アルト:ラテン語で高いを意味するアルトゥスに由来! 何より高い?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
歌手の声域を表すことばとして頻繁に用いられる、アルト。高い声域から順に、ソプラノ、アルト、テノール、バスと並べるとき、テノールよりも高いパートを歌います。
テノールの記事でも紹介しましたが、12世紀の歌は3つの声部に分かれており、テノールは一番低い音域を歌っていました。そして、テノールの上、すなわち真ん中の声部には、コントラテノールという名前がついていました。
15世紀後半になると、歌は3つの声部から、4つの声部で歌われることが多くなっていきました。その際、テノールの声域に反して高いパートを歌う人のことを、「コントラテノール・アルトゥス」と呼ぶようになりました。もともとコントラテノールとだけ呼んでいたパートです。
12〜14世紀
・カントゥス(スペリウス)
・コントラテノール
・テノール
↓
15世紀〜
・カントゥス(スペリウス)
・コントラテノール・アルトゥス
・テノール
・コントラテノール・バッスス
アルトゥスはラテン語で、「高い」を意味します。テノールに反して(コントラ)高い(アルトゥス)声域、すなわち下で支えるパートの高いほうの声部という意味になります。この「高い」という言葉だけが残され、イタリア語で同じ意味を指す「アルト」と呼ばれるようになりました。たまに上記の名残りとして、コントラルト(コントラ+アルト)と呼ばれることもあります。
脱線しますが、例えば、英語で標高や高度を意味するaltitudeという言葉のalt~という接頭辞も、アルトと同じ語源です。
ところで、現在ではアルトは女性によって歌われることがほとんどですが、かつては男性が歌うこともありました! 宗教曲(宗教カンタータやミサ曲など)では、男性がアルトも歌い、世俗的な曲(世俗カンタータや単なる合唱曲など)は、女性が歌っていたのです。
オペラは世俗的な作品なので、ほとんどの作品で女性がアルトを歌います。アルトの歌手は主役ではなく、脇役を担うことが多いです。やはり、男声の中でも高い声域のテノールや、女声の中でもアルトより高い声域のソプラノのように、高い音で歌う人たちに、主役は回されてしまうんですね……。
しかし、脇役はドラマの鍵を握る、大切な役です。地声に近いちょっとミステリアスな感じがするアルトは、そんな役にピッタリなのです。そのため、オペラの中では重要な役回りをすることが非常に多いのです。ぜひ、オペラを観る機会があれば、アルトパートの役割に注目です……!
アルトを聴いてみよう
1. ヴィヴァルディ:《主は言われた》RV594〜「聖人の輝きのあるうちに」(男性のアルト)
2. バッハ:カンタータ第35番《魂と心は驚き乱れて》〜アリア「神は全てを成し遂げた」(男性のアルト)
3. ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》〜アリア「王の陰で」(女性のアルト)
4. グノー:歌劇《ファウスト》〜第4幕よりアリア「もしも幸せなら」(女性のアルト)
5. ブラームス:アルト・ラプソディ 作品53〜第3曲「もしも君の竪琴に」(女性のアルト)
6. マーラー:交響曲《大地の歌》〜第4楽章「美しさについて」(女性のアルト)
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