インタビュー
2019.07.13
7月13日から日本ツアーがスタート!

モーリス・アンドレ賞など輝かしい受賞歴! 18歳にしてジャンルを超えた期待の新星トランぺッター、ルシエンヌの素顔

フランスのトランぺッターといえば、巨匠モーリス・アンドレを真っ先に思い浮かべるが、そんな柔らかい音色で驚異的なテクニックをもつ、天才肌が日本ツアーを行なう。その名もルシエンヌ。クラシックやジャズというジャンルさえも軽々と乗り越えていく彼女の素顔とは?

取材・文
よしひろまさみち
取材・文
よしひろまさみち 映画ライター・編集者

音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...

写真:武藤章

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協奏曲を練習代わりに!?

――トランペットとの出会いはいつどんなきっかけだったんですか?

ルシエンヌ 私が9歳のときですね。トランペットは自らすすんで始めました。小さいころから、ピアノを学んでいたんですが、トランペットと出会ったのはソルフェージュの授業のとき。初めてトランペットに触れる機会をもったんですが、それで一気に惚れこんでしまったんですよ。

――そこまで惚れ込んでしまった理由はなんだと思います?

ルシエンヌ もう、本当に全部だったんですよ(笑)。まずルックスもかっこいいし、音を出したときの感覚も音色も華やかだし、構えたときのスタイルを見てもすべてが素敵。しかも、マウスピースを初めて口に当てたときから音は出たので、トランペットにつけても難なく音を出すことができました。

今思い返すと、ピアノを弾き始めたときよりもむしろ、トランペットのほうが自然となじんだ感じがしますね。

――最初から音が出たのは運命ですね。特に力を入れている練習法は?

ルシエンヌ 始めたときも今も、練習に関してはあまり変わったことはしてないんですよね。ただ、いわゆる教則本の練習曲を吹くのではなく、協奏曲などの譜面を練習代わりに演奏しています。あ、もちろんベーシックな教本も一応はやったことがあるんですけど、私の練習にはあまりフィットしなかったんですよね。

この練習法をすすめてくれたのは先生です。9歳のときからずっと同じ先生についているんですが、先生が私を一番理解して伸ばしてくれているんですよ。私がやりたいようにやらせてくれるので。どんなときでも勇気づけてくれる存在ですね。

――普段支えてくれるのは、先生が一番大きい存在?

ルシエンヌ う~ん……。先生よりも母かな(笑)。いつも家族がサポートしてくれるから、私がのびのびと演奏できるんですよ。

柔らかくまるい音色が個性

――そのせいか、とても柔らかい音色が特徴なんですよね。なにもストレスがないというか、リラックスした音色というか。

ルシエンヌ トランペットを始めたときから、柔らかい音色が好みだったんです。じつは聴くのは弦楽器の演奏が好きなので、弦のボウイングの柔らかな音色に影響を受けているのかも。

トランペットはパーっと華やかなイメージもありますが、私が強く惹かれるのはジャジーでまるい音色。でもそれって人によって、さまざまありますよね。歌と一緒で、一人ひとり音色が違い、目立つ楽器のぶん、個性が強いのがトランペットの良さの一つだと思います。トランペットで歌を歌っている感覚なんですね。

――ステージで演奏するときはいつも裸足ですが、それはリラックスするため? それとも別の理由があるんですか?

ルシエンヌ 普段からずっと演奏するときは裸足なので、いつもと同じ環境で演奏している気分になれるから、というのがありますね。でも、演奏会本番で裸足でいることで、もっと大きな効果が得られるんですよ。それは、演奏全体のバイブを感じることができるってこと。それがライブのときは、セッションに大きな影響を与えてくれるんです。もちろん、ライブのときだけでなく、レコーディングのときも裸足で演奏していますから、足から伝わるバイブによって、演奏にもいい影響が出ていることは、CDを聴いていただいてもわかるかと思います。

ジャンルにこだわらずに演奏して喜んでもらいたい

――クラシックだけでなく、ジャズやポップスなど、ジャンルにこだわらないスタイルはどうして?

ルシエンヌ 逆に、ジャンルにこだわる人の気持ちがよくわからないんですよね。だって、演奏会やライブは、とにかくお客さんの前で演奏して、お客さんに喜んでもらうのが目的。私はそれをステージから見ているのが好きなんですよね(笑)。

だから、一つのライブや収録媒体で、特定のジャンルにこだわることなく、どんどん混ぜていってます。そうすることで、たとえばそれまではクラシックしか聴いていないというお客さんも、いろんなジャンルの音楽を知ることができて一石二鳥でしょ? 

私が演奏するなかでも、特にジャズは一般になじみが薄いジャンルだと思っています。でも、ジャズの表現は、他のジャンルにはできない歌いあげるようなスタイルが無限にあるんですよね。演奏するのも楽しいですし、この楽しさをお客さんにも体験してもらいたいので、スタンダードからモダンを織り交ぜてジャズを取り入れています。

――メジャーデビューアルバムの『歌うトランペット』はどのようにして選曲したんですか?

ルシエンヌ 私がこれまで愛聴してきた曲ばかりで、自然とリストアップできました。もちろん、このアルバムに収録しきれないほどのアイデアがあったんですが、それはまたの機会にしようと思ってます(笑)。

The Voice of The Trumpet / ザ・ヴォイス・オヴ・ザ・トランペット

――プライベートの趣味や好きなことはなんでしょう?

ルシエンヌ 趣味もトランペットなんですよ(笑)。音楽そのものが趣味で、生活から切り離すことができませんね。音楽に付随しているカルチャーとしては、映画かな。オールジャンル観ますが、特にウディ・アレンの作品が好き。あと好きなのは食べることと寝ること?(笑)

――日本では女性のトランペット奏者が男性よりも少ないんですが、彼女たちにアドバイスを。

ルシエンヌ へぇ~……日本にはまだそんなジェンダー差があるんですね。男性だろうが女性だろうが、トランペットは演奏を楽しむことが一番。女性の間にもトランペットの楽しさがもっと広まってくれると嬉しいですね。

ルシエンヌ・ルノダン=ヴァリ(Lucienne Renaudin-Vary)

1999年、フランスのサン=セバスティアン=シュル=ロワール生まれ。幼少期よりトランペットなどの楽器を学び、2007年からConservatoire du Mansでフィリップ・ラフィットにトランペットを師事。2014年、パリ国立高等音楽学校のクラシックとジャズ両方のトランペット科に入学。11歳から17歳の間にパリ・クレドール・コンクールや、若手音楽家の登竜門であるフランス・クラシック音楽賞の「レヴェラシオン」部門賞、モーリス・アンドレ賞などを受賞。クラシック、ジャズのみならずポピュラー曲までカバーする期待の新星。使用楽器はコンクールの賞品で獲得したスペインのストンヴィ・Titanシリーズ。マウスピースはヤマハ16C4。
公演情報
リサイタル

7月13日(土)[東京]武蔵野市民文化会館(問)0422-54-8822

辻井伸行(ピアノ)、ルシエンヌ(トランペット)、パトリック・ハーン指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢

7月17日(水)[岐阜]高山市民文化会館(問)高山市文化協会 0577-34-6550

7月18日(木)[石川]石川県立音楽堂 コンサートホール(問)石川県立音楽堂チケットボックス 076-232-8632

7月19日(金)[東京]サントリーホール(問)チケットスペース 03-3234-9999

7月21日(日)[長野]軽井沢大賀ホール(問) チケットスペース 03-3234-9999

7月22日(月)[東京]東京オペラシティ コンサートホール(問)チケットスペース 03-3234-9999

7月24日(水)[秋田]秋田市文化会館 大ホール(問)秋田テレビ事業部 018-866-8030

7月25日(木)[宮城]東京エレクトロンホール宮城(問)仙台放送 022-268-2174

7月27日(土)[岩手]盛岡市民文化ホール 大ホール(問)盛岡市民文化ホール 019-621-5100  岩手めんこいテレビ 019-656-3300

7月28日(日)[青森]リンクステーションホール青森(問)一般財団法人青森市文化スポーツ振興公社 017-773-7300

 

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取材・文
よしひろまさみち
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よしひろまさみち 映画ライター・編集者

音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...

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