「交響曲第8番 へ長調 第1楽章」——第7番とほぼ同時期に作曲された華やかな作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1800年、30歳になったベートーヴェン。音楽の都ウィーンで着実に大作曲家としての地位を築きます。【作曲家デビュー・傑作の森】では、現代でもお馴染みの名作を連発。作曲家ベートーヴェンの躍進劇に、ご期待ください!
第7番とほぼ同時期に作曲された華やかな作品「交響曲第8番 へ長調 第1楽章」
1812年の年明けは「イ長調」交響曲の作曲中に迎えることになる。創作意欲が目覚め、3年近い空白を置いて再び交響曲創作に集中してゆくと想像力も横溢するようになり(《運命》と《田園》のときがそうであったように、ここでも同時進行で別の交響曲「へ長調」にも着手し始めた。)、さらにオペラ創作にまで意欲を示し、1月28日にはコッツェブーに宛てて手紙を書いている(BB546)。
「あなたの手になる前劇と後劇(Vor-und Nachspiel)の音楽をハンガリーの人々のために作曲している間中、あなたの個性的な劇の才能によって書かれるオペラを作曲してみたいという強い願望を抑え切れませんでした。あなたが気に入っているものなら、どんなものでも喜んでお引き受けしたいと思います」と書いた上で「私が好きなものは歴史、特に暗黒の時代に取材したもの、例えば〈アッティラ王〉といったものです」と自らの要望もはっきり述べている。しかし、コッツェブーからの返書は3ヵ月ほどあとのことになる。
この春は、完成間近の交響曲第7番の最終段階と交響曲第8番の作曲を同時進行させていたので、時間はいくらあっても足りなかった。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)127、128ページより
3年近く交響曲というジャンルから離れていたベートーヴェン。彼が「交響曲第8番 へ長調」に着手したのは、「交響曲第7番 イ長調」とほぼ同時期でした。さらにこの時期には、上記の手紙の内容からもわかるように、オペラ作品にも創作意欲を示し、そのほかにもピアノ三重奏曲も作曲しています。それは後日紹介します。
冒頭から華やかで壮大なサウンドで展開され、同じヘ長調で書かれている「交響曲第6番 へ長調《田園》」とは違った世界観を楽しむことができます。
「交響曲第8番 へ長調」Op.93
作曲年代:1812年(ベートーヴェン41歳)
初演:1814年2月27日
出版:1817年春S.A.シュタイナー社(ウィーン)
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