手紙から見えてくる「最高のコンビ」だったモーツァルト父子
2020.12.10
メシアン「トゥランガリーラ交響曲」~発音要注意! サンスクリットの直訳は“馬の遊...
青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...
モーツァルトのオペラ作品《コシ・ファン・トゥッテ》(1790年、ウィーンにて初演)は、名前だけは広く知られていますが、作品内容を知らないと、このイタリア語による作品名の意図するところはわかりづらいでしょう。
日本語では「女は皆こうしたもの」と訳されることが多いでしょうか。2人の男が互いの彼女の貞節を試すために、それぞれが彼女ではない女性のほうにアプローチし、結局どちらも陥落してしまう。もうこの段階で2人の男は不幸のどん底にいるわけですが、さらに彼氏が彼女の不実を責め、彼女が彼氏の悪巧みを非難し……。これほど後味の悪い結末のオペラも少なく、正直、男性の側にはあまり同情する気にはなれないです。
第2幕のフィナーレ直前、2人に悪巧みを唆(そそのか)した老人が、2人を慰める(?)ためにこの台詞を声高らかに歌わせるわけですが、ここでいう「女は皆 tutte」(女性複数形)は、一般的な女性全体というよりは、当の彼女2人だけを指していると考えておいたほうが(いろいろな意味で)よさそうです。
快活な音楽のあちこちから立ちのぼる繊細な心理描写。モーツァルトの人間観察の巧みさが光ります。