読みもの
2025.02.17
税理士・栗原邦夫さんにきく

インボイス、「年収の壁」…音楽系フリーランスも知っておきたい最近のお金のニュース

音楽系フリーランスのみなさん、今年も確定申告の時期がやってきました! 毎年の変更点に加え、いまいちわかりにくいインボイス制度や改正電帳法のことなど、提出準備でお悩みの方もきっと多いはず……。

そこで、音楽家のお金の悩みを長年解決し続けてきた税理士・栗原邦夫さんに、最近のお金に関する話題について聞いてみました。お金への意識を高めて損しないようにしていきたいですね!

音楽之友社出版局書籍部
音楽之友社出版局書籍部

出版局書籍部では、クラシック音楽を中心にプロの音楽家・指導者・研究者向けから演奏や鑑賞の初心者向けまで、音楽に関するあらゆる本の編集を行っています! 半世紀以上におよ...

“くりさん”こと栗原邦夫さん

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お話をうかがったのは、『音楽家、指導者、フリーランスのための確定申告・税金ガイド オンカク』(音楽之友社)の著者であり、現役音大聴講生の税理士・栗原邦夫さん(以下、くりさん)。

『オンカク』は2019年出版から毎年改訂を重ねて6年目、多くの音楽系フリーランスの確定申告をサポートし続けてきました。

ONTOMOへの登場も4回目となり、「初めて確定申告をやってみた。」や「確定申告事情とインボイス制度のポイント」「インボイス制度、改正電帳法…今どきの確定申告ガイド」ではお役立ち情報やアドバイスをたくさん教えてもらいましたね。

今回は音楽家のインボイス制度の現状など、最近の気になるトピックスについて、くりさんに聞いてみたいと思います!

栗原邦夫(くりはら・くにお)
開業後、プロの税理士としての実力はもちろん、マーケティング力やトーク力を武器に異例の大成長を遂げる。オスカープロモーションにスカウトされタレントとして一時期所属。2014年からは東京音楽大学にてジャワガムランを受講、そこで相談を受けた学生たちとともに音大生・音楽家向け確定申告講座「オンカク®」を立ち上げる。
2020年以降のコロナ禍には、音楽家向けに、各種給付金や補助金の情報発信と相談窓口を開設。LINE@相談のやり取りは20万チャットを超え、支給された給付金などは1000件を超える。
音大生・音楽家向け確定申告講座「オンカク®」公式サイトhttps://onkaku.clearclear.jp/
LINE@ http://nav.cx/d0hmi7Q

音楽家、指導者、フリーランスのための確定申告・税金ガイド オンカク 【2025改訂版】

定価:1,540円 (本体1,400円+税)

「税金のこと、よくわからな~い(泣)」という演奏家、指導者、作曲家、編曲家、ライター…音楽業界に携わるすべてのフリーランスとその卵に捧ぐ、確定申告・税金ガイドの決定版。「インボイス制度」や「電子帳簿保存法(電帳法)」の解説はもちろん、「定額減税」で追加された欄への記入方法もフォロー。

音大を卒業したばかりの主人公の相談にのるストーリーで、税金と確定申告について、わかりやすく解説。“音楽家によくある経費”の具体例を豊富にあげながら、帳簿のつけかたから確定申告書の書き方まで指南する。

音楽教室を営む人のための「特別レッスン」や、ビジネス感覚が身につく「おせっかいビジネス講座」などのコーナーも充実。

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いまいちわかりにくい「インボイス制度」。フリーランス音楽家の理解度は?

――インボイス制度がスタートして1年ちょっとですが、今も、くりさんのところに相談は来ますか?

くりさん うん、やっぱりインボイス制度の相談は今も多いね。制度の基本的なことなんかは『オンカク』の本にも書いたつもりなんだけど、番号を取得するかどうかのスタンスは本当に人それぞれだから、一人ひとりの状況に合わせて考える必要があるんだろうなあ。

確定申告のセミナーをやっても、インボイス制度についてはなかなか時間内で伝えきれないほど複雑だしね……。

――番号の取得で悩んでいる方、まだまだ多いんですね

くりさん うん、正直、様子見している人が多いっていう印象かな。俺の肌感では、年間売上が1,000万円を超えていないのに自らすすんでインボイス番号を取得して課税事業者になった人はあまり多くないかな、って思うよ。

――インボイス制度を理解するにはまず「税」のことを知る必要があって難しそうです……。

くりさん だよねぇ。「税」と一言でまとめちゃうと確定申告と混同しちゃったりするからさ。インボイス制度は「消費税」に関する制度確定申告は「所得税」に関する申告、という違いをまず押さえよう。

『オンカク』準備編レッスン1の「音楽家が損しないインボイス制度のポイント」(p.25)では図も使ってなるべくわかりやすく説明してみたよ。

フリーランスの音楽活動には消費税がかかるって相手に伝えることで1万円の入金が1万1,000円に増える、ってケースもあるからね。消費税の知識を身につければ損することも減るってことなんだ。

『オンカク』準備編レッスン1の「音楽家が損しないインボイス制度のポイント」(p.25)では、
インボイス制度の基本から登録の考え方、登録申請の方法までしっかり説明していきます

「年収の壁」はどう考えたらいい!?

――次の税制改正で「年収103万円の壁」が123万円に引き上がることが2月4日に閣議決定しましたね。これってフリーランスにも関係あるんでしょうか? 何をどう気をつけたらいいんでしょうか……。

くりさん この話は去年からニュースなどで話題になっているし、自分の収入に影響があるんじゃないかと不安になっている人も多いかもしれないよね。でもこれ『オンカク』にも書いたんだけど、「123万円という数字自体」(オンカク本の時点では103万円)はフリーランスの働き方には直接的には関係ないんだ。

ちなみに、103万円と123万円の差額の20万円なんだけどさ。この内訳は、給与所得控除ってのが10万円、基礎控除ってのが10万円なのね。

だから音楽家の事業収入に関係あるとしたら、基礎控除の部分だね。準備編レッスン2を読んでもらえたらと思うんだけど、誰でも必ず引ける基礎控除ってのがあってね、全員が48万円控除できるものなんだ。でも次からはこれが10万円引き上がって58万円になるんだよ。

だから、意識しすぎて仕事量を調整したり収入の変化を心配する必要はないと思うよ。直接関係があるのは会社に雇用されて時間給などで働いていたり、派遣会社に登録して働いているような人だね。

――仕事の契約形態で異なるってことなんですね。

くりさん そうだね。でも音楽家の働き方はいろいろあって、例えば本業以外の仕事を「アルバイト」って呼ぶ人も多いけど、実際は単発のフリーランスの仕事だったりするよね。事業所得と給与所得を勘違いしている人も多いから注意しようね。

――音楽家のなかには、演奏、講師、その他のバイトなどいくつかの働き方を組み合わせているパターンも多そうですね。

くりさん うん、そうなんだ。所得の種類が異なると税金の計算方法も変わってくるし、音楽家の確定申告がややこしくなっている原因のひとつでもあると思うんだ。

『オンカク』の主人公「りさ」は、まさにこのケースの働き方をしていて、準備編レッスン1ではその基本から解説しているからぜひチェックしてみてほしいな。

お金への意識が高い音楽家がすっごく増えている

――『オンカク』は改訂を重ねて今年で6年目になりました。毎年必ず購入してくださる方がいる理由は何でしょう?

くりさ いやあ、ありがたいことだよねぇ。これ、毎年考えてるんだけどさ。この本やコロナをきっかけにお金のことに興味のある音楽家がすっごく増えてるってことなんじゃないかなぁ。俺自身、その実感もあるしね。毎年の新しい情報を取りこぼさずに知識をアップデートしていこうって考えてる音楽家が増えてるんだと思うし、俺もそうあってほしいと思うな。俺の願いとしては、お金のことで損しない音楽家がもっともっと増えてほしいんだよね。

――お金の悩みが減ると音楽家として自信を持てたり、仕事も発展させられそうですね。

くりさん うん、それはほんとにその通りだと思う。お金の勉強から始まって、ビジネスに興味をもつ音楽家も最近増えているんだ。『オンカク』のコラム「くりさんのおせっかいビジネス講座」では、音楽家として稼ぐための心持ちや自己投資について書いてるので、ぜひ読んでみてね。

――今回が初めての方も、毎年の方も、最新の『オンカク2025改訂版』を読んで確定申告の準備を進めてもらいたいですね。

くりさん そうだね。初めての人は最初から100点の提出を目指さなくてもいい、ってことを伝えたいな。40~60点くらいの出来でも申告してみるってことが経験になるし、少しずつ学んでいければいいんじゃないかな。税務署は、ちゃんとやってる人には親切なところだからね!

――今日はいろいろ教えていただきありがとうございました。それでは音楽家のみなさん、今年も確定申告を頑張りましょう!

くりさん 何か困ったことがあったら遠慮なく俺のLINE@に相談してね~!

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