歌曲《恋人に寄せて》——3バージョンが残る男性から女性への恋心を歌った作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
3バージョンが残る男性から女性への恋心を歌った作品 歌曲《恋人に寄せて》
《アン・ディー・ゲリープテ》なので、男性から女性への恋心。
さて、このヨーゼフ・ルートヴィヒ・シュトル(1778~1815年)の詩による歌曲は、1811年9月から10月にかけて作曲に着手している。この作品は3つの稿で残されているが、第1稿は12月になる前、あるいは12月の早い時期に完成されたと思われる。第2稿の自筆譜に「1811年12月」と記されているので、これ以前に第1稿が書かれていた(現在ではこの第2稿は断片として、完成形の楽譜はない)。第3稿は1814年の5月以前の成立で、6月にはウィーンの『平和日報』という新聞に発表されている。
「おお、君の静かな瞳から、愛に満ちて輝く光に包まれて、頬をつたって流れる涙を、僕は吸い取る、大地がそれを飲む前に」「幸いなことに、涙は頬にとどまり、情熱的な誠実を捧げよう、今、僕は喜びのうちに(第1稿)/今、僕はキスをして(第3稿)受け取ろう。そうすれば、君の苦しみは僕のもの。僕のもの、僕のもの」。
第1稿はハ長調、4分の2拍子で3連音符による印象的な伴奏で始まる。ドイツ語で「速く、でも甚だしくはなく」と指示された25小節。第3稿はニ長調、4分の2拍子、アンダンティーノ、ウン・ポコ・アジタート。伴奏には3連音符はなく、16分音符の刻みが気持ちのせわしさを表現している。全25小節。
解説: 平野昭
男性の切ない恋心を歌ったロマンチックな歌曲ですね。第1稿から第3稿を聴き比べてみましょう。
歌曲《恋人に寄せて》WoO140
作曲年代:1811年、1814年(ベートーヴェン41歳、44歳)
出版:1814年(第3稿)、1826年、1836年
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