タワレコ・バイヤー推し! の3枚

3月「お花見」特集にちなみ、春を待ちわびる1枚&「レコード芸術」特選盤2選

読みもの
2019.03.02

タワーレコードのクラシック担当バイヤーが、3月特集「お花見」にぴったりの1枚をピックアップ! さらに、月刊誌「レコード芸術」2月号の特選盤に選んだCDの中から、さらに優れた2枚を推してもらった。

推した人
板谷祐輝 タワーレコード オンライン事業戦略部
板谷祐輝
推した人
板谷祐輝 タワーレコード オンライン事業戦略部
2011年タワーレコード入社。オンラインショップのマーケティング・事業戦略を担当。好きな音楽はクラシック、現代音楽、アンビエント、欅坂46。趣味は作曲、ピアノ、クラリ...
板倉重雄 タワーレコード商品本部洋楽部
板倉重雄
板倉重雄 タワーレコード商品本部洋楽部
レコード「板」の「倉」を守る「重」たい「雄」です。「レコード芸術」購読歴は40年、レコード業界歴は24年。現在タワーレコード株式会社、商品本部洋楽部勤務。SPレコード...
中川浩淳 タワーレコード 商品本部クラシック担当
中川浩淳
中川浩淳 タワーレコード 商品本部クラシック担当
2018年5月で入社して丸22年。J.S.バッハやブラームス好きで、最近はピアノ音楽にはまっていて古典派から近現代まで幅広く聴いています。2018年のドビュッシーのメ...

マーラーの変わり種! ピアノで楽しむ《巨人》と未完のピアノ四重奏曲~3月「お花見」特集より

■マーラー:ピアノ四重奏曲、交響曲第1番《巨人》(ピアノ独奏版)/アンゲラン=フリードリヒ・リュール=ドルゴルキー 、アンサンブル・モンソロ

季節の変わり目、いよいよ春がやってきますね。
個人的にではあるのですが、マーラーの交響曲にはかなり季節感を感じます。
明るさや厳しさを超えて、気怠さや美しさ・哲学なんかも包含しているように思えるマーラーの交響曲は、だからこそ、とてつもない奥行きを見せてくれるのかなと思います。

さて今月のテーマにあやかり「花の章」。
ジャン・パウルの同盟の小説にインスパイアされて書いた、マーラー最初の交響曲《巨人》。
独特の陰鬱さよりは比較的明るい曲調であり、マーラー作品の中でもかなり愛されている楽曲ではないでしょうか。
自身もピアニストにしてさまざまな編曲作品も手掛けるフランスの作曲家、リュール=ドルゴルキーが、「花の章」含む5楽章版をピアノ独奏にアレンジしたのがこの盤。
単一楽器で語られる交響詩。
オーケストラ版と趣を異にする派手さと味わいがあるのが、ピアノ独奏編曲の醍醐味でしょう。
(ちなみにこのドルゴルキー氏はスター・ウォーズやジュラシックパークなどの映画音楽も2大ピアノ編曲をしておりそちらも興味深い。)

また本盤には、マーラーが第1楽章しか残していない《ピアノ四重奏曲》をドルゴルキーが完成(!)させたものや、ドルゴルキー自身の作品も収録されています。
ちょっと変わったマーラーで春を迎えるのも、また楽しいのではないでしょうか。

(タワーレコード オンライン事業戦略部 板谷祐輝)

マーラー:ピアノ四重奏曲、交響曲第1番《巨人》(ピアノ独奏版)/アンゲラン=フリードリヒ・リュール=ドルゴルキー 、 アンサンブル・モンソロ

ピアノ : アンゲラン=フリードリヒ・リュール=ドルゴルキー
アンサンブル : アンサンブル・モンソロ
Polymnie
POL550283

新星チェリスト・笹沼樹のデビューアルバム!~「レコード芸術」2019年3月号特選盤より

■Opus One 親愛の言葉/笹沼樹

冒頭のカサド作曲の《親愛の言葉》が、鮮烈なチェロの表情とともに、なんと快い聴き手への呼びかけとなっていることだろう。その響きは豊かでコクがあるだけでなく、キリリと引き締まっていて、弓の走りのすばらしさも実感され、同時に「親愛」なる表情にも満ちている……。

類い稀な感受性と俊敏なテクニック、190㎝を超える恵まれた身体を駆使して、繊細な味わいから激しい感情の爆発まで、幅広い表現力を聴かせるチェロ奏者、笹沼樹(1994~)のデビューCDである。筆者はすでに実演とその後の歓談で彼の驚くべき実力と作品への深い洞察、爽やかな人間性に魅せられており、デビューCDを心待ちにしていた。そして、その期待は完全に満たされた。

ショパンの2作品で示された豊かなカンタービレ、人間のあらゆる感情が音に乗り、微妙に揺れ動く美しさ、絶妙さ! フォーレでの心の奥底から発せられる歌、サン=サーンスでの艶やかな高音による愛の呼びかけ、ポッパーでの圧巻の超絶技巧と痛切極まりない表情の爆発! こうしたことが洗練されたフォルムの中で自然に生起するところなど、彼の卓越した音楽性の証明と言えるだろう。

アルバム最後を飾る民謡を起源とする2作品、「鳥の歌」「ちらん節」での歌心も秀逸。ピアノの入江一雄が多彩な音色と絶妙の間合いで、終始チェロを見事に支えている。

(タワーレコード商品本部 板倉 重雄)

Opus One 親愛の言葉/笹沼樹

チェロ : 笹沼樹
Columbia
COCQ-85447

ピアニスト・小菅優が紡ぐ水にまつわる物語~「レコード芸術」2019年3月号特選盤より

■Four Elements Vol.1: Water/小菅優

ピアニスト、小菅優が2017年より取り組んでいる「Four Elements(四元素)」と題したシリーズの第1弾となる、「Water(水)」をテーマにした作品集。

四元素は水、火、風、大地というもっとも根源的なもので、紀元前から哲学や文学などで多く語られてきた要素です。音楽においても数多くの作曲家が創造力を掻き立てられ、作品を残しています。「水」はさまざまな文化で生きるためにもっとも重要な元素と思われており、生命の源でもあり、穏やかさと荒々しさという両極端の表情を見せるものでもあります。

このアルバムでは、さまざまな作曲家が「水」をテーマに作曲した中から、彼女自身が選曲。作品に込められた意味合いを踏まえて一連の流れを組み、曲順などにも強いこだわりを持ってまとめられています。

メンデルスゾーンがヴェネチアを訪れた際にゴンドラに乗ったときの情景を表現した《ヴェネチアの舟歌》に始まり、その後に同じ調性でシューマンが作曲した《舟歌》を並べて演奏。二人の作曲家の違いをより際立たせています。
さらにショパンの《舟歌》やラヴェルの《水の戯れ》、リスト《エステ荘の噴水》といった人気曲が続き、武満徹の「雨の樹」は大江健三郎の短編小説「頭のいい『雨の木(レインツリー)』」にインスピレーションを得て作曲された作品を収録。彼女はこの作品に人間や生命そのものの存在を感じていると語っています。

アルバムの最後には、水にまつわる恋人たちの愛と死、その変容の物語を描いたリストとワーグナーによる壮大なスケールの作品を収録。ワーグナーは《トリスタンとイゾルデ》を作曲した時期にヴェネチアに滞在し作曲を行なっており、このアルバム最初のメンデルスゾーンからの流れがさまざまな繋がりを持って締めくくられています。

(商品本部クラシック担当 中川浩淳)

Four Elements Vol.1: Water/小菅優

ピアノ : 小菅優
Orchid Classics
ORC100092

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