プレイリスト
2020.08.16
おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—第6回

「主よ、御目は信仰を顧みたまう」——三位一体後第10主日

音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノやオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏。音...

エル・グレコ作『神殿の清め』。「ルカによる福音書」第19章、神殿の境内で商売をする人々を追い出すイエスを描いている。

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2020年8月16日は、キリスト教暦の三位一体後第10主日。1726年のこの日、8月25日にライプツィヒの教会の礼拝で演奏された「主よ、御目は信仰を顧みたまう」BWV102をお届けします。

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その日朗読されたのは「ルカによる福音書」第19章の41から48。受難を前にエルサレムに近づいたイエスが、町の未来を憂いて泣き、神殿で商売をしている商人たちを追い出して、人々に教えはじめる箇所です。

 

19:41エルサレムに近づき、都が見えたとき、イエスはその都のために泣いて、 19:42言われた。「もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら……。しかし今は、それがお前には見えない。 19:43やがて時が来て、敵が周りに堡塁※を築き、お前を取り巻いて四方から攻め寄せ、 19:44お前とそこにいるお前の子らを地にたたきつけ、お前の中の石を残らず崩してしまうだろう。それは、神の訪れてくださる時をわきまえなかったからである。」 19:45それから、イエスは神殿の境内に入り、そこで商売をしていた人々を追い出し始めて、 19:46彼らに言われた。「こう書いてある。『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』ところが、あなたたちはそれを強盗の巣にした。」 19:47毎日、イエスは境内で教えておられた。祭司長、律法学者、民の指導者たちは、イエスを殺そうと謀ったが、 19:48どうすることもできなかった。民衆が皆、夢中になってイエスの話に聞き入っていたからである。

新共同訳聖書より「ルカによる福音書」第19章41~48

※堡塁(ほうるい/敵の攻撃を防ぐために石などでつくる陣地)

冒頭の合唱に、堕落したエルサレムの様子を嘆く旧約聖書「エレミア」5の3の「あなたが彼らを打てども、彼らは痛みを覚えないし、彼らは自らを改めようとしない。彼らの表情は岩よりも硬く、頑なに立ち返ろうとしない」という聖句が用いられ、全曲を通して厳しい情感に覆われています。

その後の曲も、悔い改めない頑なな魂はわざわいであり、神の怒りを招くだけ。悔い改めよと歌い、最後に全員で「今日あなたが生きるなら、今日悔い改めなさい、明日が来る前に、すべてが変わり果ててしまうかもしれない。今日健やかな者も明日には病を得て死ぬこともあるのだから」というコラールを合唱して曲を閉じます。

実はこの曲は、先週のカンタータ「私はこの世に何を求めよう」に続いて作曲されました。この頃、バッハの身近に優れたフルート奏者がいたのでしょう。本日のカンタータの初演版にもテノールのアリア「恐れおののけ、安穏と過ごす魂よ!」にかなり難しいフルートのパートがあり、まさに恐れおののくようなテノールのパッセージとともに緊迫感を高めています。おそらくその数年後に再演されたのですが、その折にヴァイオリンに代えられました。冒頭、バッハ・コレギウム・ジャパンの全曲録音は再演版による演奏。フルート版(伴奏は通奏低音のみ)のテノールのアリアもお聴きいただきます。

「恐れおののけ、安穏と過ごす魂よ!」(フルート版)

那須田務
那須田務 音楽評論家 

ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノやオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏。音...

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