
菊池洋子がバレエの名曲を集めたアルバム~バレエ愛を込めて夢の舞台へ誘う

菊池洋子さんは、2002年第8回モーツァルト国際コンクールにおいて日本人として初めて優勝し、以後ヨーロッパと日本を拠点に活躍するピアニスト。近年はウィーン国立バレエ団での演奏も話題となっている彼女が、このたびバレエの名曲を集めたCD『バレエ・ファンタジー』をリリース。バレエに対する愛情や楽曲への思い入れなどを伺った。

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...
《白鳥の湖》でバレエの魅力に開眼 ザハロワと共演も
――演奏をお聴きして、バレエの華麗な舞台、バレエダンサーの優美かつ力強い「パ」(ステップの総称)が見えてくるようでした。菊池さんとバレエのかかわりについて教えてください。
菊池 10年以上前に、ベルリン国立バレエ団のチャイコフスキー《白鳥の湖》を観たのがきっかけで、バレエの魅力にハマってしまいました。一瞬で夢の世界につれていかれるような感覚があり、音楽やダンサーの踊りはもちろん、衣装や舞台美術などによる“総合芸術”に圧倒されてしまったのです。それから毎晩のようにバレエを観に行くようになりました。
――バレエ・ファンでいらした菊池さんですが、いまではウィーン国立バレエ団をはじめ、さまざまなバレエの舞台で演奏されています。
菊池 いろいろな作品を観ているうちにピアノ演奏で踊られる作品の存在を知り、“バレエとコラボしたい!”というのを周りになるべく言うようにしていたんです。そうしたら東京バレエ団の公演などに声をかけていただけるようになり、「世界バレエフェスティバル」でも演奏させていただきました。
2021年にはスヴェトラーナ・ザハロワ*さんと《瀕死の白鳥》を共演することもでき感無量でした。ウィーン国立バレエ団でも演奏する機会をいただくようになり、今シーズンも2つのプロダクションにピアニストとして参加します。
*スヴェトラーナ・ザハロワ:ロシアのボリショイ・バレエ団で長年プリンシパルを務める、世界最高峰のバレエ・ダンサー

2002年に日本人として初めて第8回モーツァルト国際コンクールで優勝。その後、ザルツブルク音楽祭に出演するなど国内外で活発に活動をおこない、いまや人気・実力ともに日本を代表するピアニストの一人。2022年より毎年夏にJ.S.バッハのゴルトベルク変奏曲の全曲演奏会をおこなうほか、ウィーン国立バレエ団2026シーズンのプロダクション計11公演で、ピアノのソリストとしてウィーン国立歌劇場管弦楽団とマルティヌー「ピアノ協奏曲第1番」とラフマニノフ《パガニーニの主題による狂詩曲》を演奏するなど精力的な活動を続けている。
群馬県前橋市生まれ。田中希代子、林秀光の各氏に師事。桐朋学園女子高等学校音楽科卒業後、イタリアのイモラ音楽院に留学、ピアノをフランコ・スカラ、フォルテピアノをステファノ・フィウッツィに師事。1997年にミラノでリサイタルをおこない、同年のユベール・スダーン指揮/シチリア響のツアーのソリストに抜擢。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を3夜連続演奏してイタリアの新聞紙上で絶賛された。2009年と2018~2019年に、モーツァルトのピアノ・ソナタ全曲をフォルテピアノとモダンピアノで演奏する意欲的な企画をおこない好評を得た。近年はウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・ホーネックとのデュオのほか、バレエとオーケストラのコラボレーションに積極的に出演しており、世界的バレエダンサー ディアナ・ヴィシニョーワや吉田都、上野水香ほかと共演した。第1回上毛芸術文化賞(音楽部門)受賞。2007年第17回出光音楽賞受賞。2025年9月には『菊池洋子&山下一史・大阪交響楽団のベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集Vol.2』をキングレコードよりリリース
――菊池さんご自身はバレエを踊られることはあるのでしょうか?
菊池 バレエではなく、日本舞踊をやっていました。ただ、母がバレエが大好きで、女の子が生まれたらバレリーナになってほしいという願いがあったそうなんです。私がバレエを大好きになり、演奏もさせていただくようになったら“夢を叶えてくれてありがとう”とほんとうに喜んでくれました。
バレエ・ファンもクラシック・ファンも多くの発見があるアルバム
――今回のCDは、やはりバレエとのかかわりが深まったところから生まれたのでしょうか?
菊池 もちろんそれもあるのですが、2023年にリリースしたCD『ゴルトベルク変奏曲』の“答え”のような意味を持って録音しました。あの時期はちょうどコロナ禍やロシアとウクライナ、イスラエルとガザの情勢があり世界が不安に包まれていたので、すべての人間にとって欠かせない“歌”と“踊り”が散りばめられた、静と動に満ちた作品を演奏したかったのです。演奏することで、私自身も自分に向き合う機会を得ました。ですから次に録音した『子守歌ファンタジー』と、今回の『バレエ・ファンタジー』は、私にとって『ゴルトベルク変奏曲』の続きの“変奏”のような感覚があり、つながっているものなんです。

――チャイコフスキーの三大バレエや《コッペリア》など、名作ぞろいのアルバムですね。
菊池 大好きな楽曲を集めたのはもちろんですが、作曲家同士の関わりや影響についても感じていただけるような選曲と構成にしています。また振付家のバランシンが実は作曲もしていて、幸運にも楽譜を手に入れられたので今回録音することができました。シンプルですが、とても魅力的な楽曲です。そして私のルーツでもある日本舞踊の楽曲も入れています。音楽を愛する方にとっても多くの発見をしていただけると思いますし、ぜひバレエをお好きな方にもこのCDをきっかけに、“クラシック音楽っていいな”と思っていただけたら嬉しいです。
[KICC-1640]
【収録曲】
①チャイコフスキー(タネーエフ編):「くるみ割り人形」組曲【小序曲/行進曲/こんぺいとうの踊り/トレパック/アラビアの踊り/中国の踊り/葦笛の踊り/花のワルツ/アンダンテ・マエストーソ】*
②同:子供のアルバムOp.39~甘い夢
③同(ワイルド編):「白鳥の湖」~四羽の白鳥の踊り
④サン=サーンス(ジロティ編):白鳥
⑤ブルクミュラー:アダンの「ジゼル」~村人のパ・ド・ドゥ*
⑥グラズノフ:パストラールOp.42の2
⑦同(ジロティ編):「ライモンダ」~ピツィカート*
⑧同:子守歌*
⑨ドリゴ:セレナーデ
⑩ドリーブ(ドホナーニ編):「コッペリア」~スワニルダのワルツ
⑪モニューシコ(クラマー編):クラコヴィアク*
⑫ヨハン・シュトラウス:「シンデレラ」~鳩のワルツ*
⑬ハチャトゥリヤン(エシュパイ編):「ガイーヌ」~剣の舞
⑭バランシン:世界は急速に変わる*
⑮三世杵屋正次郎(宮原禎次編):元禄花見踊*
⑯群馬県民謡(中村八大編):八木節*
*世界初録音
ピアノ:菊池洋子
定価:¥3,300(税抜価格 ¥3,000)
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