《無色で純粋な心》BWV24——三位一体節後第4主日
音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハが生涯に約200曲残したカンタータ。教会の礼拝で、特定の日を祝うために作曲されました。
「おはようバッハ—教会暦で聴く今日の1曲—」では、キリスト教会暦で掲載日に初演された作品を、その日がもつ意味や曲のもととなった聖書の聖句とあわせて那須田務さんが紹介します。
ドイツ・ケルン音楽大学を経てケルン大学で音楽学科修士修了(M.A)。専門はピアノ曲やオーケストラ等クラシック全般だが、とくにバッハを始めとするバロック音楽、古楽演奏の...
おはようございます。本日は三位一体説後第4主日。1723年のこの日(6月20日)に、ライプツィヒの教会で演奏されたカンタータ第24番《無色で純粋な心》を聴きましょう。
この日の礼拝で朗読された聖句は、「ルカによる福音書」第6章第36から42節。イエスが憐み深くありなさい、人を裁くな、罪びとだと決めつけるな、人を赦しなさい、修行を積みなさいと説きます。
06:36あなたがたの父が憐れみ深いように、あなたがたも憐れみ深い者となりなさい。」 06:37「人を裁くな。そうすれば、あなたがたも裁かれることがない。人を罪人だと決めるな。そうすれば、あなたがたも罪人だと決められることがない。赦しなさい。そうすれば、あなたがたも赦される。 06:38与えなさい。そうすれば、あなたがたにも与えられる。押し入れ、揺すり入れ、あふれるほどに量りをよくして、ふところに入れてもらえる。あなたがたは自分の量る秤で量り返されるからである。」 06:39イエスはまた、たとえを話された。「盲人が盲人の道案内をすることができようか。二人とも穴に落ち込みはしないか。 06:40弟子は師にまさるものではない。しかし、だれでも、十分に修行を積めば、その師のようになれる。 06:41あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。 06:42自分の目にある丸太を見ないで、兄弟に向かって、『さあ、あなたの目にあるおが屑を取らせてください』と、どうして言えるだろうか。偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目にあるおが屑を取り除くことができる。」
バッハのカンタータは、アルト、テノール、バスの独唱に合唱、トランペット、オーボエ2、オーボエ・ダモーレ2、弦楽と通奏低音。ノイマイスターによる台本は聖書のイエスの言葉通り、誠意や善意を持ち寛大であれと歌います。
第1曲目はアルト(アリア)が、温かく朗らかなへ長調で「無色で純粋な、ドイツ人の誠意と善き心が、わたしたちを神と人の前で美しくする。キリスト者たちはそのような振る舞いをもって生きるべきなのです」と歌います。
続いてテノール(レチタティーヴォ)が、「正直な心は神の贈り物の一つ。今この時代にそれを持つ人が少ないのは、人々が神に願わないから。わたしたちの心は生来悪いことばかり思いめぐらしているので、良き道に行こうとするなら、神が聖霊を通して徳の道に導いてくださるしかない。神を友としたければ、隣人を欺いて敵とするな。キリスト者は鳩のように偽りも策略もなく生きよ。汝が隣人に求める姿に自分からなれ」と言い、合唱が「マタイによる福音書」第7章12節「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」を歌います。後半テンポが上がり二重フーガになって厳格で確たる印象を与えますが、これは聖書の続きの言葉「これこそ律法と予言者である」を踏まえてのことでしょう。
今度はバス(レチタティーヴォ)が、「偽善はキリストに敵対する悪魔ベリアルが産んだもの。その仮面をつけた者は悪魔の衣装を着ている。なんだって? キリスト者もそれを欲しがるのか。神に嘆こう、正直は貴重だ。悪魔の化け物は天使の姿をして心に狼がいて羊の皮をかぶっている。誹謗や中傷、断罪が世のあちこちに蔓延している。神がお守りくださりますように」と述べるとテノール(アリア)が、オーボエ・ダモーレ(愛のオーボエ)とともに「誠実と真実をあなたのすべての思考の土台としなさい。言葉と心が同じであるように。善意と有徳がわたしたちを神と天使と等しくする」と歌います。
そして最後に合唱が、ヘールマン作のコラールを歌って曲を閉じます。「おお神よ、善なる神よ、すべての賜物の源泉よ。健やかな体をわたしたちに与えてください。そこに健康な魂と汚れない魂、清らかな良心がありますように」。
「おはようバッハ」は2020年7月の三位一体節後第5主日から始まりました。皆さまとともに、教会暦に従って聴いてまいりましたバッハの教会カンタータも、今回でちょうど一巡しました。
ご愛読まことにありがとうございました。
那須田務
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