新・神奈川フィルが東京で聴ける!沼尻竜典&神尾真由子が王道プログラムに未来の光を
2023年1月20日(金)、沼尻竜典のもと新たな時代を迎える神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、ヴァイオリニストの神尾真由子とチェコからオルガニストのアレシュ・バールタを迎え、東京公演を行なう。ヴァイオリン協奏曲史上の最高傑作とオルガンを自在に使った史上初の交響曲という王道プログラムに、新音楽監督・沼尻竜典が新たな光を当てる。未来に向かって進む神奈川フィルのいまを、東京で体験できる絶好のチャンスだ。
1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...
2022年秋にリニューアル・オープンした横浜みなとみらいホールなどを中心に活動を続ける神奈川フィルハーモニー管弦楽団は、2022年4月から音楽監督に沼尻竜典が就任し、新たな時代の階段を登り始めている。
その神奈川フィルの数々のコンサートのなかで、とても重要なものとして位置づけられているのが「For Future」コンサート。現在の神奈川フィルの実力を示すだけでなく、未来に向かって進んでいくオーケストラの姿をより多くの聴衆に体験してほしいという願いを込めたコンサートでもある。2023年1月20日(金)に「For Future」東京公演が、東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアルで開催される。
沼尻竜典 新音楽監督が指揮する、待望の神奈川フィル「For Future」東京公演
タクトをとるのは音楽監督の沼尻で、ソリストには神尾真由子を起用。そしてオルガンのアレシュ・バールタも加わる。管弦楽団にオルガンが加わるといえばおわかりのように、フランスの19世紀を代表する作曲家サン=サーンスの「交響曲第3番ハ短調」が今回のコンサートの中心的プログラムだが、そこに神尾をソリストに起用したベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」が加わって、2023年の「For Future」東京公演はいわゆる「王道」のプログラムとなっている。
1990年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。以来、ロンドン交響楽団、モントリオール交響楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、トゥールーズ・キャピトル管弦楽団、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団、トリエステ歌劇場管弦楽団、シドニー交響楽団、チャイナ・フィルハーモニー管弦楽団等世界各国のオーケストラに客演を重ね、ドイツ・リューベック歌劇場音楽総監督を務めた。国内ではNHK交響楽団を指揮してのデビュー以来、新星日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、日本センチュリー交響楽団のポストを歴任し、2022年4月から神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽監督を務める。
振り返ってみると、2022年2月22日に神奈川フィルは川瀬賢太郎の指揮で29年ぶりに同じ東京オペラシティコンサートホールで東京公演を行なった。川瀬が常任指揮者に就任してから7年というタイミング、そして2023年に生誕100年を迎えるリゲティの作品を取り上げ、川瀬とオーケストラが温めてきたマーラーの「交響曲第5番」をメインに据えるという意欲的なプログラムで、大成功を収めた。
それから1年。沼尻とともに新たなステージに立つ神奈川フィルは、ヴァイオリン協奏曲史上の最高傑作といわれるベートーヴェン、そしてオルガンを自在に使った史上初の交響曲とも言えるサン=サーンスの「オルガン付き」をプログラムに選んだ。
いま神々しさを纏う神尾真由子が挑む、ヴァイオリン協奏曲史上の最高傑作
ベートーヴェンの協奏曲で共演する神尾真由子については、あらためて紹介をすることもないほど、めざましい活躍を続けている演奏家である。2007年にチャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門で第1位となったが、それ以前から日本国内、海外を問わず、その才能に注目が集まっていた存在だった。原田幸一郎、ドロシー・ディレイ、ザハール・ブロンなどに師事したが、もともと彼女のなかに備わっている才能は、自然と花開いたように感じる。
リサイタルや国内、海外のオーケストラとの共演だけでなく、最近では東京音楽大学教授として若いヴァイオリニストを育てており、彼女の門下からは次々と未来にはばたくヴァイオリニストが登場している。神尾自身が未来を切り開く存在であったけれど、彼女のもとから、さらに今後の日本のヴァイオリン界を担うような才能が登場していることに驚く。
4歳よりヴァイオリンをはじめ、2007年第13回チャイコフスキー国際コンクールで優勝。国内の主要オーケストラはもとより、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、ロシア・ ナショナル・フィルハーモニー交響楽団、ボストン・ポップス・オーケストラ、BBC交響楽団、 BBCフィルハーモニック、ブダペスト祝祭管弦楽団、バイエルン州立歌劇場管弦楽団、ワルシャワ 国立フィルハーモニー管弦楽団などと共演。ズービン・メータ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団と南米ツアー、フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮南西ドイツ放送交響楽団と日本ツアー、ルドヴィク・モルロー指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とイスラエルツアーを行った。ソリストとして、ニューヨーク、ワシントン、サンクトペテルブルグ、モスクワ、フランクフルト、ミラノなどでリサイタルを行っている。
©︎Makoto Kamiya
演奏するときの集中力の高さ、表現の振幅の豊かさ、そして音色の魅力など、ヴァイオリニストとしての資質をもっとも豊かに備えている神尾が、ベートーヴェンのこの傑作に向かうとき、どんな演奏を聴かせてくれるのか、期待するファンも多いことだろう。
オーケストラと荘厳なパイプオルガンの響きを体感するサン=サーンスの名曲で、ライブの醍醐味を!
シャルル・カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921)は、もしかするとフランスの作曲家のなかでその音楽をもっとも耳にする作曲家かもしれない。というのも代表作として知られる《動物の謝肉祭》(1886年)のなかの音楽は、さまざまな形で引用、編曲され、いたるところで使われているからだ。もし、時間に余裕があって、丸1日テレビの前で過ごしたとしたら、CMの音楽のなかに、ヴァラエティ番組のBGMのなかに、ニュース番組のなかにさえ、その《動物の謝肉祭》の音楽を聴き取ることができるだろう。
2021年はちょうど彼の没後100年であったけれど、20世紀まで生きて、しかももっとも初期の映画音楽の作曲家のひとりでもあったということを知れば、より身近なアーティストとして感じる。
そのサン=サーンスの傑作として知られるのが「交響曲第3番」である。初演は1886年ロンドンで行なわれたが、コンサートホールのなかにパイプオルガンが設置されるようになった時代を象徴する作品だ。またサン=サーンスの作曲技法をすべて詰め込んだ(と、作曲家自身が述べている)管弦楽法によるオーケストレーション、そこに加わる壮大なパイプオルガンの響きは、まさにライブ音楽体験の極致ともいえるだろう。
今回、オルガン演奏を担当するのはアレシュ・バールタ(1960年生まれ。チェコ出身)である。さまざまな国際的コンクールで優勝、または入賞し、チェコ・フィルなどとの共演も多い。日本ではやはりチェコ出身のホルン奏者ラデク・バボラークとの共演でも知られているほか、2019年の京都、横浜でのソロ・リサイタルが絶賛された。
1960 年生まれ。ブルノ音楽院でヨゼフ・プクルに、プラハ芸術アカデミーでヴァーツラフ・ラバスに師事。82 年リンツのブルックナー第1位、83 年ブタペストのリスト第2位、84 年「プラハの春」国際コンクールにて圧倒的第1位を獲得。チェコ・フィルはもちろん国内外のオーケストラと共演を重ねている他、欧米アジア各国のコンサートホール、音楽祭からも招かれている。日本でも 2014 年のラデク・バボラークとのデュオツアー、2019年の京都、横浜でのソロ・リサイタルでの名演は特筆される。30枚を超えるCDをリリース、数々の賞を受賞している。
ホルン奏者ラデク・バボラーク(写真右)との共演が記憶に残る。
©︎Hikaru.☆
クラシック音楽の「王道」作品とはいえ、常に新たな光を当てる沼尻の指揮ぶりにも注目である。滋賀県のびわ湖ホールでの芸術監督としての活動で培ってきたさまざまなアイディアが、本格的に関東の音楽ファンの前でも披露される。たくさんの「未来」への夢をつむぐコンサートになることを期待したい。
日時:2023年1月20日(金)19:00開演
会場:東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル
曲目:
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
サン=サーンス/交響曲第3番ハ短調Op.78「オルガン付き」
出演:
沼尻竜典(指揮)
神尾真由子(ヴァイオリン)
アレシュ・バールタ(パイプオルガン)
神奈川フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)
料金:【全席指定】
S席¥6,000 A席¥4,500 B席¥3,000
ユース25歳以下¥1,000 シニア70歳以上各席種10%割引
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