古楽器の制約が熱気を生む! バッハ・コレギウム・ジャパンのベートーヴェン「第九」
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
コンサートが開催されるというだけでありがたい。そんな状況が続いた2020年の掉尾を飾るにふさわしい公演のひとつが、急遽開催が決まった鈴木雅明の指揮、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)による「第九」である。
BCJのベートーヴェンというと真っ先に思い出されるのが、2017年2月の「ミサ・ソレムニス」、2019年1月の「第九」である。つい最近、そこに交響曲第5番(いわゆる「運命」)と「ミサ曲ハ長調」が加わった。いずれも、力と熱気に満ちた大変な名演奏として、記憶に残っている。
それにしても、なぜ古楽器オーケストラによるベートーヴェンがこんなにも燃焼度の高いものになるのか? オケも合唱も人数が少ないのに?
この質問を以前、BCJ音楽監督の鈴木雅明さんにしてみたことがある。
古楽器で演奏すると、いろいろな制約がかかります。音量だけでなく音域も狭くなる。
わざわざそういう楽器を使って何の得があるのかと言われますが、実際には大きな得があって、楽器というのは、ある制約の中にあったほうが、いい音がするんですよ。つまり、弦楽器であれ、管楽器であれ、楽器の能力をめいっぱい使い切ったときに、一番感動的で、情熱的な演奏になる。
これまでの作曲家たちは、ある意味いつも楽器の限界に挑戦してきた。そのせめぎあいが本来はあった。それを取っ払ってしまったら、音楽の緊張感はなくなります。
あの演奏は、小編成のものをめいっぱい、響かせるということの結果なんですよ。あそこに100人、200人の合唱がいたら、もっと大きな音になるかもしれないけど、一人ひとりのエネルギーは爆発できません(註:「ミサ・ソレムニス」での合唱は34人だった)。BCJでは、人数が少ない代わりに、一人ひとりが完全に燃焼し切ることを、僕に無理やり要求されますから(笑)
つまり、古楽の必然性があるとしたら、楽器の性能を限界まで使おうとしたときの輝き、緊張感、そういうものを求めているということだ。その効果は、圧倒的である。だから、BCJのベートーヴェンはあれほどまでに激しく、熱いのだ。
今回の「第九」の前には、鈴木優人のオルガンで、バッハの「パッサカリアとフーガ ハ短調BWV582」が演奏される。バッハの数あるオルガン曲の中でも、もっとも暗く壮大な響きに満ちた最高傑作。ここからベートーヴェンに進むというアイディアも素晴らしい。いまから楽しみでならない。
「第九」のソリストたち
日時: 12月27日(日)14:00開演、18:00開演
会場: 東京オペラシティ コンサートホール
出演:
鈴木雅明(指揮)
鈴木優人(オルガン)*
森 麻季(ソプラノ)
林 美智子(アルト)
櫻田 亮(テノール)
加耒 徹(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱&管弦楽)
曲目:
J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582(オルガン独奏)*
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125《合唱付き》
料金: S席10,000円、A席8,000円、B席6,000円、C席4,000円
問い合わせ: 東京オペラシティチケットセンター Tel.03-5353-9999
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