フルート自慢その2:横に構える流麗な演奏姿
東京芸術大学附属音楽高校を経て、東京芸術大学をアカンサス音楽賞を得て首席で卒業。同大学院修士課程修了。第76回日本音楽コンクール第1位を受賞。併せて岩谷賞(聴衆賞)、...
前回紹介した「天上の音」に続いて、フルートの大きな特徴と言えるのが、その吹き姿です。
横に構えるフルート
もともとヨーロッパでは、フルートと言えば縦笛のことを指していましたが、「横に構える」という意味が加わったフルート・トラヴェルソが徐々に広まっていきます。
人間の体にとっては縦に構える方が自然であるにもかかわらず、横に構えるフルートが主流になった理由として、楽器構造の問題と、時代の流れが挙げられます。
縦に構えるリコーダーは、咥えて息を吹き込むという構造上、空気の通り道が固定されているために、音量や音色の変化がつけにくいという性質があります。それに対してフルート・トラヴェルソは、歌口が開放されているため、細かなコントロールが可能で、音量差がつけやすいという特徴がありました。
ちょうどバロック時代には、以前よりも明確な強弱やクレッシェンド、ディミヌエンドが求められるようになり、音色や音量の変化が付けやすいフルート・トラヴェルソのほうに軍配が上がるようになります。
ベルナール・ピカル作、1707年。
このように、さまざまな事象が重なり広まっていった横に構えるフルートですが、結果として生まれた、腕を上げて左右非対称に構える流麗なフォルムも、この楽器の大きな魅力となっているように私は思っています。
また、楽器の中で、演奏中に自分が演奏している楽器を自分で見ることができないのはフルートだけかもしれません。だからこそ、奏者は「演奏している」という感覚から離れて音の世界に没頭できる……。それもまたフルートの大きな魅力であると思います。
フルートの魅力を味わう作品
バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータ
大バッハも1720年頃からフルート・トラヴェルソを多くの場面で使いました。この「無伴奏フルートのためのパルティータ」は、フルート独奏曲の最高傑作のひとつと言われています。
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