詩人や作曲家がみたであろう景色にしみじみと。
「音楽の友」編集部の掛川です。私は音高、音大のピアノ科を経て、月刊誌「音楽の友」で編集のお仕事をさせていただいています。
私は仕事を始めて間もないのですが、最新のクラシック情報を扱う編集者として、コンサートには積極的に足を運びたいと思っています。
コンサートが休日にあると、昼下がりに散歩がてらホールの近くにある唱歌の歌碑を探しに行くことがあります。歌碑の場所は作品の舞台になっている場所に多くあるのですが、とても静かな佇まいな故に、宝探しのように難しかったりして面白いです。
きっかけは学生時代に「日本歌曲」の授業で日本人の作品の持つ味わい、特に作品の背景の歴史に面白みを感じた事でした。先生が作品の舞台となった場所を巡っているとおっしゃっていた事が素敵だったので、私も身近な歌碑を見に行ってみたり、記念館をたずね演奏させて頂いたりしました。
有名な唱歌《故郷》の誕生の地、長野県中野市にある「高野辰之記念館」を訪れた際は、最寄り駅が“かつて高野氏が故郷を旅立った”駅で、《故郷》が丸々1曲、駅メロで流れていたことにまず驚きました。記念館周辺には《紅葉》や《春の小川》、《故郷》などの高野作品の歌碑があるほか、幼き高野氏が“小鮒を釣っていた川”の上にある「ふるさと橋」に、“うさぎ”の装飾や、《故郷》のメロディを奏でることができる鉄琴が欄干に設置されていました。
今まで、西洋の作曲家たちが国民や街全体で愛され、尊敬されている姿に憧れを抱いていたのですが、日本でも同様に作品を愛する人々が敬意や想いなどを歌碑や橋として形に残していることにとても感動しました。
また、私自身《故郷》は老人ホームなどのコンサートで必ず演奏させて頂いていた思い入れのある歌なので、その歌が街で大切に愛されている姿を知ることが出来て嬉しかったです。
それから、東京を中心にクラシックコンサートの前などに少しずつ、友人と一緒に唱歌の歌碑を巡り、詩人や作曲家が見たであろう景色にしみじみと思いを馳せたり、写真を撮ったりして楽しむのもちょっとしたお気に入りです。
※
私は現在、「音楽の友」の編集者として雑誌をいかに面白く読んで頂けるかを1番に考えて仕事をしていますが、それと同時に今を生きる音楽家や学者が何を考え、何を思っているのかをタイムリーに伝えるだけではなく、後世の人に伝わり残すような記事を目指して頑張りたいと思っています。きっと、この音楽家や作品に対する思いは歌碑を作った人々と同じなのではないかと思っています。まだまだ歌碑巡りは初心者なので続くかと思いますが(笑)
根本にある音楽を愛して仕事をさせて頂いていることを忘れずに日々精進したいと思います。
コンサートホールに行く際にふらっと寄れるおすすめの歌碑
詩:西條八十/作曲:成田為三《かなりや》(日本初の童謡曲で今年は誕生100周年!)の歌碑
詩:武島羽衣/作曲:滝廉太郎《花》の歌碑
詩:増子とし/作曲:本多哲麿《おもいでのアルバム》
もしかしたら、何気なく通っている道の傍らにひっそりと口馴染みのある曲の舞台や歌碑が佇んでいるかもしれませんよ!
関連する記事
-
オーストリア音楽トピック2024 本場で記念年の第九、ブルックナー、シュトラウス...
-
音楽ファン憧れの芸術の都 オーストリア・ウィーンで、うっとり音楽に浸る旅を
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly