「交響曲第6番 へ長調《田園》」第3、4、5楽章——3つの楽章を統一する革新的な試み
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
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1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
3つの楽章を統一する革新的な試み「交響曲第6番 へ長調《田園》」第3、4、5楽章
しかし、交響曲第5番で見逃せないのは各楽章の自律的な美の追求だけでなく、交響曲全体を有機的関連をもったひとつの総体作品として打ち出していることである。いわゆる「運命」動機をモットーとした全曲統一と、第3楽章と第4楽章を連結させ、
(中略)
全曲の一体性を確実なものとすることに成功している。同時期の交響曲第6番は、いわゆる標題交響曲のひとつの先駆をなすものであるが、ここでも第3楽章から第5楽章までを連結させることで、全曲の有機的一体性が追求されている。こうした楽章連結はやがて、単一楽章による交響詩のような表現様式のひとつになっているとも言えよう。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)215ページより
ベートーヴェンは、《運命》の第3楽章と第4楽章で行なった楽章の連結を、「交響曲第6番 へ長調《田園》」作品68でも取り入れています。この作品は、5楽章構成を採用している点や、これより後の時代に登場する「標題音楽」や「交響詩」(風景や心情などのイメージを描写しているオーケストラ曲)を先駆けているという点で、革新的なものであると言えそうです。
「交響曲第6番 へ長調《田園》」Op.68
作曲年代:1807年暮れ〜08年初秋(ベートーヴェン37歳)
初演:1808年12月22日
出版:1809年5月ブライトコップフ&ヘルテル社(ライプツィヒ)
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