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2025.05.27
5月30日(金) ~6月1日(日) 《ドン・キホーテ》全4公演

オーストラリア・バレエ団、シルヴィ・ギエムをコーチに迎え来日公演へ

取材・文
川上哲朗
取材・文
川上哲朗 Webマガジン「ONTOMO」編集部

東京生まれの宇都宮育ち。高校卒業後、渡仏。リュエイル=マルメゾン音楽院にてフルートを学ぶ。帰国後はクラシックだけでは無くジャズなど即興も含めた演奏活動や講師活動を行な...

左からチェンウ・グオ、シルヴィ・ギエム、デヴィッド・ホールバーグ、近藤亜香

©︎Shoko Matsuhashi

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2025年5月30日(金)、15年ぶりの来日公演が開幕するオーストラリア・バレエ団(以下TAB)

TABは1962年の設立以来、欧州のさまざまなレパートリーを吸収し、国際的スターとの共演、数多くの海外公演実施などを経て名門バレエ団のひとつに成長。2021年より芸術監督を務めるデヴィッド・ホールバーグのもと、2023年シーズンには年間公演数230回超、総観客動員数30万人を達成している。

そんなTABが今回上演するのは、伝説のダンサー/振付家のルドルフ・ヌレエフが1970年、TABのために創り出し、1972年には映画化もされた大切な演目《ドン・キホーテ》

今回ホールバーグ芸術監督はこの上演のため、かつてヌレエフによってパリ・オペラ座のエトワールに任命され、彼自身とその作品をよく知るもうひとりの伝説、シルヴィ・ギエムをコーチとして招いた。

5月26日に行なわれた開幕記者会見の模様を少しだけお届けする。

ホールバーグ監督のラブコールにより、今回のコラボレーションは実現した。

「ヌレエフ版《ドン・キホーテ》はTABにとって大切な作品であり、公私ともにヌレエフをよく知るシルヴィに、”眼”となって、監修してもらう役割を担ってもらいました。ダンサーたちの個性を活かし、自分らしくいることを許してくれるコーチです」(ホールバーグ)

デヴィッド・ホールバーグ
©︎Shoko Matsuhashi

2015年、ラスト・ダンスの舞台に日本を選んだギエム。世界文化賞を受賞した2018年以来7年ぶりの来日となった。

「イタリアで動物たちとたわむれながら過ごしていたのですが、隣に座っている“クレイジー・マン”(ホールバーグ監督)の単刀直入かつ、優しさのあるオファーがあり、引き受けることにしました」

シルヴィ・ギエム
©︎Shoko Matsuhashi

「わたしはルドルフ(・ヌレエフ)とたくさん仕事をしましたが、とくに彼の知的な面をTABの舞台に反映できたと思います。

ダンサーたちが芝居をする余白、キャラクター作りの自由度があるのがヌレエフ作品の魅力です。ダンサーたちはともすると“ダンスを踊るだけ”になりがちですが、それだけではフラットになってしまいますから。そして、いつもではなかったにしろ、彼のユーモラスでウィットに富んだ性格が作品に表れています」(ギエム)

会見には、初日と6月1日に主演する近藤亜香/チェンウ・グオも登壇。公私ともにパートナーのプリンシパル2人が、ギエムの指導について語ってくれた。

「テクニックよりも役のキャラクター性や関係性の表現に重点を置いた指導で、自信がつき、成長を実感しています。シルヴィさん、ホールバーグ監督をはじめるとするバレエ団のサポート体制にも支えられ、良いタイミングで日本公演で主役を踊るのが楽しみです」(近藤)

近藤亜香
チェンウ・グオ
©︎Shoko Matsuhashi

「“シルヴィサマ”はわれわれにとって神様のような存在です。11歳のとき、国が認めた人しか映ってはいけない中国の国営放送で、シルヴィサマがパフォーマンスしていたのを観て、どれだけすごい人なのだろうと思ったのを覚えています。彼女は技術面だけでなく精神面でも導いてくれました。指導を通して自分自身のアーティスト像が完成されたと感じており、彼女と仕事ができるのは夢のようです」(チェンウ)

ギエムにとって教えるとはどのようなことなのだろうか?

「大切なのはダンサーにハッピーになってもらうことです。舞台でお客さんに素敵なギフトを渡すのはダンサーであり、そのためにはテクニックだけでなく、踊ることの心地よさや楽しさが必要です。私の役割は、ダンサーの個性を見極め、可能性を引き出すこと。彼らが進化していく姿を見られるのは、何よりの喜びです」(ギエム)

フォトセッションではカメラに向かって指ハートをしてくれた4人!
写真:編集部

会見の後には、日本においては初となるギエム指導による公開リハーサルが行なわれた。

31日のソワレ公演で主役を演じるジル・オオガイとマーカス・モレリのふたりに、振り付けのアドバイスから細かな表情まで、熱心に指導するギエム。やさしい眼差しで、鋭くダンサーたちの悩みを掘りだし、解決していく姿に、TABとの素晴らしいコラボレーションを垣間見ることができた。

Photo:Shoko Matsuhashi

モレリとリフトのタイミングを探っているときに、ギエムがキュートなフレンチ・アクセント英語で放ったひとこと「Feel the Music!!(音楽を感じて!)」。これが聞けただけで、音楽とバレエを愛する筆者は有頂天だった。

左からデヴィッド・ホールバーグ、マーカス・モレリ、ジル・オオガイ、シルヴィ・ギエム
Photo:Shoko Matsuhashi

進化を続けるホールバーグ芸術監督率いるオーストラリア・バレエ団、そして指導という次のステップで芸術を支えるギエムが創り出す舞台に注目したい。

公演情報
《ドン・キホーテ》プロローグ付き全3幕

会場: 東京文化会館(上野)

 

指揮: ジョナサン・ロー
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 

5月30日(金) 18:30
キトリ:近藤 亜香
バジル:チェンウ・グオ

5月31日(土)12:30
キトリ:山田 悠未
バジル:ブレット・シノウェス

5月31日(土)18:30 *
キトリ:ジル・オオガイ
バジル:マーカス・モレリ

* デヴィッド・ホールバーグ × シルヴィ・ギエム スペシャルプレトーク開催

6月1日(日)12:00
キトリ:近藤 亜香
バジル:チェンウ・グオ

 

詳細はこちらから

取材・文
川上哲朗
取材・文
川上哲朗 Webマガジン「ONTOMO」編集部

東京生まれの宇都宮育ち。高校卒業後、渡仏。リュエイル=マルメゾン音楽院にてフルートを学ぶ。帰国後はクラシックだけでは無くジャズなど即興も含めた演奏活動や講師活動を行な...

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