2020.05.29
高坂はる香の「思いつき☆こばなし」第10話
遠藤周作が綴るモーツァルト
高坂はる香 音楽ライター
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先日、調べ物をする中で、遠藤周作(1923-1996)の『王妃マリー・アントワネット』を読む機会がありました。王室の人々はもちろん、民衆、さらには死刑執行人の視点もとりつつ、次々と場面が切り替わり、ぐんぐん読める。さすが遠藤先生という内容です。
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そのなかでクラシック音楽好きとしては、たびたびモーツァルトの気配が感じられることがうれしい。
少年時代のモーツァルトが、マリア・テレジアの御前演奏のためシェーンブルン宮殿を訪問し、転んだところを起こしてくれたやはり少女時代のアントワネットに、将来お嫁さんにしてあげるといったというエピソードがあります。遠藤周作作品ではその場面だけでなく、時々アントワネットが「あの人どうしているかしら」的にモーツァルトのことを思い起こしてくれるのです。
遠藤周作の母はヴァイオリン科で学んだ女性で、彼はそんな母が「たった一つの音を掴み出そうと」厳しい練習を繰り返す姿について書き残しています。
音楽にまつわるタイトルがつけられた小説もいくつかありますが、なかでも『ピアノ協奏曲第二十一番』では、モーツァルトのあの美しい音楽が、これまたさすが遠藤先生……という形で登場します。音楽の印象を揺るがしかねないインパクト。遠藤周作作品のパワーの強さを思い知らされます。短編集には、表題作以外も、重く心に残る文章が収められています。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
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