適応力あり!?インドのくるみ割り方法とロシアのダニール・トリフォノフ
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先週の「くるみ割り人形」のお話ついでに、くるみ割りで思い出すインドの話を。
デリーから深夜のフライトで発つ日の夜、インド人の友人宅に夕食に招いてもらったときのことです。私はその後、2週間ほどかけてヨーロッパ何カ国かをまわってから、日本に帰ることになっていました。
空港に向かう準備をしていると、なにかお土産をと夫婦であちこちからいろんなものを出してきます。すると奥さんが、お腹が空いたときに食べなさいといって、袋にたっぷり入ったくるみをくれました。
……固い殻のついた状態で。
嬉しいけど、もらっても割る道具がないから、旅の道中ずっと食べられないよ、と私。
すると彼らは、「なにいってんの、こうやって割ればいいんだよ」といって、ドアの蝶番の隙間にくるみをはさみ、ドアを閉めることでいとも簡単に割ってみせてくれたのです。
いやすごい。絶対自分では思いつかない。
そこにあるものでなんとかする精神に感心すると同時に、この一家、くるみを食べるときはいつもドアの隙間に挟んでいるようだったので、ちょっとおもしろいなと思ったものでした。
*
インドの人々はこんなふうに、あるもの、できることでなんとかする才能がすごいですが、西洋クラシック方面の国で同じようなことを感じるのは、やっぱりロシアです。
このところで感心したのは、モスクワ音楽院近くの路地で見た光景です。
トランク全開で走り出した車が、突然急ブレーキをかけて、その勢いでバタンとトランクを閉じ、そのまま走り去っていった、という。聞くところによると、寒い国あるあるのようです。
確かにマイナス何十度の冬、トランク閉め忘れたくらいで車の外に出たくないか……。まあ、私がこの光景を見たのは、夏の6月のことでしたが。
ロシアも近年状況が変わり、いろいろなことが便利になっていると感じますが、日本に比べてしまえば、やはり不便のなかでなんとかしなくてはいけないことが多い。
ピアノに関しても、少し前まではとくに、音楽院の練習室ですら、鍵盤が上がってこないとか調整されていないといか、コンディションの悪いものが多かったようです。
こちらは、モスクワ音楽院大ホール裏の待合スペース的なところに置いてあったアップライトピアノと、この状態だけど、本番前ついそれを弾いてしまう、若き日のダニール・トリフォノフさん(2011年)。
ダニール・トリフォノフのトップトラック
ロシアのピアニストは、若い頃からこのようないろいろなコンディションのピアノを受け入れ、それでできる限りのことをしようとせっせと練習していると思われます。だからこそ、逆にあらゆるピアノへの適応能力が高い、なんていわれたりもしますね。
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