作曲家は見た目が9割!? 見た目から紐解く作曲家の人と音楽性~シューマンとブラームス編
クラシック音楽に囲まれる家庭環境で育ったイラストレーターの五月女ケイ子さん。「ゆるクラ」は、五月女さんが知りたい音楽に関する素朴な疑問を、ONTOMOナビゲーターの飯尾さんとともに掘り下げていく連載です。五月女さんのイラストとともに、クラシックの知識を深めましょう! 今回は作曲家の肖像画や写真をもとに、作品や性格を見ていきます。
見た目から音楽家の人生を妄想する第2回はクララ・シューマンにまつわる2人の作曲家、シューマンとブラームスを観察していきたいと思います。この3人の関係性を知ってから、曲を聴くたびに妄想がふくらむように。人生をだいぶ楽しくしてもらった感謝を込めて、2人の顔をじっくりと見ていくことにします。
シューマンの目力に注目! クララはどこに惚れた?
まず、シューマンのお顔を拝見してみましょう。
素朴で古風な顔立ち。そのうえ、ちょっと頑固そうです。骨格も安定感があり、一見精神を病むとは思えないのですが、先生、どういうことでしょう。
右:46歳ころかもう少し若い頃のシューマン
飯尾先生「彼の目を見てみてください」
どれどれ。おー、素朴さに包まれていて気づかなかったのですが、すごい目力。斜め上を見ている絵は上昇志向の強さを表していると言いますが、シューマンもやはり志が高く、普通の表現では到達しない崇高な音楽を常に目指していたそうです。
その一方で結婚前、生活を心配するクララに「1〜2年で生活できるように頑張るよ!」と、売れないバンドマンの如く誓ったうえに、人気ピアニストだったクララに「結婚後は家庭に入るように」と、亭主関白的な発言までしてしまったシューマン。しかし、理想の高すぎる音楽は理解されなかったため稼ぎはふえず、理想と現実のギャップは埋まりませんでした。
一方で7人の子どもを育てながらコンサートも開くスーパーウーマンの妻がシューマンの劣等感をさらに強め、心がいつしか悲鳴を上げたのかもしれません。
清らかな中にノスタルジックな陰影を感じる音楽は、夢の中にいるような気分にさせてくれるのだけど、未来に希望を持てず、過去にも戻れないシューマンのどこにもない何かを見つめる瞳の中だけにある情景だったと思うと、切ないです。そして、その瞳の輝きが死ぬまで続いたとしたら、シューマンに惹かれたクララの気持ちがわからんでもないのです。
ブラームスは美少年からの……?
一方、ブラームスの若い頃は、個人的ではありますが、クラシック界イチ推しの美少年に選定いたします。妄想が激しくて謝りますが、こんな美少年が家に遊びに来て、夫が亡くなったあとも自分のことを慕い、子育てや家事など金銭的な面まで献身的に支えてくれたら、間違いなくクラっとくるはず。
しかし、40代にはぶくぶくと太りだし、サンタクロースみたいに成長したブラームス。大のお酒好きで、リストのコンサートでいびきをかいて寝てしまったり、もったいないとテーブルにこぼしたウィスキーをなめたりと、酒豪伝説もたくさんあり……ブラームスよ、どうしてこうなった……。
しかし、クララに「彼は昔と同じくらい不可解で、見知らぬ人と言ってもよいほどです」と言わしめるくらいに謎めいた男ブラームス。交響曲を作るのに20年もの歳月をかけたり、メモや世に出なかった楽譜は捨ててしまったところを見ると、ええかっこしいな一面を持っていたのかも。
映画のように情景が次々と押し寄せてかっこいいのだけれど、気軽に話しかけづらいガラスの壁を彼の音楽に感じていたのは、そのせいだったのか。もしかして酒とお髭も、本当の自分を悟られぬためのカムフラージュだったとしたら……?
でも、だからこそ、クララとブラームスはつかず離れずの距離感で、長い友人生活を過ごせたのかもしれませんね。
シューマンとブラームス。見た目はだいぶ違いますが、2人とも不器用な面があり、だけどそれ故に愛すべき男性だったんだろうと思います。そして、見た目だけの判断ですが、そばにいると結構面倒くさそうな2人の隣で、子育て、作曲、演奏活動をこなしたクララのスーパーウーマンっぷりが際立つ結果に。
やはり、女は強しですね。
次回も妄想は続きます。
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