《連合君主に寄せる合唱》——ウィーン会議に華を添えた、君主たちに贈る歓迎の曲
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
ウィーン会議、ナポレオンの没落......激動のウィーンで43歳になったベートーヴェン。「不滅の恋人」との別れを経て、スランプ期と言われる時期を迎えますが、実態はどうだったのでしょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ウィーン会議に華を添えた、君主たちに贈る歓迎の曲 《連合君主に寄せる合唱》
昨日ご紹介したトライチュケの《良い知らせ》やオペラ《フィデリオ》がヒットした理由の背景には、その時の社会情勢が大きな影響を与えています。この《連合君主に寄せる合唱》にも、「ウィーン会議」が大きく絡んでいるのです。
「ウィーン会議」という名のお祭り騒ぎは、ベートーヴェンをはじめ多くの音楽家たちをも巻き込んでいった。おそらくメッテルニヒに近いところからの要請もあったのだろうが、ベートーヴェンは自発的にとは言わないまでもウィーン会議に関連した音楽をいくつか書いている。《ウェリントンの勝利》で得た経済的収益と民衆からの支持はベートーヴェンの愛国心に小さからぬ力を与えた。ウィーン会議開催の9月初旬にベートーヴェンはカール・ベルナルトの詩による《同盟君主における合唱》WoO95を書き上げている。
1814年に作曲される《栄光の時》と《連合君主に寄せる合唱》はオーストリア宰相メッテルニヒからの委嘱であったにせよ「ウィーン会議」に参加するヨーロッパ各国の君主、諸侯や外交官たちを歓迎する式典のための音楽であり、(中略)特定の機会のためだけに作曲された音楽である。従って、再演されることはなかった。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)145、257-258ページより
この《連合君主に寄せる合唱》と《栄光の瞬間》は式典のためだけに書かれた作品とのこと。WoO95は、聴衆の士気が高まるような明るく華やかな曲調が印象的です。ベートーヴェンの音楽は、「ウィーン会議」の盛り上がりに大きな華を添えていたに違いありません。
《連合君主に寄せる合唱》WoO95
作曲年代:1814年9月(ベートーヴェン43歳)
出版:1888年
ウィーン会議のための作品
テキスト:K. ベルナルト
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