インタビュー
2024.04.16
【Band Journal×WebマガジンONTOMO連携企画】トロンボーン 愛器を語る!

ヤマハのトロンボーンを桒田晃、阿部竜之、鳥塚心輔が語る!

ヤマハのXenoシリーズのトロンボーンを愛用する、東京と大阪、3つのプロオーケストラの首席奏者に集まっていただき、それぞれの愛器について語っていただいた。
●本記事は『Band Journal』2024年3月号に掲載されたものです。

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1959年創刊の吹奏楽専門誌。毎月10日発売。吹奏楽の今を追い続けて60年超、学校の吹奏楽部の現場への取材やプロ奏者へのインタビューをはじめ、指導のノウハウ、楽器上達...

文=今泉晃一/写真=各務あゆみ

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桒田晃(くわた・あきら)
武蔵野音楽大学卒業。在学中新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。現在、読売日本交響楽団首席奏者の他、読響トロンボーンカルテット、トロンボーン・クァルテットジパング、カスタム・ブラス・クインテット、アンサンブル・ターブ、トウキョウブラスシンフォニーのメンバー。各アンサンブルにてCDをリリース。武蔵野音楽大学、桐朋学園大学の非常勤講師。
阿部竜之介(あべ・りゅうのすけ)
13歳のときにユーフォニアムを始め、18歳のときにトロンボーンも始める。高校卒業後に渡仏し、フランス国立ペルピニャン音楽院へ入学。卒業後ドイツのライプツィヒ放送吹奏楽団、ハンガリーのサボルチ交響楽団の奏者として活動。現在、大阪交響楽団首席トロンボーン奏者。ESA音楽学院専門学校ユーフォニアム、トロンボーン講師。
鳥塚心輔(とりづか・しんすけ)
13 歳よりジャズオーケストラにてトロンボーンを始める。東京藝術大学卒業。東京藝術大学大学院修士課程修了と同
時に東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に入団。2006年に東京交響楽団に首席奏者として移籍。東京アトラク
ティヴブラス、早川隆章「東京SLIDING倶楽部」、SLIDE JAPANメンバー。

個人練習のときには特に身体の状態を意識

——どのように楽器を始めましたか。

鳥塚 トロンボーンを始めたのは中学のビッグ バンドでした。高校で吹奏楽部はすぐやめてしまい、それからレッスンに通って音大を目指しました。

桒田 私は中学・高校とどっぷり吹奏楽に浸かっていました。高校では吹奏楽コンクールの全国大会で普門館に行きました。

阿部 僕は中学・高校と吹奏楽部でユーフォニアムを吹いていました。でもトロンボーンもずっと好きで、高校卒業後は日本の音大には行かずにフランスに留学したのですが、トロンボーンでオーケストラに入りたいと思い、始めました。当時の先生に「ユーフォニアムの2倍、トロンボーンを練習しなさい」と言われて必死に練習しました。かなり苦労しましたが、「こう吹けばユーフォニアムの音になる、こう吹けばトロンボーンの音がする」ということがわかって、それが自分の武器になったのかなと思っています。でも結局ユーフォニアムもやめられず、今でも両方吹いています。

——みなさんが楽器を吹くときに重視している ことはどんなことでしょうか。

鳥塚 この頃、楽器を吹いているときの身体の状態を特に意識するようになってきました。たとえば自宅で基礎練習するときに、ヘッドフォンで耳をふさいであえて音を聴かず、身体がきちんと使えているかどうかに集中します。防音室が狭いので、そこに合わせて音色を作ってし まわないように、ホールで吹いていることをイメージして体の使い方を確かめているんです。

阿部 身体のことは、僕も以前から気にしています。30歳になったときに「これからの10年間が自分の40代を作る」と考えて、腕立て伏せやストレッチを始めました。僕も自宅では主に練習用ミュートを付けて吹いているのですが、ア タックの細かな差を確認したり、どの音域、どのポジションで吹いても同じ息の圧がかかるように気にしてやっています。

桒田 練習用ミュートとして、僕はヤマハのサ イレントブラスのピックアップミュートを使っています。コロナ禍のときにいろいろなものを買って試したり、ペットボトルを利用して自分で作ってみたりした結果、吹奏感が一番自然なのがサイレントブラスでした。

くせがなく、自分の声のように自在にコントロールできる楽器

——楽器に対しては、どんな要素を重視しますか。

桒田 やはり反応のよい楽器ですね。建てつけが悪い楽器だと、ダイレクトに反応しなかったりする場合もありますが、ヤマハの楽器は丁寧に作られているので安心です。それに加えて音色の幅や音量のキャパシティがあれば、 よりよいと思います。

鳥塚 僕の場合、思ったままに癖な く吹ける楽器が一番です。楽器が勝手によい音を出してくれるようなのも好きではありません。

阿部 やはり、自分の声のように自由自在に吹ける楽器ですね。自分以上でも以下でもなく、自然に話すように音を出してくれる楽器。その声がよくないなら、自分が練習すればいいだけなので。

——今お使いの楽器はいかがですか。

阿部 メインはヤマハのYSL-882 ORですが、まさに今お話ししたように自分の思うとおりに出してくれる楽器で、あとは音楽の表現のことだけを考えればいいので、幸せです(笑)。もともと約15年前に、東京の大きな楽器店を回っていろいろなモデルを試奏し、ヤマハのYSL-882GO(8820のゴールドブラス)を選びました。結局それがもっとも音楽表現がしやすかったのです。882ORに替えたのはオーケストラに入ってから。より幅広く吹けて他のさまざまな楽器に合わせやすいという理由です。

桒田 今使っているのは2年ほど前に 発売されたヤマハのYSL-825という、僕自身が開発に関わった楽器です。自分の声のように自在にコントロールできる楽器を目指して作った楽器で、完全に満足しています。以前、ヤマハ独自の「Vバルブ」を使ったYS-L882Vという楽器の開発にもかかわりましたが、 管 とF管で息が同じ方向に流れるというコンセプトを受け継いでいます。

——鳥塚さんは?

鳥塚  YSL-882がメインです。とにかく楽器が好きで、20本くらいの楽器を持っていますが、そのなかでもヤマハを選ぶ理由は、まずくせがないところ。魅力的な音がするうえに、 自分の意思を伝えやすいんです。もう1本のYSL-882ORのほうは、ニューヨーク・フィルの2nd吹きであるデイヴィッド・フィンレイソン氏を追いかけるための楽器です。彼はスライドの先にカメラをつけた動画でも話題になり ましたが、何よりその音が好きで、オーケストラでは1stと同等以上に吹けるすごい奏者です。彼と同じような音が出したいと思い、同じ楽器を同じ仕様にしています。

阿部 僕は、ヤマハの楽器の魅力のひとつとして、長く使ってもへたらないところが挙げられると思います。過去に使っていた楽器では、3年くらいで鳴らなくなってしまったような経験もしましたので。

桒田 特にスライドは非常に高い精度が要求される部分ですが、ヤマハは世界一だと思っています。スライドが少しでもスムーズに動かないと、演奏意欲がなくなってしまいますから。しかも個体差が少ないので、何本もの楽器を吹き比べられるような環境でなくてもクオリティの高い楽器が手に入るというのは、本当にありがたいことです。

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