弾いても聴いても癒されるクラシックのピアノ名曲 上級編
『ピアノの名曲150選』から、癒される曲5選をお届けします。
今回はあこがれの上級編。
癒し系だけど重厚な響きを味わうことができて、弾きごたえも聴きごたえもばっちりです。
一度は耳にしたことがあるような定番の名曲にも癒し要素はたくさん潜んでいます。
上級編と聞くと難しそうなイメージですが、ゆったりと流れるような美しいメロディの作品を選んだので、普段の疲れやストレスが溜まったときはぜひご活用ください。
仕事で失敗して落ち込んでいるときや、失恋してしまったとき、些細なことにイライラしてしまうとき……あぁ癒しがほしい!
そんなときのために、聴いても弾いても癒されるピアノの名曲をセレクトしました。優しくて澄んだピアノの音色は、癒し効果抜群のはず。
初級編・中級編に続き、ここではチェルニー40番以上の上級編より5曲をお届けします。そろそろ難しい曲に挑戦してみたい方はもちろん、あこがれの名曲や演奏会の定番曲もあるので、まだ弾けないかもという方も聴いて楽しんでみませんか。
ピアノを弾いて気分転換したいけれど、どんな曲があるのかわからない、ピアノの名曲を弾きたいけど楽譜を持っていない、そんな方もぜひ参考にしてみてください。
寝る前に聴いて心を落ち着けるのもよし、満員電車で聴いて心を浄化するのもよし。日ごろのストレス解消にどうぞ。
不眠症の伯爵に効果はあったのか? 安眠効果が期待されるのバッハの名曲
アリア/ヨハン・セバスティアン・バッハ(1865-1750)
この〈アリア〉は《ゴルトベルク変奏曲》の主題です。変奏曲全曲は1742年に出版された《クラヴィーア練習曲集》第4部におさめられています。不眠症に悩む伯爵に依頼されて作曲したという逸話があり、「ゴルトベルク」という名称は伯爵お抱えの演奏者の名前に由来しているそうです。〈アリア〉はサラバンド風で、バスの進行が変奏曲全体の定旋律となっています。
編集部の独断と偏見による癒しポイント 頭の中のモヤモヤがきちんと整頓されて清らかな気持ちになれそう。テンポが一定で強弱の幅が狭いので、安心して落ち着いて聴くことができます。
愛に満ちた甘美な旋律に癒されよう
愛の夢第3番/フランツ・リスト(1811-86)
リストは作曲、演奏、教育、批評などあらゆる面で大きな足跡を残した19世紀の巨匠でした。超人的なピアノの名手だったリストは、交響曲やオペラなどあらゆる編成の曲を初見で演奏ができ、ベートーヴェンの交響曲やシューベルトの歌曲などの優れたピアノ用編曲を数多く残しています。自作曲の編曲も多く、この《愛の夢》は、自ら作曲した歌曲3曲をピアノ独奏用に編曲したもので、1850年に『愛の夢――3つのノクターン』として出版されました。この第3番はドイツ・ロマン派詩人フェルディナント・フライリヒラートの抒情詩『愛し得る限り愛せ』にもとづいていて、その甘美な旋律でもっともよく知られています。
編集部の独断と偏見による癒しポイント ロマンチックな雰囲気でタイトルに「愛」が入っているので、幸福感を味わえます。原曲の歌曲のタイトルは「おお、愛しうる限り愛せ」。失恋の際には、この曲を聴きながら愛しぬいた自分をほめてあげましょう。
晩年のブラームスからの優しい贈り物
間奏曲 op. 118-2/ヨハネス・ブラームス(1833-97)
《6つの小品》op.118の第2曲です。ブラームス晩年の1893年、親しい人々が次々と世を去っていく寂寥感のなかで作曲されました。多くの大作を書き終えて創作意欲の衰えを感じたブラームスは、この頃から室内楽やピアノ作品の作曲に向かい、枯淡の味わいをもつ名曲を数多く残しています。ブラームスは、「間奏曲」という標題を愛用しました。本来は大曲の間やオペラの幕間で演奏される曲を指しますが、彼の場合には、音楽の一休みや気分転換といった意味合いがあるようです。複雑な対位法を凝らしながらも、自由でやすらぐような雰囲気をもつ美しい曲です。
編集部の独断と偏見による癒しポイント 優しく寄り添ってくれるような美しいメロディー。3分25秒の臨時記号の嵐がまたグッときます。この作品が作曲された避暑地、バート・イシュルの美しい風景を見たら、さらに癒されます。
ピアノ名曲の定番! 月の光が優しく心を照らしてくれます
月の光/クロード・ドビュッシー(1862-1918)
1890年に一度出版され、1905年に改訂された《ベルガマスク組曲》の第3曲です。詩人ヴェルレーヌの詩『月の光』に刺激を受けて創作されたと言われています。フランスのクラヴサン音楽の伝統を受け継ぎながら、近代的な手法が盛り込まれたこの組曲は、ドビュッシー初期の名曲のひとつとなりました。
編集部の独断と偏見による癒しポイント ヴェルレーヌの『月の光』の1文目は「Votre âme est un paysage choisi(あなたの魂は選ばれし風景)」。夜の静けさに月の光。情景の美しさと音楽の美しさが重なり、穏やかな気持ちになりますね。
ストレスも美しい水に流してしまいましょう
水の戯れ/モーリス・ラヴェル(1875-1937)
ラヴェルが26歳の1901年に作曲され、この作品によってラヴェルはフランス印象主義の始まりを告げたとされています。。「水にくすぐられて笑いさざめく河の神」というアンリ・ド・レニエの詩が題辞として掲げられ、水の音や噴水、滝のさまざまな流れから得た感興が、シンプルな2つのモティーフからなるソナタ形式のなかに、色彩豊かな和声によってみずみずしく表現されています。鮮やかな作曲技法が古典的な感性と見事に結びついた作品です。
編集部の独断と偏見による癒しポイント 美しく澄んだ水の描写に、心が洗われます。音の流れに耳を傾け、無心になって没頭すれば、すべてのことがリセットされるでしょう。
曲目解説は、『ピアノ名曲150選』『ピアノ名曲120選』(音楽之友社)巻末より。
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