インタビュー
2024.04.16
【Band Journal×WebマガジンONTOMO連携企画】トロンボーン 愛器を語る!

バックのトロンボーンを福田えりみが語る!

「なんとなくトロンボーンを始め、先生の薦めのままにバックを吹き始めた」という福田えりみさん。後にトロンボーンの面白さにハマり2018年からは大阪フィルハーモニー交響楽団首席トロンボーン奏者を務めている。そんな彼女をずっと支え続けた愛器についてお話をうかがおう。
●本記事は『Band Journal』2024年3月号に掲載されたものです。

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1959年創刊の吹奏楽専門誌。毎月10日発売。吹奏楽の今を追い続けて60年超、学校の吹奏楽部の現場への取材やプロ奏者へのインタビューをはじめ、指導のノウハウ、楽器上達...

文=今泉晃一/写真=各務あゆみ

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福田えりみ(ふくだ・えりみ)
千葉県出身。柏市立柏高等学校を経て、2018年東京藝術大学を卒業。現在、大阪フィルハーモニー交響楽団首席トロンボーン奏者。Trombone Quartet Capriccio 、Brass Quintet 粋 メンバー。

秋山先生への恩返しのため先生の希望をかなえたい

——トロンボーンを始めたきっかけは?

福田 姉に影響されて小学校の金管バンドでトランペットを始めたのですが、楽器が重くて途中でやめてしまいました(笑)。中学に入ったときもなんとなく吹奏楽部に入ってなんとなくトロンボーンを始めたのです。千葉県柏市の酒井根中学校という、吹奏楽コンクールで何度も全国に行っているところで、私もソロコンクールなどに出させてもらっているうちにトロンボーンが楽しくなってきました。

中学の先生の紹介で当時NHK交響楽団にいらっしゃった故・秋山鴻市先生のレッスンに通うことになったのですが、最初そんなすごい方だなんて全然知らなくて、「ダンディなおじいちゃんだな」くらいにしか思っていませんでした。ただの習い事感覚だったのですが、先生が私を気に入ってくださって、思えば中学生の頃から「オーケストラプレーヤーになってほしい」とずっと言われていました。でも当時の私はドルフィントレーナー(イルカ調教師)か幼稚園の先生になりたくて(笑)、トロンボーンは続けながらも、「どうやったらドルフィントレーナーになれるだろう」と考えていました。本当によくわかっていなかったんです(笑)。

そうしたら秋山先生から「やはり東京藝術大学を受けてほしい」と言われて、めちゃくちゃ努力して合格できたのですが、いざ入ってみると周りの人々のレベルの高さと真剣さに「これはドルフィントレーナーを目指している場合じゃない」とようやく気づきました。そして秋山先生がご病気をされたことで、自分の気持ちが変わりました。「ここまでトロンボーンを続けられたのは先生のおかげだから、恩返しのために先生の希望をかなえよう」と。

福田 東京藝大では古賀慎治先生、石川浩先生に習いました。秋山先生は難しいことを一切仰らず、私の思うままに吹かせてくださっていたので、古賀先生や石川先生のレッスンで初めて「こういうことも言われるんだ」と思ったことも多かったのです。別の視点からのレッスンは新鮮でしたし、私にかなりとんちんかんなところがあったにもかかわらず、優しくしていただきました。

とにかくオーケストラというものをわかっていなくて、高校時代にマーチングの大会で演奏した《展覧会の絵》をマーチングの曲だと思っていたくらいですから。実際にオーケストラのオーディションを受けるようになってから、どうやって吹けばいいか全然わからなくて、検索してオーケストラの曲をたくさん聴くようになりました。

誰とでも合わせやすく、自由に個性を表現できる

——楽器はいつからバックを?

福田 中学までは学校の楽器を吹いていましたが、高校に入る頃に秋山先生の薦めでバックにしました。というか、どういう楽器があるのかさえ知らなかったので先生が選んでくださった候補のなかから42Aを選び、色が可愛いかったのでゴールドブラス(GB)にしました。東京藝大に入ってから楽器の知識も増えましたが、あらためてバックの魅力にも気づき、結果ずっとバックを吹いていますね。

バックの一番のよさは、「誰とでも合うこと」だと思います。これまでいろいろな楽器を使っている人と一緒に吹いてきましたが、合わなくて困ったことは一度もありません。響きが大きいというのでしょうか、軽く明るめの音色の人でも、重めでずっしりとした音の人でも、私がちょっと吹き方を考えるだけで合わせられます。今はオーケストラで1番を吹いていますが、どんな人が下に来ても全然問題ありません。響きが広いので、すごくアンサンブルしやすいんです。

もう一つは、大きな音を吹いても破綻しないでよい音のままどこまでも行ってくれるところです。男性の肺活量にはどうやっても勝てないけれど対等でいたかったので、効率よく吹くやり方とか、大きな音量の感じをどう出すかいろいろ工夫して変わってきました。それで自分が変わると楽器もそれに付いて来てくれるんですね。

大学を卒業する2018年から首席を務めている大阪フィルハーモニー交響楽団は、伝統的にブルックナーなどの大編成の曲を演奏する機会が多いのですが、最初は自分だけ強い感じで目立ってしまっていたんです。それを、広い絨毯のようにオーケストラを包む響きに変えていきました。吹き方をいろいろ研究しましたが、その反応をわかりやすく出してくれたのも、この楽器でした。

一方でソロを吹くときなどは、細かいリリースやアタックなどの変化に繊細に反応してくれます。この間アッペルモントのトロンボーン協奏曲《カラーズ》を吹いたときには、「まるでトロンボーンがおしゃべりしているみたいだった」という感想をいただきました。それは私が目指していたことだったので、とても嬉しかったです。

——では、全員がバックのトロンボーンを使っているバックボーン・ジャパンでは?

福田 さっき言ったこととは逆に、同じバックを吹いていても、吹く人の個性がよく出ていると思います。そういう意味で、バックって吹いていてすごく自由な感じがするんです。楽器が演奏を決めてしまうようなことがなく、きちんと反応してくれるんですね。だからバックボーンで吹いていると、ソロのときなど吹く人の音楽性がよく表現されている感じがすごくします。録音の際プレイバックを聴くと、誰が吹いてるのかすぐわかるくらいです。でもそれでいて一緒に吹いたときにはすごくよく響いてくれるんです。

この楽器をずっと使い続けてきて本当によかったと思っています。

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1959年創刊の吹奏楽専門誌。毎月10日発売。吹奏楽の今を追い続けて60年超、学校の吹奏楽部の現場への取材やプロ奏者へのインタビューをはじめ、指導のノウハウ、楽器上達...

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