クリスマス・オラトリオ第2部「このあたりに羊飼いおりて」——降誕節第2日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
おはようございます。本日は降誕節(クリスマス)第2日。
野宿する羊飼いたちにイエス誕生を知らせる場面です。テノール(福音書記者)に、ソプラノとアルトとバス、合唱と管弦楽。
1曲目のシンフォニアは、飼葉桶で寝ている幼子イエスを、木管楽器の柔らかな音楽で優しく包み込みます。
そして福音書記者が「その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使たちが近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた」(「ルカ」第2章第8節)と語ります。
ここで合唱が、クリスマスのためのコラール「目覚めよ、わが弱き心よ」を歌います。「麗しき朝の光よ夜を明け染めよ、羊飼いの民たちよ、恐れることはない。天使たちがこの、か弱い幼子が私たちの慰めと喜びであり、悪魔を屈服して平和をもたらすことを告げるのだから」。
福音書記者とソプラノの天使(レチタティーヴォ)。まず福音書記者が「そして天使は言った」と告げると、天使が「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれたになった。この方こそメシアである」と宣言します。(同第10~11節)
バス(レチタティーヴォ)が「神はアブラハムへの約束が成就したことを羊飼いの群れに告げ知らせた」と言い、テノール(アリア)が「喜びの羊飼いたちよ、急げ、ためらう前に。愛らしい御子に会うために」と歌います。穏やかな歌にフルートが甘い喜びの響きを添えます。
再び福音書記者(レチタティーヴォ)。「あなたがたは、布にくるまって飼葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへの“しるし”である」(同12節)。
ここでいったん合唱がゲールハルトの降誕節のコラールを歌います。「見よ。あの薄暗い馬小屋に眠るお方を。そのお方の力はあまたに及ぶ。かつて牛が餌を食んでいたところに今、乙女の子が憩う」。
今度はバス(レチタティーヴォ)が羊飼いたちに、「さあ行くがいい。御子のところへ。驚くべき御業を見るために。硬い飼葉桶に眠るひとり子のかたわらで子守歌を歌え、声を合わせて」と語り掛けると、アルト(アリア)が天使の子守歌を歌います。「眠れ、わたしの愛しい御子よ、安らかに……」
続いて福音書記者(レチタティーヴォ)が聖句を語り「すると、突然、この天使に天の大軍が加わり、神を讃美して言った」(同第13節)、合唱が天使たちの言葉を歌います。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」(同14節)。
それを聴いたバス(レチタティーヴォ)が「その通りだ。あなた方天使たちよ、歓呼して歌え、今日、ことがすばらしく成し遂げられたのだから。声を合わせて歌おう」と述べて、最後に合唱のコラールで曲を締めくくります。「わたしたちはあなたに、あなたの主の懐で歌います。力の限り、讃美と栄光を。長く待ち望まれた方よ。ようやくお姿を現されたのだから」。
聖書の個所は新共同訳『聖書』日本聖書協会1999年より引用。
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