イクリプスTD307MK3試聴記~フォトジェニックな卵形スピーカーで、ニアフィールドが楽しくなる!
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
まるで卵のようにつるんとしたフォルム、ひんやり滑らかな手触り、双子がちょこっとこちらを見つめているような佇まい。
そんなかわいいスピーカーがあるのをご存知だろうか。デンソーテンのイクリプス TD307MK3だ。
写真で見ていたときは、あまりに小さそうだし、形もなんだか変わってるし、音は期待しすぎないほうがいいのかな……と思っていた。
しかしある日、この双子ちゃんが私の部屋にやってきた。夜も深い時間、小さめの音でまずは聴いてみようと、手に取ったのは目の前にあった、平井千絵さんのアルバム『夢』。フォルテピアノの音色が素敵なヘビロテ音源。
お気に入りの真空管アンプからつないでみたところ……びっくり仰天! 一瞬、どこから音が出ているのかわからなかった! 音量そのものは小さいけれど、精細で品がよく、ツヤのある音色がふわ〜〜っと空間にとき放たれた。
「え? え?」と思わず耳をスピーカーに近づけた。音の出どころは間違いなく、この小さな卵ちゃんたち!! ちょっと信じられないくらいに、音の密度・心地よい押し出し、低音から高音までのバランスに、一瞬で心掴まれてしまいまった。
そんな驚愕の出会いを果たしてしまうと、次々にこの子(つい擬人化したくなる!)で聴いてみたい音源が浮かんできてしまう。夜更かし決定(苦笑)。
小さな卵形スピーカーに合う音楽を探して
ラヴェルの弦楽四重奏曲は、ピッツィカートの歯切れの良さから流麗なメロディラインまで、実に鮮やかに響く。
ピアノ、リコーダー、鍵盤ハーモニカというユニークな編成の「おんがくしつトリオ」の映画音楽アルバムは、なんだか心にグサッとささり、目頭も熱くなった。何度も聴いているアルバムなのに、このスピーカーならではの親密感なのだろうか、最高に楽しめた。
このコンパクトさ、音質は素敵だけれど、さすがに19世紀末の巨大編成のオーケストラ曲のようなものを鳴らすのは、音源にもスピーカーにも、お互いに不幸だろう。そう思いつつ、ツェムリンスキーの交響詩《人魚姫》をかけてみたら、やっぱりちょっと違った(苦笑)。
とはいえオーケストラも、ハイドンのシンフォニーなどは歯切れよく、最高に気持ちがいい! 2管編成までの演奏なら、手中に収まるオーケストラ感がむしろ楽しい。精巧なミニチュア模型などを、感嘆しながら愛でている気分になる。
スピーカーと近い距離で聴きたいときに
そもそも、個人的に私は「ニアフィールド好き」なのだ。立派な素晴らしいシステムをメーカーや編集部で聴かせてもらう機会も多いし、もちろんそれらの迫力に心えぐられたりするのだけれど、自室でまったりと好きな音楽を聴くときには、音源に近い位置で聴くのが結構好きです。
その意味でこの卵ちゃんたちは、理想的なサイズ感! ちょうど私とスピーカーが70cmの正三角形になるような位置関係がよい。小さな文机の上に置き、机からの反響も味方につけると、音がふわりと飛翔するように立ち昇り、床からの振動も伝わるほど低音も充実して届く。
なんてことだろう、TD307MK3! 好きです(告白)。
こんなふうに、ノートパソコンで作業する距離感でも、たまらなく良い音に包まれる。幸せ……。
フォトジェニックなのが、この清潔感あふれるホワイトなお姿。日中は窓からの光を浴びて、またいい感じに輝くのですよ。ふと見た姿も可愛くて、ついつい写真に撮りたくなってしまうのです! スピーカーって、そういう対象だっけ?(笑)
つい熱くレビューしてしまいましたが、ニアフィールドで素敵に音楽ライフを送りたいあなたにオススメ! TD307MK3は、「趣味の良さ」を感じる逸品であります。
飯田さんがイクリプス TD307MK3の音を空気録音して紹介!
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