山根一仁、いまもなお深化し続けるバッハへの熱い想いの現在地
2023.06.10
音楽写真家・小原敬司が撮影した伝説の音楽家たち #1
サンソン・フランソワ来日、通訳は安川加壽子~1か月半もの長きにわたる滞在
日本で最初の音楽カメラマンといわれる小原敬司(おはら けいじ/1896-1986)が記録した膨大な数の写真のネガ約24万コマが、昭和音楽大学附属図書館に所蔵されています。
6年ほど前から少しずつ、そのアーカイヴをリサーチしてきた林田直樹さんが、その1枚1枚を丁寧に見てきた中で、これは特に重要と考えられるカットを、この連載でご紹介していきます。
林田直樹 音楽之友社社外メディアコーディネーター/音楽ジャーナリスト・評論家
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
かつて、海外から著名な演奏家が来日するということは、それだけで社会を揺るがす大事件であった。
たとえば昭和31年秋、フランスの人気ピアニスト、サンソン・フランソワ(1924-70)の来日公演。10月31日の日活国際会館での記者会見には多くの取材陣が詰めかけ、通訳にはフランス語に堪能なピアニストの安川加壽子があたり、パリ音楽院の先輩に当たる池内友次郎(いけのうち ともじろう)も同席した。
11月5日に東京会館で歓迎レセプションがおこなわれた際には、古垣鐵郎NHK会長(当時)や芦田均元総理らが駆け付けている。
当時まだ32歳の青年ピアニストとはいえ、ショパンや近代フランス音楽の分野においてフランソワがどれほど重要な音楽家であるかを、当時の日本の音楽界、そして政治やマスコミの世界の人々までもが知っていた。
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