クリスマス・オラトリオ第5部「栄光あれと、神よ、汝に歌わん」——新年後第1日曜日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
おはようございます。本日は新年後の最初の日曜日。《クリスマス・オラトリオ》第5部をお届けしましょう。
東方の3人の博士(占星術の学者)がイエス誕生の知らせを聞いたことや、当時のユダヤの統治者ヘロデ王が不安を抱いた様子などが描かれます。
なお、これまで福音書記者のテキストは「ルカ」でしたが、ここからは「マタイによる福音書」です。
合唱が元気よく「神よ、あなたを讃える歌が歌われますように。讃美と感謝が捧げられますように…」と歌うと、テノールの福音史家が「イエスは、ヘロデ王の時代にベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、言った」(「マタイ」第2章第2節)と述べ、さらに合唱による聖句の続きと、それに対するアルトのアリアが交互に歌われます。合唱「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおられますか」―アルト「ここに彼は住んでおられる。私と彼の喜びのために」―合唱「私たちは東方でその方の星を見たので来たのです」―アルト「この光を見たあなた方は幸いです。あなた方の救いのために現れたのだから、私の救い主よ、あなたこそその光…」。
ここでいったん合唱がコラール「あなたの輝きはすべての闇を飲み込み、暗い夜を光に代える。私たちをあなたの道に導いてください」を唱和し、バス(アリア)が「私の暗い思いにも光を与え、私の心を美しい光で照らしてください。あなたの御言葉が私の行ないの蝋燭の火となりますように」と歌います。
さらに福音書記者が聖書の続きを語ります。「これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった」(同第3節)。
続いてアルト(レチタティーヴォ)によるエルサレムの人々の恐れに対する省察です。「なぜ、あなた方は驚くのか。私のイエスが今、ここにおられるのにそれが不安などということがあろうか。イエスは人々の幸福を約束されるのだから喜ぶべきではないのか」。人々の恐れの心を表現する弦楽器のパッセージにご注目ください。
福音書記者(レチタティーヴォ)が聖書の言葉を続けます。「王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。彼らは言った。ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。『ユダの地、ベツレヘムよ、お前はユダの指導者たちの中で、決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、わたしの民イスラエルの牧者となるからである』」(同第6節)
ソプラノ、アルト、テノールが三重唱を歌います。「ああ、その時はいつ来るのだろうか。慰めはいつ来るのだろうか。いや黙れ。そのお方は既に来ておられる。イエス様、それならば私のところに来てください」。
そして最後にアルト(レチタティーヴォ)が「私の最愛のお方は既に治めておられる。そのお方を愛し、捧げる心こそ、私のイエスの玉座」と述べて、合唱によるコラールで曲を閉じます。「この心の部屋は、美しい王侯の広場ではなく暗い穴蔵にすぎませんが、あなたの恵みの光が差し込めば太陽のようになります」。
聖書の個所は新共同訳『聖書』日本聖書協会1999年より引用
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly