東京事変『音楽』のライナーボイスで椎名林檎が語った「口の形」
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
今年、東京事変が10年ぶりにアルバムをリリースしました。その名も『音楽』。
東京事変 『音楽(ミュージック)』ティザー映像
2012年に一度解散し、2020年に再出発するも、パンデミックの影響でライブなどができず、また予定されていたオリンピック、パラリンピック関連の活動も中止となってしまったといいます。
そんな中でも制作を進め、リリースされたのがこのアルバム。今の日本社会のあり方、そこに生きる人たちの心、この社会に生きる人々に伝えたいことが、クールかつ心地よく、でも少し敏感な神経にさわるような、独特の音楽にのせて語りかけられます。
それで先日、Spotifyで、このアルバムの各曲について椎名林檎さんが解説するインタビューを聞いていました。そのなかで印象に残ったことがあります。
椎名林檎が音声で全曲解説しているライナーボイス+:東京事変『音楽』
「薬漬」(トラック23)について説明しているとき、林檎さんが、人はそれまでの口の開け方で、口の形が変わっていく、という話をしていたのです。歳を重ねてくると、それまでにどんなことを言ってきた人なのか、品性がどんな人なのかが、口の形に出る、と。
性格が表情に出るとか、歩んできた人生が佇まいに出るとかはよく聞きますけれど、どんなことを言ってきたかで口の形が変わるというのは、おもしろい。
よく自己啓発本的なもので、ネガティブな言葉はNG、ポジティブな言葉を口にしましょう! なんなら無理にでも置き換えてしゃべりましょう! みたいなものがあって、いや、そんな表面的なことで性格や人生が変わるかいな、と私なんかは思ってしまいますが、実際、ネガティブな言葉を発したくなる精神状態が良くないのはその通りだと思います。
自然と優しい言葉が口をついて出て、口が優しい形になる人間になりたい。
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さて、そんな椎名林檎さん、ピアノとバレエを習っていたことから、かなり小さな頃からクラシック音楽に親しんでいたようです。以前、NHK-FMでクラシックをテーマとした特番のMCをつとめられたこともあります。
デビューシングル『幸福論』のカップリング曲「時が暴走する」では、モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番K.331(トルコ行進曲付きで有名な曲です)の1楽章の一部が急に引用されたりしています。とはいえ曲自体は、そんなふうに18世紀をちらつかせながらも、トーンクラスター風の音で終わるというさすがの展開。
椎名林檎「時が暴走する」とモーツァルト「ピアノ・ソナタ第11番 K.331」第1楽章
クラシックの原体験は、ドビュッシーのピアノ曲だったそうです。東京事変の曲も、キーボード伊澤一葉さんのピアノパートが気持ち良いものが多いですね。
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