読みもの
2023.07.26
「クラシック専門ライターの音楽界トレンド・ウォッチ」最終回

ソロからアンサンブルまでフィールドを広げる オーケストラの人気プレイヤー7人

最近、政府が働き方の多様化や人材の流動化を目的としてサラリーマンへの副業や兼業を推奨していますが、人材の流動化はともかくとして、“副業”はクラシック音楽界とくにオーケストラではあたりまえのように行なわれていることです。
外来オーケストラの演奏家だけでなく、いまでは国内でもオーケストラ・プレイヤーたちの個性が光る魅力的な企画が目白押しです。これは日本の楽団が名手たちの集団であることの証でもあります。今回はオーケストラを拠点としながら、独自の活動を展開する日本の活きのいい男性奏者たちに、スポットを当ててみたいと思います。

城間 勉
城間 勉

1958年東京生まれ。子どものころからピアノを習ってはいたが、本当にクラシック音楽に目覚めたのは中学生時代にモーツァルトの魅力に触れてから。バレンボイム&イギリス室内...

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1. 郷古 廉 

(NHK交響楽団ゲスト・コンサートマスター)

人気急上昇中。ソリストとしても世界水準の音楽性

郷古 廉 Sunao Goko
1993年12月2日生まれ。宮城県多賀城市出身。2006年第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位(史上最年少優勝)。2013年8月ティボール・ヴァルガ・シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝ならびに聴衆賞・現代曲賞を受賞。
2007年12月のデビュー以来、全国各地のプロ・オーケストラと共演。共演指揮者にはゲルハルト・ボッセ、秋山和慶、井上道義、尾高忠明、小泉和裕、上岡敏之、下野竜也、山田和樹、川瀬賢太郎各氏などがいる。これまでに勅使河原真実、ゲルハルト・ボッセ、辰巳明子、パヴェル・ヴェルニコフの各氏に師事。国内外の音楽祭でジャン・ジャック・カントロフ、アナ・チュマチェンコ各氏のマスタークラスを受ける。2019年第29回出光音楽賞受賞。2022年4月、NHK交響楽団ゲスト・アシスタント・コンサートマスター、2023年4月よりゲスト・コンサートマスター。

幼少の頃から井上道義と共演するなど優れた才能が認められ、その後ソリストとして活躍してきた俊英で、内外の多くの賞を勝ち取るなど、もちろん世界水準の音楽性の持ち主。N響のゲスト・アシスタント・コンサートマスターとしての仕事を経験し、今年の4月からゲスト・コンサートマスターとしてステージに立っています。人気急上昇中で、日曜日夜9時からの「クラシック音楽館」でN響が出演する回では、彼の演奏姿がアップになることが多い。

N響での演奏以外にも「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2023」に出演するなど、幅広い活動を続けています。彼目当てにN響を聴く&観る人は増えているはずです。

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2. 石田泰尚 

(神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席ソロ・コンサートマスター、京都市交響楽団特別客演コンサートマスター)

もはやカリスマ。「石田組」での活動もパワーアップ

石田泰尚 Yasunao Ishida
国立音楽大学を首席で卒業、同時に矢田部賞受賞。新星日本交響楽団コンサートマスターを経て、2001年より神奈川フィルハーモニー管弦楽団ソロ・コンサートマスターに就任。以来、“神奈川フィルの顔”となり現在は首席ソロ・コンサートマスターとしてその重責を担う。これまでに神奈川文化賞未来賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞。幅広いレパートリーを誇り神奈川フィル他各地のオーケストラと協奏曲の演奏やリサイタルを行ないソリストとしての顔も持つ。2018年『音楽の友』4月号「クラシック音楽ベストテン」においてソリスト・室内楽など4部門にランクインするなど、各方面から高く評価されている ©Norizumi Kitada Universal Music

もはやカリスマといっていいほどの人気と存在感を誇る人。神奈川フィルでは熱烈なファン(大部分は女性)が常に彼の雄姿と演奏を聴きに押しかけるわけです。独特なファッションと足を大きく開いたポーズは、一度生で観て(聴いて)ほしいもの。一見するとちょっと怖そうですが、実は彼、意外にシャイな性格で、インタビューでも自分を大きく見せることはない。そこが魅力になっているのかもしれません。

とはいえ、オーケストラと別に、自ら組織した男性のみの弦楽アンサンブル「石田組」での意欲的な活動はますますパワーアップし、現在も大ツアー決行中。凄絶なもりあがりを見せています。

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