インドの貧困層にいるパフォーマー・カーストの若者にヴァイオリンを教える理由
足繁くインドに通う、クラシック音楽のフリーライター、高坂はる香さんによる連載「インドのモノ差し」。
第5回となる最終回は、高坂さんご自身が立ち上げたインドでのプロジェクトについて、始めた経緯や、対象者であるパフォーマンスを生業とする若者たちの反応や現状を紹介していただきました。
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
伝統的な大道芸にみるインド社会
パペットショーは、インドの伝統的な大道芸の一つ。躍動感あふれるドラムのリズムとともに堂々たる歌声が響き、それに合わせて、操り人形たちが繊細で鮮やかなダンスを舞う——ショーが始まれば多くの人が足を止め、美しいダンサーや仕掛け人形の踊りに真剣に見入り、歓声をあげます。
マジシャンのパペット。仕掛け人形になっています。頭がとれますのでご注意。
長い時を越えて人々を惹きつけるこのパフォーマンスを行なうのは、人形遣いのショーを生業とする家系に生まれた、パペッティア・カーストの人たちです。
インドの独立以後、法律上カーストによる差別が禁止されたとはいえ、国民の大部分を占めるヒンドゥー教徒の社会生活には、今もその価値観が大きな影響を与えています。そして、基本的に結婚は同じカースト内、職業はカーストと結びついて定められたものを世襲するしきたりの中で生きている人も、まだたくさんいます。
パペッティア・カーストはそんなカースト制度において、最下層のダリット(※壊されし人びとの意)、かつて不可触民と呼ばれた階層にあたります。
私は学生時代、そんなパペッティアをはじめとする大道芸人カーストの人々が集まって暮らす、デリーの巨大なスラムの支援プロジェクトの研究をしていました。
ここまで、この連載でインドのクラシック音楽事情について紹介してきましたが、そもそもなんでクラシックの音楽ライターがインドの話題を扱っているのか、インドに関わって何をしようとしているのかとお思いの向きもあると思い、番外編として最後にご紹介しておこうと思います。
2004年、デリーの銀座的なエリア、コンノートプレイスの道端でパフォーマンスをしたときの様子。すごい人だかり。人形の腰振りと、それに盛り上がるおじさんたちにご注目ください。(古いビデオで画像がイマイチですが、ご了承ください)
関連する記事
-
フランチェスコ・トリスターノさんのカッコよさと、ユザーンさんと共演した過去
-
指揮者の沼尻竜典さんの「ベルリンの壁」崩壊時にドイツ留学していた話から
-
NHK BSプレミアムのショパンコンクール番組の収録に参加した話
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly