BEYOOOOONDS小林萌花~アイドルとピアノを両立させ《英雄ポロネーズ》で武道館デビュー!?
音楽家の子ども時代から将来の「音楽のタネ」を見つける「室田尚子の“音楽家のタネ”」。
第9回は、アイドルグループBEYOOOOONDSの小林萌花さん。音大生とアイドルの両方をこなす現役大学4年生が、4月25日、あの人気のピアノ曲を武道館で弾く!? ここに至るまでには何があったのでしょうか。
東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...
2018年にハロー!プロジェクト(略称ハロプロ)から生まれた12人組のグループBEYOOOOONDS。この3月にリリースされた3rdシングル『英雄〜笑ってショパン先輩〜』は、なんとショパンの《英雄ポロネーズ》がベースになっていて、一度聴いたら忘れられない、かつ中毒性のあるいわゆる“スルメ曲”。
ここでグランドピアノを弾きこなし、《英雄ポロネーズ》の各フレーズを見事に披露してくれているのが小林萌花(ほのか)さん。なんと音大でピアノを学んでいる現役の大学4年生だという小林さんに興味を持った私、室田尚子。
早速、小林萌花、愛称「ほのぴ」の“音楽家のタネ”を探りに行ってまいりました。教えて、ほのぴ♪
グランドピアノがほしかった
小林 初めてピアノに出会ったのは4、5歳頃のことで、兄の友人のピアノの発表会に連れて行ってもらったときのことです。ピアノを弾く姿に憧れて、私もピアノを習いたいと母にせがみました。我が家は母が昔エレクトーンを習っていたという以外には、音楽とは無縁の家庭だったのですが、両親は快くピアノを習わせてくれました。
そう、知り合いor親戚のピアノの発表会きっかけでピアノを始めた、という人、結構多いんですよね(かくいう私もそれでした)。ところが小林さんの場合、その後の成長ぶりが他とは違っていました。
小林 小学校3年生のときにピアノのコンクールに出たいと思ったんですね。それで先生を変わって本格的なレッスンをスタート。そこから、ピアノに対する向き合い方が変わり始めました。
コンクールに出てから段々とグランドピアノがほしい! と思うようになり、母にねだったのが小4のとき。そうしたら母が、音大を目指すなら買ってもいいと。そこで「音大に行きます!」と宣言しました。
小学校3年生や4年生といえば、私などはまだ漠然と「ピアニストになれたらいいな〜♡」と思っていたぐらいですが、小林さんは既にこの頃から将来を考え始めていたんですね。人として、非常に成熟のスピードが早い感じがします。そして、いよいよ中学校に、という時点で「本格的に音楽を勉強していくことを決めた」という小林さん。
小林 音楽専門の中学校もあるので、そこに進むことも考えたんですが、当時習っていたピアノの先生とも相談して、地元の普通の中学校に行くことにしました。そして3年間レッスンを進めていき、高校で音楽高校に入学したんです。
アイドルになったワケ
そんなふうに、早くから音楽の道を歩み始めた小林さんですが、高校2年生のときに進路に悩む時期がやってきます。音楽高校という、ある意味特別な環境の中で勉強を進めていくうちに、自分は本当にこのままでいいのか、このまま音大へ進むのが正しいのかどうか、悩み始めたのだそう。
小林 そんなときに出会ったのが、ハロー!プロジェクトだったんです。アイドルという職業に憧れを持つようになっていったときに、ハロー!プロジェクトのオーディションがあることを知りました。
それは「歌とダンスに加えて、他の人にない特技を持った人」を募集する、というハロプロの中でも特殊なオーディションで、「私はピアノが弾ける!」と思って応募しました。
見事オーディションに合格した小林さんでしたが、そこで持ち上がったのは家族、特にお母さんの反対でした。小さい頃からピアノを習わせてきたお母さんには、小林さんにピアノを続けてほしい、という思いが人一倍強くあったそう。そんなお母さんが連日の家族会議の末に出した結論は……。
小林 もしアイドルになりたいなら、音大にも行ってピアノも続けなさい、というのが母が出した条件でした。
私がアイドルのオーディションを受けたのは、ピアノを習わせてくれた母に対して、自分がピアノでできることを見てもらいたいという思いもあったので、この母の条件を受け入れて、アイドルと音大生との両立をすることを決意しました。
音大生とアイドル、二足の草鞋生活
音大に通った方ならご存知だと思いますが、音大の1、2年生というのは特にやることの多い、忙しい学年です。小林さんはやるからには絶対に諦めたくない! という思いから、ピアノも勉強もがんばりました。
例えば、どの科でも必修であり、多くの音大生が苦しめられる(!)ソルフェージュという授業がありますが、小林さんは2年間ずっとトップクラスをキープしたそう。ほのぴは、すごい頑張り屋さんなんだね!
小林 今振り返ってみると、この3年間は人の2倍ぐらい生きていたような気がします。音大生とアイドル、両方を何とか配分しながら活動してきたつもりですが、共に新しい世界を同時にスタートさせたので、やはり物理的、精神的にもとても大変なこともありました。
でも、ピアノとアイドル、どちらの面でもステップアップできたとは思いますし、今は大きな声で「やってよかった!」と言えます。
アイドル活動と音大生としての活動は、互いに影響し合っています。例えば、ラジオの公開収録で、サックスの上野耕平さんとフルートの多久潤一朗さんと一緒に三重奏を演奏するなど、一音大生ではなかなかできない貴重な経験ができたことは大きな財産になったと語る小林さん。
また逆に、ハロー!プロジェクトの一員として数多くの本番を経験することで、舞台での佇まいやピアノに向かう姿勢が身についたとも。二足の草鞋は、小林さんにとっては大きな実りをもたらしたようです。
『英雄〜笑って!ショパン先輩~』は最高の1曲
「現時点で、既に世界で一番ぐらいたくさん《英雄ポロネーズ》のイントロを弾いていると思います」と笑う小林さんですが、やはりピアノを勉強してきた人にとって《英雄ポロネーズ》という作品は難曲ですし、これを新曲の中で演奏するというのは特別な思いがあったのではないでしょうか。
小林 最初に「次の曲で《英雄ポロネーズ》弾いてもらうから」と言われたときは、はっきり言って恐怖でしたし、すごくプレッシャーを感じました。
でも同時に、自分が小さい頃から憧れてきた《英雄ポロネーズ》という作品をBEYOOOOONDSの曲としてみなさんにお届けできるということに、とてもワクワクしたんです。クラシックのことはあまり知らないかもしれないBEYOOOOONDSのファンに、この曲の素晴らしさを知ってもらえるのが嬉しかったですし、原曲のイメージを尊重した素晴らしいアレンジなので、クラシック・ファンの方にも聴いてもらえるのではないかと期待しています。
BEYOOOOONDS『英雄~笑って!ショパン先輩~』PV(作詞:星部ショウ、作曲:ショパン、編曲:加藤裕介/星部ショウ、MV Director:今原電気)
確かにこの曲、歌詞にショパンの人生がさりげなく織り込まれたり、また曲自体がショパンの原曲の音楽性を最大限尊重したアレンジになっています。しかも、サビは「ノクターン」op.9-2! この跳躍の多いメロディを歌いこなしてしまうというところに、BEYOOOOONDSの実力が表れているなと感じました。
ちなみに、アレンジを担当したのは、これまでにBEYOOOOONDSはじめハロプロの多くの曲を手がけ、また自身もYouTuberとして活躍している星部ショウさん。星部さん、きっとショパンの曲が大好きなんだろうな。
星部ショウ自ら『英雄~笑って!ショパン先輩~』をプレゼンした動画
ピアノ好きな子どもたちに伝えたい
4月25日には、BEYOOOOONDS初の武道館ライブが開催されます。もちろんこの『英雄〜笑って!ショパン先輩〜』も披露されるんですよね!?
え、ちょっと待って。
てことは、武道館にほのぴが弾く《英雄ポロネーズ》のメロディが流れるってこと……!?
小林 はい! 私個人としては、武道館でピアノを弾くことを目標に、今は一生懸命練習をしています。そしてBEYOOOOONDSを聴いた子どもたちが、ピアノの素晴らしさや音楽の楽しさを知ってもらえたらとても嬉しいです。
確かに、小さい頃からピアノを習い、音大生をしながらアイドルとして活動を繰り広げている小林萌花さんの姿は、ピアノを習っている子どもたちにとっても、ピアノという楽器の持つ大きな可能性に気づかせてくれるきっかけになるに違いありません。
ピアノ好き、アイドル好き、ショパン好き、クラシック好き、さまざまな人たちにBEYOOOOONDSとほのぴの「音楽への愛」が届きますように☆
日時: 4月25日(月)18:00開演
会場: 日本武道館(東京)
出演: BEYOOOOONDS
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