【Q&A】鳥羽咲音さん(チェロ)~バレエとオペラが大好き! まっすぐ未来を切り拓く
月刊誌『音楽の友』で、若手演奏家を紹介している連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」。当記事は雑誌のインタビューとはひと味ちがう切り口で、演奏家たちの素顔を紹介していきます。第7回は、チェリスト・鳥羽咲音さんにご登場いただきました。
1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
2005年生まれ、現在19歳。2018年第19回モスクワ若い音楽家のためのコンクール「くるみ割り人形」弦楽器部門で銅賞を受賞。14歳でソロ・リサイタル・デビュー。いま、オーケストラへの客演や室内楽などで大活躍の若きチェリストです。この12月には「無伴奏リサイタル」、2025年も多数の公演に出演が予定されています。
心から愛する舞台鑑賞
Q1 自己紹介をお願いします。
チェリストの鳥羽咲音(とば・さくら)です。オーストリアのウィーンで生まれ育ち、5歳から日本で暮らしています。現在はベルリン芸術大学に留学中です。父はヴァイオリニストで、母がピアニストなので、親子でトリオが
Q2 小学校のときに好きだった教科は?
やっぱり「音楽」ですね。合唱のとき、ピアノ伴奏をしたのが楽しかったです。
Q3 好きな食べ物は?
たくさんありますが、いちばん好きなのは「とんかつ」と「うどん」です。苦手な食べ物でも身体によいものを摂取するように心がけていて、実際に好物を食べる頻度はすごく少ないと思います。
Q4 趣味はありますか?
趣味は舞台鑑賞、卓球です。舞台鑑賞では、バレエとオペラを観るのが大好きです。予定が詰まっていて会場に足を運べないときは、動画を探して観劇しています。卓球は、ベルリン芸術大学で師事しているイェンス・ペーター・マインツ先生のレッスン室に折りたたみ式の卓球台があって、練習のちょっとした間やレッスンが終わったあとなどに友達と楽しんでいます。この卓球台は、マインツ先生のお弟子さんたちが先生に誕生日プレゼントとして贈ったものらしいです。
Q5 最近感動した芸術作品を教えて。
1月にベルリン州立歌劇場で観た、ヤナーチェクのオペラ《イエヌーファ》です。観ながらボロボロ泣きました。とくに感動したのはイエヌーファとラツァが歌うラストの二重唱です。じつはオペラで泣いたのはこれまでもあって、2022年にドレスデン歌劇場でヴェルディ《椿姫》を観たときは、もっとボロ泣きでした。いまは学生券を活用して、ひたすらいろいろな公演を観にいっています。
Q6 1ヵ月にどのくらい観劇に行っている?
決して多くないと思うのですが、月に5~6回は出かけています。この間、指揮者の出口大地さんとお話ししたときに「学生時代は1年に100公演ぐらい観にいっていた」ときいて、これはレヴェルがちがうと思いました(笑)。
チェロで《24のカプリース》を弾きたい!
Q7 ベルリン芸術大学で師事しているマインツ先生はどんな先生?
マインツ先生は曲の背景や歴史を大切にされ、そこから考えられる・生まれるフィーリングをどのように音に移していくか、その技術的なテクニックを教えてくださいます。先生のもとでは、とくにJ.S.バッハの演奏を究めたいと思っています。なぜかというと、工夫がきめ細かに施されていながら、シンプルでナチュラルに聞こえる先生のバッハ演奏が大好きだからです。
Q8 好きな作曲家は?
日によって変わりますね(笑)。今日はチャイコフスキーです。
Q9 いつか演奏してみたい作品は?
パガニーニ《24のカプリース》を、チェロで弾いてみたいです。2~3年前からサラサーテ《ツィゴイネルワイゼン》を弾いていて、次はパガニーニに挑戦したいと思っています…… !!
Q10 憧れの演奏家は?
指揮者のトゥガン・ソヒエフさん、ピアニストのマルタ・アルゲリッチさん、そしてヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターさんです。
ソヒエフさんの創りあげる音楽、音が大好きです。アルゲリッチさんは母親の影響もあり、これまでたくさんの演奏会を聴きに行っています。聴くたびに、そのすばらしさに感動し、世界トップの演奏家だと感じます。
アンネ=ゾフィー・ムターさんは、小さいころからその演奏と技術に惹かれていました。2023年からアンネ=ゾフィー・ムター財団からフランスの楽器「ジャン=バティスト・ヴィヨーム」(1840年製)を貸しいただいていることもあって、うれしいことにムターさんと何度か共演する機会をいただけました。いまは尊敬する気持ちが大きいです。
Q11「Q10」で挙げたアーティストで、とくに好きな演奏は?
ソヒエフさんはやっぱりチャイコフスキー作品。アルゲリッチさんは、ラヴェル「ピアノ協奏曲」。ムターさんは好きな演奏がありすぎて…… とくに好きなのはシベリウスとチャイコフスキーの協奏曲ですね。
Q12 練習にルーティンはある?
開放弦、スケールを弾くことからはじめ、指ならしとして、勉強している曲のいちばん難しいパッセージをゆっくり練習します。
Q13 楽器の練習を「辛い」と感じたこと、時期はある?
チェロを始めたころは基礎練習において心が折れそうになったことはあります。ですが、いまは辛さを感じることはまったくありませんね。自分が表現したい気持ちを音に出せないときは、辛さよりも悔しさを覚えます。練習を積み重ねて、思うとおりの「音」を実現できたときは、喜びと誇りを感じます。
無伴奏リサイタルに挑戦!
Q14 気分転換はどのようにしてる?
お散歩です。ここ最近ですばらしさに気がつきました。健康にもいいですし、週に3回ほどはお散歩しています。歩くことによって「無」になれる、そういう時間も大切だなと感じます。
Q15 1日お休みがあったら、何がしたい?
ハイキングに行って、自然に囲まれたいです。8月に人生で初めてのハイキングをザルツブルクのダッハシュタインで体験しました。山は、登っていくとどんどん景色が変わっていくところ、そして自分の心の変化も客観的にとらえられるところがすごくおもしろいなと思いました。途中でふと知っている曲のメロディを思い出したりして、自分のなかで新しい音楽のインスピレーションも得ることができました。これからも時間があるときに行きたいなと思っています。
Q16 最近読んでおもしろかった本はある?
チェリストのアンナー・ビルスマさんの自伝『新装版 バッハ・古楽・チェロ アンナー・ビルスマは語る』(アンナー・ビルスマ著、渡邊順生著、加藤拓未編・訳/アルテスパブリッシング)です。バッハについて書かれていた部分がとても勉強になりました。
Q17 好きな映画はある?
『マイ・フェア・レディ』(監督:ジョージ・キューカー)です。幼いころ、繰り返し観ていました。大人になったいま、見直したいと思っています。最近は『ゴッドファーザー』(監督:フランシス・フォード・コッポラ)を観たのですが、すごく感動しました。早く続編を観たいなと思っています。
Q18 会ってみたい作曲家は?
モーツァルトとベートーヴェンですね。話すというより、実際に彼らが作曲している姿を見てみたいです。
Q19 自身の世界観を変えた言葉はある?
リッカルド・ムーティさんからいただいた「Be prepared at all times」です。つねに準備をしなさい、備えなさい、という意味なのですが、その言葉はこれまでの自分の習慣を変えました。日ごろから準備を重ねていれば、予想しない事態が起きたときに冷静に対応できます。いつでも心のゆとりを持てるように心がけています。
Q20 12月15日の「無伴奏リサイタル」(宗次ホール)への意気込みを!
無伴奏リサイタルは今回が初挑戦です。J.S.バッハからピアッティまで、作品の個性が強いものを並べコントラストに富んだプログラムに仕上げました。バッハ「無伴奏チェロ組曲第6番」とリゲティ「無伴奏チェロ・ソナタ」は、マインツ先生に直接習ったものをみなさんにお届けしたいと思い選曲しています。ベルリンで勉強するなかで周りから得た影響やインスピレーションなどを、今回のリサイタルで音に込めたいと思います。
日時:12月15日(日)14:00開演
会場:宗次ホール
曲目:リゲティ「無伴奏チェロ・ソナタ」、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第6番」ニ長調 BWV1012、黛敏郎《BUNRAKU》、ヒンデミット「無伴奏チェロ・ソナタ 」op.25-3、ピアッティ《無伴奏チェロの12のカプリース 》op.25から「第7番」
問合せ:宗次ホールチケットセンター 052-265-1718
公演詳細はこちら
▼東京フィルハーモニー交響楽団:①2月14日・すみだトリフォニーホール/②2月16日・千葉市民会館▼オーケストラ・アンサンブル金沢:3月9日・アクトシティ浜松▼京都市交響楽団:4月13日・京都コンサートホール/▼小林海都:2月22日・所沢市民文化センター ミューズ
※それぞれの詳細は鳥羽咲音公式HPを参照
『音楽の友』1月号(12月18日発売)の連載「フレッシュ・アーティスト・ファイル」では、鳥羽咲音さんのインタヴュー記事を掲載。ぜひ併せてご覧ください!
「音楽の友」2025年1月号記事詳細はこちら
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