レチタティーヴォ:語源はイタリア語で「朗読する」。定義や特徴は?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
レチタティーヴォという言葉も、イタリア語で朗読するを意味するrecitareが形容詞に変化したもの(recitativo)です。
時代は16世紀。まだレチタティーヴォがなかった代わりに、モノディというものがありました。モノディは、おもに一人の歌手が伴奏付きで歌う曲のことを指します。
この時代は、何人かで歌う曲が主流だったのですが、一度に何人も歌うと、どれがメロディなんだかよくわからないですし、何を言ってるかも正直わかりづらかったのです。
そこで、ヴィンチェンツォ・ガリレイ(1520〜1591)が、「古代ギリシアの演劇のように、一人が語るような音楽があってもいいはず」とし、一人が語るように歌う、モノディが生まれたのです。
カッチーニ:《新しい音楽》より「麗しのアマリッリ」
1602年に作曲されたモノディです。歌と伴奏のバスのみが書かれています。
このモノディから発展したのが、レチタティーヴォです。レチタティーヴォは、モノディよりも変化が少なく、より朗読やセリフっぽいのが特徴です。最初のレチタティーヴォは、すでに最初のオペラである、ペーリの歌劇《エウリディーチェ》に使われています。
その後、伴奏がシンプルなレチタティーヴォは、大事なセリフや、登場人物同士の大事な会話が聞き取りやすいため、オペラの中で積極的に用いられるようになりました
さらにレチタティーヴォは2つの種類に分かれました。
まず1つめが、オーケストラの中の通奏低音(チェンバロなど)だけが即興をしながら伴奏するレチタティーヴォ(レチタティーヴォ・セッコ)です。特に、独り言や痴話など、そこまで重要じゃないけど、やっぱり言葉が必要な場面に使われます。
モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》 KV527 第2幕より「私はここよ」
歌と伴奏のみが書かれています。モノディと違い、伴奏には音がほとんど書いてありません。なので伴奏する人は、歌の人を邪魔しない程度に即興を入れながら演奏します。
そしてもう1つは、オーケストラがそのまま伴奏するレチタティーヴォ(レチタティーヴォ・アコンパニャート)です。ある一人の激白や、ドラマティックな独壇場などで使われます。
こちらのレチタティーヴォは、オーケストラが一人の語りに割って入り、場を盛り上げるので、とても効果的なのです。例として挙げるなら、なんといってもベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」第4楽章の冒頭でしょう!
第1楽章から第3楽章までオーケストラが演奏してきて、第4楽章が始まったと思ったら、急に一人が「ああ、こんな音じゃない! こんなのじゃなくて、もっと気持ちよくて、もっと喜びに溢れた歌を歌おう!」と、これまでの楽章を否定するような、とんでもない主張を叫びます。このような劇的な場面で使われるものこそ、オーケストラの伴奏つきレチタティーヴォなのです!
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》作品125 第4楽章よりレチタティーヴォ部分
下段に歌パートが、上の4段にオーケストラの伴奏が書かれています。ゾクゾクします……!
このように、効果的なレチタティーヴォは、楽器のみで演奏される曲でも模倣されるようになりました。特に、意味深な場面で用いられます。
どうしても聴き逃しがちなレチタティーヴォですが、作曲家のこだわりだけでなく、歌手や演奏者の表現力の見せ場でもあるのです!
レチタティーヴォを聴いてみよう
レチタティーヴォ・セッコ
1. ペーリ:歌劇《エウリディーチェ》〜第1幕より「美しい黄金の毛のニンフ」
2. ロッシーニ:歌劇《セヴィリアの理髪師》〜第1幕より「思慮の足りない奴らだな」
レチタティーヴォ・アコンパニャート
3. バッハ:マタイ受難曲 BWV244〜第1部より「愛する救い主のあなた」
4. モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》 KV527〜第1幕より「なんと恐ろしい光景」
5. ビゼー:歌劇《カルメン》〜第1幕より「いつになったら好きになるかって?」
器楽のみのレチタティーヴォ
6. クーナウ:聖書ソナタ第5番〜「敵の大軍を見た時の恐怖」
7. フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調〜第3楽章 幻想的レチタティーヴォ
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