ジョルジュ・サンド『マヨルカの冬』〜ショパンや子どもたちと過ごした日々
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
前々回ご紹介した漫画『ピアノの森』に続き、ショパンコンクール開催年に読むことをおすすめしたい本を、もう一つ挙げておこうと思います。
それは、ショパンの恋人だった小説家、ジョルジュ・サンドの書いた『マヨルカの冬』(小坂裕子訳/藤原書店)。
ショパンの6歳年上、男勝りで強い女性だったサンドは、病弱なショパンを献身的に支えました。その母のような愛に包まれて、ショパンは充実した創作活動を行なったといわれます(もっとも、やがてサンドは、すっかりお母さん役になってしまったことに不満を募らせてゆくわけですが)。
付き合いだした頃、パリのゴシップを避けて、二人はマヨルカ島に渡ります。その出来事が綴られているのが、この『マヨルカの冬』。体の弱い作曲家の恋人と自分の子どもたち(サンドは別の男性と結婚して子どもを持ち、別居状態にありました)と過ごした、マヨルカ滞在記という形です。
この旅は、ショパンの療養を兼ねていたにもかかわらず、天候も悪く彼の体調は悪くなる一方で、散々なものだったと伝えられています。実際これを読むと、本当にひどかったんだなと気の毒になるほど。
しかしだからこそ、有名な「雨だれ」を含む名作《24の前奏曲》などが生まれたこともわかり、感慨深いものです。
ショパン《24の前奏曲》〜第15曲「雨だれ」
興味深いのは、不親切な島の人々についてサンドが書いている言葉が、これでもかというほど辛辣だということ。つまりショパンも、こういう毒舌を受け入れる皮肉さやユーモアセンスの持ち主だったのだろうな……と思いました。
今は古本しか手に入らないようですが、日本語訳が出ていることが嬉しい一冊です。
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