「主なる神よ、私たちは皆あなたを讃えます」BWV130——聖ミカエルの祝日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
本日、9月29日は大天使聖ミカエルの祝日(ミカエル祭/非移動祝日)です。ミカエルはルシファーなどの天使たちが謀反を起こしたときに天国の天使軍の総帥として活躍したことから、悪魔との戦いの守護者として敬われています。
バッハは、このミカエル祭のためにいくつもカンタータを書いていますが、本日は1724年の9月29日に初演された「主なる神よ、私たちは皆あなたを讃えます」をお聴きいただきます。
ミカエルの祝日の礼拝にはいつもの福音書ではなく、使徒書「ヨハネの黙示録」第12章7〜12節までが朗読されました。最後の審判のときにヨハネが目撃した、ミカエル率いる天使軍と人類を惑わす竜や蛇や悪魔、サタンらとの戦いの様子を幻想的に描いています。
12:07さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、 12:08勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。 12:09この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。 12:10わたしは、天で大きな声が次のように言うのを、聞いた。「今や、我々の神の救いと力と支配が現れた。神のメシアの権威が現れた。我々の兄弟たちを告発する者、昼も夜も我々の神の御前で彼らを告発する者が、投げ落とされたからである。 12:11兄弟たちは、小羊の血と自分たちの証しの言葉とで、彼に打ち勝った。彼らは、死に至るまで命を惜しまなかった。 12:12このゆえに、もろもろの天と、その中に住む者たちよ、喜べ。地と海とは不幸である。悪魔は怒りに燃えて、お前たちのところへ降って行った。残された時が少ないのを知ったからである。」
新共同訳聖書より使徒書「ヨハネの黙示録」12章7〜12節
バッハのカンタータ「主なる神よ、私たちは皆あなたを讃えます」130番は同名のコラール(ブルジョワ作曲、歌詞はメランヒトンによるラテン語詞をエーバーがドイツ語に翻訳したもの)をもとにしたコラール・カンタータです。編成は4人の独唱者と合唱、トランペット3、ティンパニ、フルート、オーボエ、弦楽と通奏低音。
1曲目の合唱から、神の世界を表わす3本のトランペットがティンパニとともに大活躍。天の軍団の戦いの様子を彷彿させる力強い音楽は聴くだけで勇気百倍。合唱の歌うコラールの第1節の歌詞は「主なる神よ、私たちは皆あなたを讃えます。あなたに感謝を捧げます。あなたの玉座の周りを飛翔する天使たちの創造に……」。
続いてアルト(レチタティーヴォ)が高らかに宣言するように、天使の高い知恵が、神がどれほど私たち人間を顧みているかを示し、「彼らは休むことなく神の栄光を讃えている」と述べると、バス(アリア)が年老いた竜の反撃の様子を歌います。
ここでいったん音楽は穏やかになり、ソプラノとテノール(レチタティーヴォ)が、昼も夜も天使の群れが私たちを見守ってくれることの幸いを語ります。そしてテノール(アリア)が大天使ミカエルに、「いと高き勇者たちの群れをいつまでも信じる者たちに仕えさせてください」と祈るように歌い、神を讃美し、感謝するコラールで曲を閉じます。
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