読みもの
2021.08.17
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その60

アルト:ラテン語で高いを意味するアルトゥスに由来! 何より高い?

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

バッハ作曲カンタータ第35番《魂と心は驚き乱れて》よりアルトによるアリア「神は全てを成し遂げた」、息子カール・フィリップによる写譜

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歌手の声域を表すことばとして頻繁に用いられる、アルト。高い声域から順に、ソプラノ、アルト、テノール、バスと並べるとき、テノールよりも高いパートを歌います。

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テノールの記事でも紹介しましたが、12世紀の歌は3つの声部に分かれており、テノールは一番低い音域を歌っていました。そして、テノールの上、すなわち真ん中の声部には、コントラテノールという名前がついていました。

15世紀後半になると、歌は3つの声部から、4つの声部で歌われることが多くなっていきました。その際、テノールの声域に反して高いパートを歌う人のことを、「コントラテノール・アルトゥス」と呼ぶようになりました。もともとコントラテノールとだけ呼んでいたパートです。

12〜14世紀
カントゥス(スペリウス)

・コントラテノール
・テノール
 ↓
15世紀〜
・カントゥス(スペリウス)
・コントラテノール・アルトゥス
・テノール
・コントラテノール・バッスス

アルトゥスはラテン語で、「高い」を意味します。テノールに反して(コントラ)高い(アルトゥス)声域、すなわち下で支えるパートの高いほうの声部という意味になりますこの「高い」という言葉だけが残され、イタリア語で同じ意味を指す「アルト」と呼ばれるようになりました。たまに上記の名残りとして、コントラルト(コントラ+アルト)と呼ばれることもあります。

脱線しますが、例えば、英語で標高や高度を意味するaltitudeという言葉のalt~という接頭辞も、アルトと同じ語源です。

ところで、現在ではアルトは女性によって歌われることがほとんどですが、かつては男性が歌うこともありました! 宗教曲(宗教カンタータミサ曲など)では、男性がアルトも歌い、世俗的な曲(世俗カンタータや単なる合唱曲など)は、女性が歌っていたのです。

オペラは世俗的な作品なので、ほとんどの作品で女性がアルトを歌います。アルトの歌手は主役ではなく、脇役を担うことが多いです。やはり、男声の中でも高い声域のテノールや、女声の中でもアルトより高い声域のソプラノのように、高い音で歌う人たちに、主役は回されてしまうんですね……。

しかし、脇役はドラマの鍵を握る、大切な役です。地声に近いちょっとミステリアスな感じがするアルトは、そんな役にピッタリなのです。そのため、オペラの中では重要な役回りをすることが非常に多いのです。ぜひ、オペラを観る機会があれば、アルトパートの役割に注目です……!

バッハ:カンタータ第35番《魂と心は驚き乱れて》〜アリア「神は全てを成し遂げた」
アルト記号で書かれた楽譜
テノールパートのために使われたテノール記号と同様、アルトパートにもアルト記号が存在します。五線の真ん中の線の上に書かれた音がドです。しかし、この記号は現在、ト音記号で代用されることが多くなりました。
バッハ:カンタータ第35番《魂と心は驚き乱れて」〜アリア「神は全てを成し遂げた》
ト音記号で書かれた楽譜

アルトを聴いてみよう

1. ヴィヴァルディ:《主は言われた》RV594〜「聖人の輝きのあるうちに」(男性のアルト)
2. バッハ:カンタータ第35番《魂と心は驚き乱れて》〜アリア「神は全てを成し遂げた」(男性のアルト)
3. ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》〜アリア「王の陰で」(女性のアルト)
4. グノー:歌劇《ファウスト》〜第4幕よりアリア「もしも幸せなら」(女性のアルト)
5. ブラームス:アルト・ラプソディ 作品53〜第3曲「もしも君の竪琴に」(女性のアルト)
6. マーラー:交響曲《大地の歌》〜第4楽章「美しさについて」(女性のアルト)

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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