フィルハーモニー・ド・パリの響きで、パリ管のラヴェルを~ピアノとシンメトリーに
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
オーケストラにとって本拠地となるコンサートホールは、響きを作り出す楽器そのものである。
フランスを代表する名門・パリ管弦楽団(1967年創立)は、長い間、サル・プレイエルという伝統あるコンサートホールをメイン会場としてきたが、2015年には、オープンしたての最新鋭ホール、フィルハーモニー・ド・パリへと本拠地を移転した。
サル・プレイエル~フィルハーモニー・ド・パリ
以前筆者がパリ管弦楽団の古参楽員であるヴァイオリン奏者ジル・アンリ(1978年入団)に話を聞く機会があったとき、フィルハーモニー・ド・パリについて、こう語ってくれた。
「最初に音を出したとき、お互いに我々は顔を見合わせて、思わず微笑み合ったよ。口の端がみんなニヤニヤ笑っていた。それくらい、第一印象から素晴らしい響きのホールだったんだ」
2019年にはフランス文化省とパリ市長の正式な決定により、パリ管弦楽団はフィルハーモニー・ド・パリの重要な一部門へと統合され、より積極的にこのホールの総合的文化教育施設としての多面的活動に関わることになった。
『ラヴェル:鏡遊び~管弦楽およびピアノ作品集』(ハヴィエル・ペリアネスのピアノ、ジョゼプ・ポンス指揮、2017~8年録音)では、フィルハーモニー・ド・パリで演奏するパリ管弦楽団による、最新のフランス音楽の響きを楽しむことができる。
「道化師の朝の歌」「クープランの墓」は、オーケストラ版とピアノ版の両方を収録し、中心に「ピアノ協奏曲」を置くというシンメトリカルな構成。
アルバムの最初と最後に置かれたラヴェルの「道化師の朝の歌」オーケストラバージョンとピアノ独奏バージョン
スペイン人の指揮者とピアニストを迎え、バロックやジャズの要素、第一次世界大戦後という時代性をラヴェルの音楽に見出しながら、楽しめる流れになっている。
このうちピアノ・ソロを除く部分が、フィルハーモニー・ド・パリでの録音。このホールの特徴である、静寂の質の高さ、懐の深さが、よくとらえられている。いまのパリ管弦楽団が、最新鋭の見事なホールを得て、生き生きと喜びに満ちて演奏しているのが伝わってくる。
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