読みもの
2020.08.20
【連載】クラシックプレイヤーのためのジャズ講座 Vol.3

4分音符を味方につけて、推進力のあるジャズのリズムを生み出す!

「ジャズをやってみたい&やってみたけど、なぜかジャズっぽくならない」という悩みをもつプレイヤーたちに、現役ジャズ・ベーシストがお届けする連載第3回。今回は4分音符に注目。ダサいジャズから脱却して、推進力のあるリズムを生み出す方法に迫ります。

ナビゲーター
小美濃悠太
ナビゲーター
小美濃悠太 ベーシスト

1985年生まれ。千葉大学文学部卒業、一橋大学社会学研究科修士課程修了。 大学在学中より演奏活動を開始し、臼庭潤、南博、津上研太、音川英二など日本を代表する数々のジャ...

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前々回はあなたのジャズがダサい問題、前回は8分音符がハネすぎてダサい問題について、小美濃の考えを披露させていただいた。 

今回は、「なんかダサい」というレベルを脱却して「ダサくはない」というところに辿り着いた演奏者が「カッコよくジャズをやってる」というところへ踏み出すためのガイドである。どうも「クラシックの人がジャズもやってみてます」というところから抜け出せない、という方にはぜひご一読いただきたい。 

前回は8分音符というミクロな世界を覗いてみた。今回は少しだけ視点を引いて、ジャズのもう一つのキモである4分音符について考えてみよう。

「拍を置く」のではなく、前への推進力をもつ

クラシック音楽をメインに演奏していた人がポピュラー音楽を演奏すると、音符を拍に「置きにいく」傾向があるように思う。メトロノーム的に刻まれている拍に対してズレないように、という意識があるからだろうか?

「置きにいく」とはどういうことか

「置きにいく」というのを言い換えるのが非常に難しいのだが、拍の頭に音を着地させるようなイメージである。よいしょ、よいしょ、と1拍ずつ足踏みをする感じ、とも言えるだろうか。 

この場合、「着地する」とか「足踏みをする」という言葉から連想されるように、拍の頭が動作の「終点」になる。足踏みなら、足が地面についたところで動きが止まり、またよいしょ、と足を持ち上げるので、1拍ごとに動作が区切られることになる。 

こういった拍の取り方だと、落ち着いてどっしりした印象にはなるが、1拍ごとに息をつくようで重く感じる。拍の頭が「終点」ではなくて「始点」になるように捉えることで、4分音符が絶えず前に進む推進力を持ち始めるはずだ。

推進力のあるリズムとは

推進力のあるリズムは、弾力があり、かつ懐が深い。これはテニスボールがバウンドするところを想像してもらうとわかりやすい。

地面に向かってテニスボールが落ちてくる。着地すると、柔らかいテニスボールは少し地面の方向にたわむ。たわむことでエネルギーがたまり、反動で地面から跳ね上がる。このテニスボールがグッとたわんで、バネのような反動で跳ね上がるイメージがあると、リズムが弾み始めるのだ。

もう一度、テニスボールが弾むところをスローモーションでイメージしよう。ゆーーーーーっくりボールが落ちてきて、地面にもうすぐ着……いた瞬間からググッと楕円形にたわんで……反動でだんだんと形が戻って……地面を……離れ……はい!  離れたとこが拍の頭! 

自分の文章力の限界を感じずにはいられないのだが、イメージできただろうか。このテニスボールがたわんで反動のエネルギーでポーンと跳ね上がる感じ。このエネルギーがたまって反動でポーン!  という感じがワクワクするようなリズムの原動力となる。ポーン!  でワクワク!  なんてとてもライターの書く文章ではないことは重々承知しているのだが、そうとしか言いようがないのだ。

この「たわみ」の部分がないと、ただピョコピョコしているだけの滑ったリズムになってしまう。深さがなく、軽くてダサくなってしまうのだ。

この感覚は、ベースやドラムをよく聴くとわかりやすいと思う。参考として、素晴らしい邦人ベーシスト北川潔氏とドラマーのジョナサン・ブレイクのコンビネーションを挙げておこう。

Shuffle Boil/Kenny Barron Trio

ベースが4分音符を刻むパート(お急ぎの方は2:17あたりからどうぞ)は、一音ずつが弾力を持って跳ね上がるように感じられるだろうか。ギリギリまでエネルギーをため込んで、反動で弾むようなウォーキングベースである。

4分音符の上を泳ぐ

ここまでの話は、主に4分音符をどう感じるか、という議論であった。これはリズムのベーシックな部分で、主にベースやドラムが担当することになる。では、ONTOMO読者に多いであろう管楽器や弦楽器のプレイヤーは、ジャズのリズムをどう考えたらいいだろうか? 

いわゆるウワモノの楽器は、4分音符を基準として、そのビートより前に突っ込んだり後ろでゆったり吹いたりする。ぴったり同じ位置に音符を揃えたりはしない(大編成のセクションは別)。 

発音の位置がズレてるだけで発狂しそうな方もおられるかもしれないが、このズレこそが気持ちいいところ。それぞれの楽器が微妙にズレていることで、不均等に伸びたり縮んだりするビートが演奏を前に進める推進力になる。これをある種のグルーヴと言ってもいいだろう。 

その感覚を身につけるには?

では、そのズレの感覚はどうやって身につけたらいいだろうか?これはもう言語化することに無理がある。そもそも、プレイヤーごとに違うズレ具合が個性になっているので、一つの「真理」のようなものは存在しないのである。

  • 音源を真似してみる

よく言われる話だが、好きなプレイヤーの音源をコピーしてみるのが近道だ。楽譜に起こしたり、覚えたりして、音源を聴きながらマネして演奏してみよう。

ついつい「アドリブでどんな音を吹いているか」に注目してしまいがちだが、発音の位置までしっかりマネしてみることが大切だ。音使いだけマネしてみても、リズムがダサいと台無し。結局「あ、クラシックの人がジャズやってみた感じね」という演奏になってしまうし、「クラシックの人は楽器はうまいけど、フィーリングがねぇ」みたいなことを言われがちである*1。

*1 そう言ってる本人もフィーリングがイマイチなケースは多い。

  • 上手な人と一緒に演奏する

頭で考えるよりも、先に体験してしまったほうが早いのは言うまでもない。近くに上手なプレイヤーがいれば、一緒に演奏させてもらおう*2。

素晴らしいプレイヤーは、共演者を導いてくれる。たとえ自分の演奏がうまくいかなくても、導かれてフィーリングを体験することが大切だ。体験したことのないものを演奏することはできないが、一度知ってしまえば目指す方向がわかる。

*2 あまり大きな声では言えないが、一緒に演奏する人選びを間違うと、ものすごく遠回りをすることになる(残念だけどよくあるパターン)。ジャズを専門にしているプロか、どう見ても上手いアマチュアに相談しよう。

  • いい音で音楽を聴く 

ONTOMOでオーディオ関係の記事を書いているから言うわけではないのだが、いい音で音楽を聴くことはニュアンスやフィーリングを身につけるために非常に大切なことだ。

テクニックはなくても、フィーリングが良くてものすごくカッコいい演奏をされるプレイヤーに時々出会うことがある(プロアマ問わず)。細かいニュアンスまでよく聴いていて、濃厚にジャズらしさを醸し出しているのだ。 

そういう方はたいてい中高年の方なのだけれど、おそらく昔ジャズ喫茶に通い詰めて、いい音で死ぬほどジャズを聴いていたのではないだろうか。 

ジャズ喫茶に通うのはなかなかハードルが高いけれど、インプットの質を高めることはできるはず。騙されたと思って、音楽を聴く環境をアップグレードしてみてほしい。

「ズレ」の感覚を身につける3つの練習法
  • 音源を真似してみる
  • 上手な人と一緒に演奏する
  • いい音で音楽を聴く

次回は聴くべき・チャレンジするべき曲を紹介!

本連載は、漠然とした「ジャズっぽさ」を紐解くところから始まり、第3回となる今回はかなり抽象的なところまでたどり着いた。今すぐに腑に落ちないことも多いかと思うが、練習を続けていくうちに「あ、こういうことね」と納得する日が来るはずだ。 

次回は、ジャズのフィーリングを身につけるために聴いておきたい曲、そしてクラシックプレイヤーがチャレンジすると楽しめそうな曲を集めて紹介したい。込み入った議論は今回までにしよう、そうしよう。w

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小美濃悠太
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小美濃悠太 ベーシスト

1985年生まれ。千葉大学文学部卒業、一橋大学社会学研究科修士課程修了。 大学在学中より演奏活動を開始し、臼庭潤、南博、津上研太、音川英二など日本を代表する数々のジャ...

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