クリスマス・オラトリオ第3部「天を統べたもう者よ」——降誕節第3日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
おはようございます。本日はクリスマスの3日目。クリスマス・オラトリオの第3部、ルカの羊飼いたちのベツレヘム訪問と、幼子イエスとの出会いの場面です。
1曲目はシンフォニア。トランペット3とティンパニを伴う、壮麗な管弦楽とともに合唱が「天を支配するお方よ、どうか私たちの話を聞き入れてください。私たちは今こそあなたを怖れ敬います。私たちの幸福が確かなものになったのだから」と歌います。
そこで福音書記者役のテノール(レチタティーヴォ)が、「天使が離れて天に去ったとき、羊飼い達は(互いに)話し合った」(「ルカ」第2章15節)と述べると、羊飼いたちが「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が告げ知らせてくださったことを見に行こう」と合唱します。
続いてバス(レチタティーヴォ)が、「主は主の民を慰められた。イスラエルを解き放ち、私たちの嘆きを終わらせた。羊飼いたちよ、見よ、これが主の御業なのだ」と語り、合唱もまたコラールで主の御業に想いを馳せます。「これらのすべては、私たちにその偉大なる愛を示すためになさったのだ。キリスト者たちは喜び、感謝を捧げよう。主よ、憐れみたまえ」。
今度はソプラノとバスの二重唱です。「主よ、あなたの同情や憐れみは、私たちを慰め、私たちを解き放ってくださいます。あなたの慈しみと愛、愛の情熱が父なる神に対する誠実な心を再び新たにしてくださる」。
さらに福音書記者(レチタティーヴォ)が聖書の物語を続けます。「そして急いで行って、マリアとヨセフ、また飼葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。その光景を見て、羊飼いたちは、この幼子について天使が話してくれたことを人々に知らせた。聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらの出来事すべてを心に納めて、思い巡らしていた」(同第18節)
それを受けてアルト(アリアとレチタティーヴォ)が、「私の心よ。この至福の奇蹟をおまえの信じる心に入れ、閉じておこう。神の御業がいつもお前の弱い信仰を強めてくださいますように」とマリアの心を歌い、さらに「そうです。私の心はこの愛しい時に確かな証として示されたことを大切にしまっておかなければなりません」と言うと、合唱が「私はあなたを一生懸命に心にとどめ続けます。私はあなたのためにここに生きる」とコラールを歌います。
最後に福音書記者が、「羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて天使の話したとおりだったので、神をあがめ、讃美しながら帰って行った」(同第20節)と聖句を語り、合唱がコラールの一節「喜べ、あなた方の救いがここに神、人として生まれたのだから。その方は主であるキリスト」を歌い、さらに冒頭の合唱曲を繰り返して曲を閉じます。「天を支配するお方よ、どうか私たちの話を聞き入れてください……」。
聖書の個所は新共同訳『聖書』日本聖書協会1999年より引用。
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