解釈、そして5日の豊洲公演で弾く「《不屈の民》変奏曲」についても伺いました。
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
弾き振りはすべての責任を負うことも含めてエキサイティング
——ピアニストにとって、弾き振りはエキサイティングな経験だろうと思います。
ホロデンコ そうですね、とても! 実は弾き振りは、2019年にワルシャワの「ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭」で経験したことがあります。18世紀オーケストラとショパンの《ラ・チ・ダレム変奏曲》(モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》の「お手をどうぞ」による変奏曲)を演奏し、とても豊かな経験ができました。指揮者の友人からレッスンを受ける過程もおもしろかったです。
——初めて弾き振りの話が来たときはどう感じましたか?
ホロデンコ 《ラ・チ・ダレム変奏曲》は一見作りもシンプルで簡単かと思ったのですが、実際やってみると独特のアプローチが必要だと気づきました。また、全演奏家に注意を払い続け、責任もすべて自分にかかる状況は簡単ではありません。でもそれも含めて楽しかったですね。
実際、モーツァルトやベートーヴェンなど古典的協奏曲は、本来作曲家たちが自ら弾き振りしていたものです。その意味で、ルーツに戻る演奏スタイルだということもできます。
1986年ウクライナ、キーウ生まれ。モスクワ音楽院で名教授ヴェラ・ゴルノスタエヴァに師事。2004年、18歳にしてマリア・カラス国際音楽コンクールでグランプリを受賞。2010年仙台国際音楽コンクール優勝、2011年シューベルト国際ピアノコンクール優勝に続き、2013年にはヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで圧倒的な優勝を果たすと共に、最優秀室内楽賞と最優秀新作賞も獲得。2019年開催の第7回仙台国際音楽コンクールに、同コンクール優勝者としては初めて審査委員に抜擢。全米各地で頻繁にリサイタルを行なうとともに、ヨーロッパ各国の主要オーケストラとの共演、ソロリサイタルに招聘される。これまでトスカニーニ・フィル、SWR南西ドイツ放送響のアーティスト・イン・レジデンスを務める。ワルシャワの「ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭」には毎年出演。Fazioliホールで録音した「オール・スクリャービン」のCDは『ディアパソン』誌の2018の年間優秀賞を受賞
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