映画『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』の貴重なアーカイブ
ロックの殿堂に残るエリック・クラプトンのすべてをさらけ出した自伝ドキュメンタリー。アーティストとしては天才だが、壮絶な私生活を隠さず描いた作品をライター・よしひろまさみちさんが紹介。
音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...
洋楽があまり得意じゃない、っていう人でも、一度は耳にしたことがあるはずの名前。エリック・クラプトン。そりゃそーよねー。名だたる内外アーティストが、リスペクトするアーティストとして必ず名前を出すのが彼だもの。
グラミー賞を18冠、ロックの殿堂も3回、ロックミュージシャンとして、ギタリストとして、当代最高と言われるクラプトン。そんな彼のドキュメンタリー映画『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜』が公開されています。
クラプトンのすごさって、知らない人にとってみると「はて?」という感じでしょうけど、そもそも彼はデビューからずっと脚光を浴び続けてきたんですね。ただ、困ったことに彼って取材をあまり受けないことでも有名。じつはかつて発売された自伝も、それほど掘り下げておらず、微妙なところでして。だからこそ、彼のドキュメンタリーなんて作ること自体が無理、ってもんなんですよ。
ところが、うまいことやったな、と思うのが、無数に残されている彼のアーカイブ映像を「これでもか!」と使い切って、彼の半生をたどっていくという構成。これなら、彼本人に直接振り返ってもらってすっごい長いインタビューを敢行なんて、無茶なことをしないでもOK〜。とはいえ、編集次第では、よきも悪きもどうにでもできちゃうのがアーカイブ映像の難しさ。
この企画が実現したのは、監督を務めたリリ・フィナック・ザナックが、かつて手がけた『ラッシュ』という映画で、クラプトンに音楽を担当してもらってからの仲だから。彼女がやってくれるならいいよ、とクラプトンが快諾したんですって。
作品は、幼少期から始まるんだけど、いきなりの衝撃。彼が9歳のときに明かされたのが、じつは彼が両親と思っていた人は祖父母で、実の母は彼の姉と呼んでいた人。しかも、実の母は彼のことを拒んだことが、彼のトラウマに。その反動から、当時流行したブルースにハマり、ギターにすべてを打ち込み始めるのね。
その後はギターでの成功街道。ルースターズ、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ブルーズブレイカーズ、そしてクリーム。サウンドで世界を魅了し、ロックギターの概念を変えていくのね。ただ、その裏でもトラブルはたくさんあって、特に彼の親友でもあるジョージ・ハリソンの妻パティ・ボイドとの恋に関しては、むちゃくちゃたっぷり描かれているの。ちなみに、その恋において生まれたのが名曲「いとしのレイラ」。しかも、そのリリース後に破局し、しかもギターの神様同士で友だちだったジミ・ヘンドリックスが急逝したりで、何年もの間ヘロインとお酒に溺れてしまうのよね……。そのころ収められた映像ではクラプトンが思い切り酔っぱらい状態でインタビューに答える様子も。
アーティストとしては天才、だけど私生活は波乱万丈。おおかたのロックスターはなかなか壮絶な人生を歩んできているもんだけど、クラプトンのそれは今まで明かされたことがないだけにビックリの連続。過去映像にはジミヘン、BBキング、ザ・ローリング・ストーンズなど、やたら豪華な面々が出てくるのも見どころよ。
監督:リリ・フィニー・ザナック(『ドライビングMISSデイジー』製作)
製作:ジョン・バトセック(『シュガーマン 奇跡に愛された男』『We Are X』)
編集:クリス・キング(『AMY エイミー』)
音楽:グスターボ・サンタオラヤ(『ブロークバック・マウンテン』)
出演ミュージシャン:エリック・クラプトン、B.B.キング、ジョージ・ハリスン、パティ・ボイド、ジミ・ヘンドリックス、ロジャー・ウォーターズ、ボブ・ディラン、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ビートルズ…etc.
配給:ポニーキャニオン/STAR CHANNEL MOVIES
関連する記事
-
ブラームスの交響曲を名盤で聴こう! 音楽評論家が選ぶBEST 3と楽曲解説
-
北村朋幹のリスト「巡礼の年」全曲 独自のプログラミングで聴き手を深い思考へ誘う
-
近年注目のマックス・レーガーによるオルガン作品集 暗く分厚い時代の響きを味わう
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly