「イエスは眠る。私は何を望もう」BWV81——顕現節第4日曜日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
おはようございます。本日は1724年の顕現節第4日曜にライプツィヒの教会で演奏されたカンタータ第81番「イエスは眠る。私は何を望もう」を聴きましょう。
この日の礼拝では「マタイの福音書」から第8章第23~27節が朗読されました。先週は「マタイによる福音書」の百人隊長の僕(しもべ)を癒した事績の個所でしたが、今週はその奇蹟に感動した弟子たちがイエスに弟子の覚悟を語り、イエスとともに舟に乗ったものの、イエスが眠っている間に激しい嵐に遭遇。イエスが風と湖を叱るとすっかり静まったというお話です。
08:23イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。 08:24そのとき、湖に激しい嵐が起こり、舟は波にのまれそうになった。イエスは眠っておられた。 08:25弟子たちは近寄って起こし、「主よ、助けてください。おぼれそうです」と言った。 08:26イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。信仰の薄い者たちよ。」そして、起き上がって風と湖とをお叱りになると、すっかり凪になった。 08:27人々は驚いて、「いったい、この方はどういう方なのだろう。風や湖さえも従うではないか」と言った。
新共同訳聖書より「マタイによる福音書」8章23〜27節
バッハのカンタータはまさに聖書のシーンを彷彿とさせます。編成はアルト、テノール、バスの独唱に合唱とリコーダー2、オーボエ·ダモーレ2、弦楽に通奏低音。さっそく聴きましょう。
この曲もカンタータ第13番と同様にコラール合唱ではなく、いきなりアルトのアリアで始まります。リコーダーの甘い響きと揺れるようなリズムが舟の上の情景を思わせます。「イエスは眠る。私の望みはどこにあろうか。死の深淵が口を開けているのが見える」。
続いてテノール(レチタティーヴォとアリア)が眠るイエスの側で不安を覚える弟子たちの心を語ります。「主よ、そんなに遠くへ行かれるのですか。あなたはなぜこの不安な苦難な時に隠れるのですか。いつもはまどろむこともなされないのに。どうかあなたの目の光で私を導いてください。この道には苦難のみが待ち受けているのですから」。その後のアリアはオペラの緊迫した場面のようです。「波立つ流れは、怒りに震えている。キリスト者は岩のごとく立ち向かうが、激流はなお信仰の力を弱めようと猛り狂う」。
そこにイエスの声。バス(アリオーゾとアリア)が「なぜ怖がるのか。信仰の薄い者たちよ」と言い、嵐に命令する歌を歌います。「黙れ、猛り狂う高波よ! 風よ、嵐よ。お前に終わりがくるように。私の選んだ子が傷つくことがないように」。
そしてアルト(レチタティーヴォ)が「なんと幸いなことでしょう。私のイエスが一言いえば、救い主が目を覚ます。すると嵐もすべての苦難が過ぎ去る」と弟子の心を語り、合唱が良く知られたフランクのコラールの一節を歌います。「あなたの傘の下で私はあらゆる敵の嵐から守られています。サタンよ、敵よ、気づくがよい。私の側にはイエスが立っておられる。どれほどの罪と地獄が私を脅かそうが、イエスは私を守ってくださる」。
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