展覧会〈バレエ〜究極の美を求めて〜〉横浜と神戸で開催

死の際までバレエを追い求めた薄井憲二氏のコレクションが、そごう美術館で300点展示

イベント
2018.12.02

キュレーターの関さん曰く「300点も展示されるということが目玉なんです!」
確かに、目の前にあるのはバレエファンのみならず、音楽・美術ファンなら一度は本や、CDの解説で目にするダンサーの写真やポスターの数々。コクトーや、ストラヴィンスキーの自筆サインまで並んでいる。

世界的な舞踊史家で日本バレエ協会前会長の薄井憲二氏と、生前に親交があった渡辺真弓さんが、薄井氏の想い出、バレエへの情熱とともに、12月25日まで行なわれている展覧会〈バレエ〜究極の美を求めて〜〉の見所を教えてくれた。

渡辺真弓 舞踊評論家 放送大学非常勤講師
渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家 放送大学非常勤講師
10歳でバレエを習う。舞踊史家の薄井憲二氏に触発され、舞踊史に興味を持つ。お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊の実技と理論を学ぶ。オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経て...

世界的な舞踊史家で、日本バレエ協会前会長の薄井憲二氏が他界してまもなく1年。

氏は、世界有数の舞踊資料収集家で、その膨大なコレクションは兵庫県立芸術文化センターに収められ、「薄井憲二バレエ・コレクション」として、同センターの企画展や常設展などで一般公開されている。これまで行ってみたいと思っても、なかなか足を運べない人が多かったのではなかろうか。

自らもダンサーとして舞台に立った薄井憲ニ氏の写真も展示されている。

それがうれしいことに、11月23日(金祝)から12月25日(火)、横浜そごう美術館で、「バレエ〜究極の美を求めて〜」と題した特別展が開催されている。貴重なコレクションが一挙300点も公開されるのでこれは絶対に見逃せない。

薄井憲二氏と親交があったバレエダンサー、熊川哲也氏からのメッセージも。

バレエに生きた人、薄井憲二氏の想いがつまったコレクション

薄井氏は、「世界3大バレエ・コンクール」と言われるヴァルナ、モスクワ、ジャクソンの審査員を歴任した舞踊家で、世界的な舞踊史の権威であった。

氏とは30年以上にわたる長いおつきあいがあったが、最初にお目にかかったのは1983年の春、私がオン・ステージ新聞社に入社した時である。同社の音楽と舞踊の専門紙に海外便りを寄稿されていたので、そこから交遊が始まった。公演の帰りには、皆で氏を囲んで会食しながらバレエ談議に花を咲かせたのが懐かしく思い出される。

生前、薄井氏が愛用していたブックスリーブ

実は、個人的に、1970年代からダンス専門誌「テス」に寄稿されていた氏の記事を愛読し、すべてスクラップしていたので、初対面で意気投合。アンナ・パヴロワの『瀕死の白鳥』初演やニジンスキーの出生にまつわるエピソードなどを何度も読んでいたのだが、氏は、私の興味をお見通しだった。わざわざロンドンから900ページもある分厚い本を買ってきてくださったのには恐縮した。この本は今でも私の宝物である。

パリに住んでいた頃は、パリやロンドン、コペンハーゲンの劇場や古書店、あるいは舞踊家の墓地などでよくご一緒した。氏は、リトグラフとかプログラムなどアンティーク資料はもちろんだが、切手やマッチなどちょっとした物でもバレエに関するものなら何でも大切にされていた。どんなに素晴らしい舞台でも、舞踊は一瞬にして消えてしまう。その残照をとどめているのがバレエ資料であり、お墓なのである。お墓といえば、どうしてもと頼まれて、モンマルトルにある、火傷がもとで亡くなった悲劇のバレリーナ、エンマ・リヴリーのお墓にご案内したこともあった。

晩年は、病床にあっても、電話で、バレエ映画やバレエ切手、バレエとジャポニスムに至るまで話は尽きることはなく、博覧強記の姿勢は変わらなかった。それだけに、コレクションの一つ一つの品にバレエへの愛情が感じとれることだろう。

貴重で美しい資料が300点! 過去最大規模のバレエ展覧会

本展覧会では、バレエ史・美術・チャイコフスキー三大バレエをテーマに、ロマンティック・バレエの名花マリー・タリオーニの『ラ・シルフィード』のリトグラフや、バレエ・リュスの公演プログラム、歴史的舞踊家たちの自筆の手紙など300点が公開される。舞踊は、一瞬にして消えてしまう芸術だけに、往時の姿を想像するには、こうした資料が大きな手がかりになる。まさに「究極の美」であるコレクションに、薄井氏のバレエへの情熱に思いを馳せ、氏の功績を偲びたい。

可愛らしいバレエに因んだ絵本のコレクションも。
スペインの画家サルヴァドール・ダリが描いた広告ポスター。
マルク・シャガールも多くのバレエ公演プログラムに絵を提供している。

併せて、「日本バレエの母」エリアナ・パヴロバの遺品や、牧阿佐美の三大バレエの衣裳、今春の東京シティ・バレエ団の『白鳥の湖』公演で復元された藤田嗣治の幻の美術の草案「フジタの白鳥」(1946年帝劇における本邦初演の舞台のために考案された)、さらに『瀕死の白鳥』で有名なアンナ・パヴロワの貴重映像も紹介される。

展示以外に、関連イベントも充実し、たっぷりと魅惑のバレエの世界に浸ってほしい。

エリアナ・パヴロバが1940年(昭和15年)の『白鳥の湖』日本公演で着た衣装
牧阿佐美バレエ団の衣装の数々も美しい。
展覧会情報
薄井憲二バレエ・コレクション特別展  バレエ ―究極の美を求めて―

期間: 2018年11月23日(金)~12月25日(火)

開館時間: 10時~20時(会期中無休)

会場: そごう美術館(神奈川県横浜市西区高島2-18-1)

連絡先: 045-465-5515

 

【関連イベント】

 

12月2日(日) 14時〜15時

牧阿佐美バレヱ団ダンサーズトーク「12月公演『くるみ割り人形』の見どころほか」

12月16日(日) 14時〜15時

コンテンポラリーダンス版『瀕死の白鳥』実演付きトーク「『瀕死の白鳥』の魅力」講師:関典子

12月23日(日) 14時〜15時

記念講演会「エリアナ・パヴロバと日本初のバレエ学校」

講師:川島京子参加方法:電話申し込み 045-465-5515(美術館直通)※事前申し込み(先着順)

 

1月5日~14日は、兵庫県神戸市灘区原田の森ギャラリーで「バレエー永遠の輝きー」を開催。

渡辺真弓さんの著書
魅惑のバレエの世界 ―入門編―

渡辺真弓著 瀬戸秀美(写真)

 

渡辺真弓さんの著書『魅惑のバレエの世界 ―入門編―』(青林堂)が発売されました。

長年パリを拠点に活動してきた渡辺さんの現地での体験・取材をもとに、薄井憲二バレエ・コレクションからの資料もふんだんに楽しめます。

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