インタビュー
2022.11.21
室田尚子の「音楽家の“タネ”」第11回

次代を担うミュージカル俳優・竹内將人~「熱中」「没頭」が僕をここまで育ててくれた

音楽家の子ども時代から将来の「音楽のタネ」を見つける「室田尚子の“音楽家のタネ”」。
第11回は、クラシックを土台にミュージカルの世界へ、さらにはストレートプレイでも活躍する竹内將人さん。竹内さんをここまで導いてきた、桁外れの原動力とは?

取材・文
室田尚子
取材・文
室田尚子 音楽ライター

東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...

写真:各務あゆみ

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毎年秋に東京都豊島区池袋エリアで開催されている東京芸術祭。その一環として11月23日から東京芸術劇場で上演されるモリエールの傑作『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』に、主人公アルパゴンの息子クレアント役で出演するのが、今、次代を担うミュージカル俳優として注目を浴びる竹内將人さん。

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竹内さんといえば、ミュージカル・ファンには2021年に上演された『レ・ミゼラブル』のマリウス役が記憶に新しいところですが、実は東京藝術大学声楽科で学び、その後英国王立音楽院に留学したという経歴の持ち主。

クラシックを土台にミュージカルの世界へ、さらにはストレートプレイでも活躍するという竹内さんの才能を育てた「タネ」はどこにあるのか?   室田尚子が探ります。

竹内將人(たけうち・まさと)
幼い頃から劇団四季『ライオンキング』ヤングシンバ役などに出演、2017年東京藝術大学 声楽科を卒業後、2019年には英国王立音楽院ミュージカル科修士課程修了後、ミュージカル・舞台に数多く出演するほか、音楽グループ「Gen・Rin」のメンバーとしても活躍している。近年の主な出演作は、【舞台】ミュージカル『ガイズ&ドールズ』、舞台『ピアフ』(22)、ミュージカル『GREY』、ミュージカル『レ・ミゼラブル』(21)、ミュージカル『アナスタシア』(20)など。Eテレ「キソ英語を使ってみたら世界とつながった。」(NHK-22)にレギュラー出演している。

子どもの頃からずっと、ミュージカルが好きだった

3歳から劇団ひまわりに所属、中学1年生の時にミュージカル『ライオンキング』のヤングシンバ役で舞台に立ったという竹内さん。とにかくミュージカルが大好きで、お風呂でもトイレでもミュージカル・ナンバーを歌っているような子どもだったそうです。

竹内 小さい頃から舞台に立つことが大好きで、目立ちたがり屋でしたね。小学校の運動会や音楽会でもセンターに立ちたい、前に出たいという子どもでした(笑)。

劇団ひまわり時代は、地元・福岡の博多座の舞台によく立たせていただいていたのですが、同時に母が、ミュージカルやお芝居、歌舞伎、宝塚の舞台によく連れて行ってくれて、それでミュージカルが大好きになりました。小中学校時代を通して『エリザベート』『モーツァルト!』『ライオンキング』『キャッツ』『ミス・サイゴン』のCDは擦り切れるぐらい聴いたと思います。

そんな將人少年ですが、中学校の3年間はバスケットボール部に所属し、舞台からは少し遠のいた時期を過ごしました。

竹内 声変わりの時期でもあり、あまり舞台のお仕事がなかったんです。その代わり、と言ってはなんですが、学校生活がとても楽しくて、勉強も部活も友達と遊ぶのも全力でした。今でも一緒に遊ぶのは中学高校時代の友達が多いくらいです。

そんな中で、漠然と「将来もミュージカルをやっていくんだろうなあ……」とは思っていたのですが、高校に入って進路をどうするかという問題を突きつけられた時に、改めて「ミュージカル俳優になりたい」という思いを強くしました。それならば、地元出身の先輩で、僕の憧れの存在でもある井上芳雄さんが通った東京藝大に進もう、と決意しました。

意志の強さがもたらしたもの

ところが、東京藝大の声楽科というところはクラシック音楽、特にオペラを中心に学ぶ場所。竹内さんも周りの同級生と同じく、大学卒業後はイタリアに留学してオペラ歌手になりたい、という気持ちが芽生えたといいます。それを覆したのが、大学3年の時に受けたミュージカル『レ・ミゼラブル』のオーディションでした。

竹内 久しぶりにミュージカルの現場に接して、「これが本当に好きなことだ」と気づいたんです。そのオーディションはイギリス人演出家とのワークショップ形式でしたが、見事(?)不合格になりました。でも逆に、その時自分の足りない部分に気づき、ミュージカル俳優になるならば海外に行かないとダメだと思って英国留学を決意しました。

大学卒業後、ニューヨークでの語学研修を経て英国王立音楽院のミュージカル科に入学。食事以外の時間はすべてミュージカルを学び、セリフを覚え、歌の練習をすることに充てるという凄まじい生活を送ります。

竹内 でも、当時はその生活を「努力」だとは思っていなかったんですよね。実は僕、もともと熱中するととことんまでのめり込む性格なんです。学食ではカツカレーしか食べなかったり、お気に入りの定食屋さんができると週5で通いつめたり……。そういう「熱中」「没頭」が、僕をここまで育ててくれたのだと感じています。

「アーティスト」「表現者」というのは、自分の「好きなこと」をとことんまで好きでい続けた人たちなのでしょう。「生きるということよりも好きの方が優先順位の上に来るぐらいでないと生き残れないし、実際、藝大の同級生でもそういう人が歌手として今も歌い続けている」という竹内さんの言葉は、そのまま竹内將人その人のことでもあるのだなと思いました。

どこの国でも通用する俳優になりたい

一度は不合格になった『レ・ミゼラブル』のオーディションに、英国留学を経た竹内さんが合格したのは周知の通り。2021年マリウス役での出演は、まさに彼の執念がもたらしたリベンジでした。その後は『GREY』や『ピアフ』『ガイズ&ドールズ』といった舞台に立て続けに出演を重ねています。

竹内 特に今年の大竹しのぶさん主演『ピアフ』では、短いシーンですが歌のないお芝居をやらせていただきました。しのぶさんをはじめ、先輩方からたくさんの“愛の鞭”をいただいて、お芝居というものに対する考え方や向き合い方を変えていかなければと思っていたところ、今回の『守銭奴』のお話を頂戴したんです。

『守銭奴』は17世紀フランスの古典喜劇ですが、モーツァルトのオペラ《コジ・ファン・トゥッテ》や《フィガロの結婚》の世界にとても近いものがあります。今回演出を手がけるプルカレーテさんの不思議で壮大な世界観がとても面白く、現代の若者にも楽しんでもらえる作品になっていると思います。

ミュージカルからストレートプレイの世界へと表現のフィールドを広げている竹内さんですが、「主軸はミュージカル」とあくまでブレません。

竹内 藝大時代の同級生にKing Gnuの井口理がいるんですが、彼も僕と同じように「本当にクラシック音楽が自分のやりたいことなのか」ということに疑問を感じて、大学2年の時からバンド活動を始めています。自分が本当に好きなことや自分が生まれ持ったものを最大限に活かせる場所にいける、ということがアーティストとしての成功に近い道だとよく話しているんです。

だから、僕の主軸はあくまでもミュージカル俳優です。将来はロンドンのウエスト・エンドとニューヨークのブロードウェイの舞台に立ちたい。しかもただ立つだけでなく、そこでローレンス・オリヴィエ賞やトニー賞を目指したいので、そのためにはアジア人の役、具体的には『ミス・サイゴン』のエンジニア役をやりたいと考えています。そして、世界中のどんな国でも通用する俳優になるのが、僕の夢なんです。

公演情報
東京芸術祭2022 芸劇オータムセレクション『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

ストーリー:
ドケチなアルパゴンは、召使をはじめ、息子と娘にまで極度の倹約を強要し、
家族の我慢も限界に達している。
そんなある日、アルパゴンは再婚したいと申し出る。
その相手は、実の息子が恋した相手だった!
けちんぼ親父とその息子と娘、それぞれの恋人たちとの七転八倒やり取りの際中で、
思いがけない秘密が明らかになる。

 モリエール

翻訳 秋山伸子

演出 シルヴィウ・プルカレーテ

キャスト
佐々木蔵之介(アルパゴン)、加治将樹(ヴァレール)、竹内將人(クレアント)、大西礼芳(エリーズ)、天野はな(マリアーヌ)、他

公演スケジュール
●東京公演
日程:2022年11月23日(水祝)~12月11日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
料金:S席9,500円、A席7,500円(25歳以下5,500円)、他
問い合わせ:東京芸術劇場ボックスオフィス 0570-010-296(休館日を除く10:00~19:00)

●宮城公演
日時:2022年12月15日(木)開演19:00
会場:えずこホール(仙南芸術文化センター)大ホール

●大阪公演
日程:2023年1月6日(金)~9日(月祝)
会場:森ノ宮ピロティホール

●高知公演
日時:2023年1月14日(土)開演14:00
会場:高知県立県民文化ホール オレンジホール

 

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取材・文
室田尚子
取材・文
室田尚子 音楽ライター

東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...

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