コンサートホールからライブ配信! 多彩な音楽と熱気を味わう室内楽フェスティバル
新型コロナウイルスからの出口がなかなか見えないなか、いかにアーティストたちの活動を支援するか? 聴衆である私たちも、彼らの音楽を、どうやってもっと身近で大切なものとして感じるか?
その課題解決への大きな一歩を、ついにサントリーホールが踏み出した。
今年10年目を迎えるはずだった「チェンバーミュージック・ガーデン」(CMG)が全公演中止となった代わりに、7公演を有料ライブ配信することが決定したのである。
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
コンサートホールの空間が臨場感に
近頃、アーティスト個人による音楽配信は、すでにプライベートなSNSなどを通じてさかんに行なわれている。
しかし、少しでも音楽を良い形で届けるためにも、今後大切になってくるのは、やはりコンサートホールの存在である。
なぜなら、そこは美しい響きによって満たされる空間としての「楽器」であり、最高度に「テンションを高める」ことができる舞台であり、企画者らの熱意や工夫によって、さまざまな演奏家が出会う「アンサンブルの場」であるからだ。
今回、6月13日(土)、14日(日)、19日(金)、20日(土)、21日(日)の5日間、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で開催される、サントリーホール CMG オンライン <チェンバーミュージック・ガーデン有料ライブ配信>の7公演は、本来出演を予定していた演奏家を中心に、新たなゲストを迎え、有料ライブ配信(各500~1500円)で楽しむことができる。
中継のクオリティもぜひ期待したいところだ。演奏の展開に応じた複数のカメラの切り替えはもちろんのこと、サントリーホールを知り尽くしたプロの映像・音声チームならではの、臨場感あふれる音楽体験が待っている。ヘッドフォンで聴くと、より親密さを味わえるだろう。
もちろん、こうした試みは、まだ端緒についたばかりであるが、回を重ねるにつれて、技術面はどんどんアップデートされていくに違いない。
「CMGオンライン」からアンサンブルの面白さを体験しよう!
重要なことは、音楽界全体に大きな影響力を持つサントリーホールが、主催公演という形で、無観客ながら有料ライブ配信を始めたことではないだろうか。
それは、演奏家の活躍の場が、コロナ以後の新しい日常のなかでも、広がっていく可能性が見えてきたということであり、聴衆である私たちも、たったいま本番のコンサートで演奏されているライブな音楽を、今後は自宅に居ながらにして楽しめるようになる、ということでもある。
室内楽は、再開しやすい。感染症対策という見地からしても、少人数の演奏は比較的リスクをともなわずに済む。
そして、室内楽の演奏機会が増えることは、演奏者にとっても聴き手にとっても、クラシック音楽の基礎をなす「アンサンブル」という土壌が豊かになっていくことを意味する。
それに、室内楽は、しっかりと顔の見える演奏家たちが、個性を前面に出して、丁々発止とやり取りをする様子が面白く、スペクタクルな興奮にあふれた、熱い世界なのである。これまでオーケストラやソロ演奏を主に聴いてきた人は、ぜひこの「サントリーホール CMG オンライン」をきっかけに、室内楽の楽しみに目覚めてみてはいかがだろう。
最後に、「CMGオンライン」の7公演について、簡単に注目のポイントをご紹介しよう。
※以下、終演時間は予定。7演目セットの視聴券は3500円
「堤 剛プロデュース2020」
6月13日(土)19:00〜20:50/視聴券1000円
CMGの提唱者でありサントリーホールの象徴的存在でもあるチェリスト堤 剛が、屈指の実力派ピアニスト小菅 優とともに、ベートーヴェンの初期・中期・後期の作風の変化を示す、チェロ・ソナタ第2、3、4番を軸としたプログラムを。火花の散るような白熱のデュオになりそうだ。【詳細はこちら】
「エラールの午后」
6月14日(日)13:00〜14:10/視聴券1000円
サントリーホールの所蔵するエラール1867年製ピアノを用い、ショパンからドビュッシーまでの室内楽を当時の響きと演奏スタイルで堪能する。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位の川口成彦を中心に、ヴァイオリンの原田 陽、チェロの新倉 瞳が、デュオやトリオで多彩な表情を聴かせる。楽器紹介や質問コーナーも予定。【詳細はこちら】
「おすすめの逸品特集」
6月14日(日)19:00〜20:40/視聴券1000円
CMGオンラインならではの新企画。郷古 廉(ヴァイオリン)、佐藤晴真(チェロ)、幣 隆太朗(コントラバス)、福間洸太朗(ピアノ)など、注目のアーティストが集まって、それぞれがソリストとしての自信の逸品を持ち寄ってかわるがわる演奏する。バロックから現代まで、多様な作品が揃った曲目も興味深い。【詳細はこちら】
「ディスカバリーナイト」
6月19日(金)20:00〜21:40/視聴券1000円
週末、金曜日のやや遅めの時間帯に、有名曲と知られざる秘曲を織り交ぜたプログラムを、ライブならではのトークを交えて、リラックスして楽しめる。大萩康司(ギター)と福間洸太朗(ピアノ)を中心とするアンサンブルのほか、辻 彩奈(ヴァイオリン)や鈴木大介(ギター)らも加わった華やかなメンバーも楽しみ。【詳細はこちら】
「ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会」
「フィナーレ2020」
6月21日(日)14:00〜17:00/視聴券1500円
当初のCMG2020に出演を予定していたアーティストが可能な限り総出演。渡辺玲子(ヴァイオリン)、吉野直子(ハープ)、元東京クァルテットの池田菊衛(ヴァイオリン)、原田幸一郎(ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、室内楽の名手でもある江口 玲(ピアノ)、練木繁夫(ピアノ)ら豪華メンバーが次々と入れ替わり、多様な編成の「ベートーヴェン駅伝」を繰り広げ、色とりどりの室内楽の花を咲かせる。【詳細はこちら】
※配信はライブのみ。オンデマンド配信は予定されていない
なお、サントリーホールは「CMGオンライン」に先駆けて、「日本フィル&サントリーホール とっておき アフタヌーン オンラインスペシャル」(無観客公演・有料配信、日本フィルとの共催)をおこなう。いよいよオーケストラが活動再開に向けて動き出す、その始まりのときをぜひ体験しておきたい。
日時: 6月10日(水) 14:00〜15:00予定
出演: 広上淳一(指揮とお話)、日本フィルハーモニー交響楽団ソーシャルディスタンス・アンサンブル
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