チェロ自慢その2:人の声に近く、言葉以上に強い思いを代弁してくれる音色
第72回日本音楽コンクール第1位、2006年「プラハの春」国際コンクール第3位(1位なし)、2008年エンリコ・マイナルディ国際コンクール第2位。2009年齋藤秀雄メ...
平和への思いを語ってくれる楽器
チェロは、その音色が人の声に近い楽器であるせいか、言葉を話す以上に思いを伝えてくれるように感じる。20世紀最大のチェリストと称されるパブロ・カザルス(1876〜1973年)が、ニューヨークの国連本部において演奏した「鳥の歌」は、自由をもてなかった故郷カタロニア地方の人々の気持ちを代弁したかのようだった。
政治的圧力のなかで、芸術だけが言葉となり人々へ発信されていたのだ。
「音楽は、愛のない人びとから憎しみを追い払う。音楽は休息のない人びとに平和をあたえる。音楽は泣いている人びとをなぐさめる」とは、カザルスの言葉である。
また、ロシアの巨匠、ムスティラフ・ロストロポーヴィチ(1927〜2007年)が、ベルリンの壁の前で演奏する姿をテレビで見たときの衝撃は忘れられない。
ベルリンの壁がとうとう壊されると知ったとき、彼はチェロを持ち飛行機に飛び乗った。長い間東西を分断していた壁の前でバッハの無伴奏チェロ組曲を演奏し、たくさんの人がその演奏に耳を傾け共感していた。
言葉以上に人の気持ちを汲み取ることがチェロという楽器には可能なのではないかと思う。平和を訴えかける、それは、ただ言葉で伝えるだけではとても難しい。だけど、チェロの音色を通し、強い思いを楽器に代弁してもらう、そうして温かな音色は人々の心にダイレクトに伝わるのではないだろうか。
チェロの魅力を味わう作品
カザルスがホワイトハウスで演奏会をした際の録音
「音楽をすることは言葉を話すように自然なことだった」というカザルス。その「言葉」は平和への願いを誰よりも強く、まっすぐに伝えてくれる。
ロストロポーヴィチによるバッハの無伴奏チェロ・ソナタ第3番より「ブーレ」
ベルリンの壁の前で演奏した曲。
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