2022.03.01
魔王って何者? 気になる正体を明かす!
シューベルトの《魔王》は実は「妖精の一撃」だった!?〜ゲーテの歌詞の原典からたどる意味
教科書でも紹介され、広く知られているシューベルトの歌曲《魔王》。この曲の歌詞はゲーテによる詩ですが、ドイツ語のタイトルを直訳すると「ハンノキの王」。しかも、これには元ネタがあって、原題では「妖精の一撃」だったのです! タイトルの変遷を紹介します。
元ネタのヘルダーの研究者
元ネタのヘルダーの研究者
山取圭澄 ドイツ文学者
京都産業大学外国語学部准教授。専門は18世紀の文学と美学。「近代ドイツにおける芸術鑑賞の誕生」をテーマに研究し、ドイツ・カッセル大学で博士号(哲学)を取得。ドイツ音楽...
シューベルトの《魔王》は、中学校の授業で取り上げられるなど、日本でもおなじみである。疾走する馬、忍び寄る魔王、不安に駆られる父子をドラマチックに描いた作品だ。多くの方が印象的な三連符の連続と「おとうさん、おとうさん」というフレーズを覚えているだろう。
続きを読む
シューベルトが曲をつけたのは、詩人ゲーテのバラードだった。「父親」は人間の知性を示し、「魔王」は人智を超えたもの(自然の神秘)を表している。子どもがいくら訴えても、大人には「魔王」が見えず、何もできない。
この物語には、ゲーテの自然への畏怖が込められている。父の無力さは、作品が書かれた時期を踏まえると、啓蒙主義の終わりを暗示する。科学がどれだけ発達しようとも、人間には世界のすべてを理解することも、自然に抗うこともできない。
こうした自然観こそが、シューベルトや日本人の心を捉えたのであろう。
ゲーテの歌詞には元ネタがあった
しかし、「魔王」というモチーフは、ゲーテが一人で作り上げたのではない。実は、友人ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(1744〜1803)の『民謡集』からヒントを得ている。題材になったのは、『魔王の娘』という作品で、ヘルダーがデンマークの民謡をドイツ語に訳したものだ。
関連する記事
-
第10回 ブリテン《ピーター・グライムズ》〜明日は我が身
-
第9回 R.シュトラウス《サロメ》〜喉から手が出るほど欲しい!!
-
第8回モーツァルト《魔笛》〜善悪は水波の如し
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
2025.04.01
2025年4月の運勢&ラッキーミュージック☆青石ひかりのマンスリー星座占い
2025.03.31
【音楽が「起る」生活】ヤーコプスのバロック最先端、期待のムーティ「ローマの松」
2025.03.30
マリア・テレジアは「ヨーロッパ最初のヴィルトゥオーサ」?~モーツァルトやハイドン...
2025.03.29
【林田直樹の今月のおすすめアルバム】ベートーヴェン愛を感じる、バティステの味わい...
2025.03.28
30秒でわかるラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
2025.03.28
30秒でわかるショパン:ピアノ・ソナタ第3番
2025.03.28
30秒でわかるラヴェル:《ボレロ》
2025.03.28
30秒でわかるエルガー:愛の挨拶