プレイリスト
2020.12.05
おやすみベートーヴェン 第356夜【最後の10年】

「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」 第3、4楽章——初演失敗の原因はベートーヴェン? 演奏者?

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

48歳となったベートーヴェン。作品数自体は、これまでのハイペースが嘘のように少なくなります。しかし、そこに並ぶのは各ジャンルの最高峰と呼ばれる作品ばかり。楽聖の「最後の10年」とは、どんなものだったのでしょう。

ONTOMO編集部
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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初演失敗の原因はベートーヴェン? 演奏者?「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」 第3、4楽章

ガリツィン侯の依頼から長い時間がかかったものの、無事完成したこの曲。演奏者には、1798年のヴァイオリン・ソナタop.12からの付き合いがあるイグナーツ・シュパンツィヒが第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリンは信頼おけるイケメン秘書カール・ホルツ、チェロにはソナタ第5番を初演したヨーゼフ・リンケと、ベートーヴェンにとって安心のメンバーが揃いました。

しかし、1825年3月6日に行なわれた初演は大失敗!

シュパンツィヒに言わせれば、練習時間が2週間もなく、その原因の一端はベートーヴェンのパート譜作成の遅れにもあるということだった。しかし、ベートーヴェンはシュパンツィヒの指導力不足ということで、第一ヴァイオリンをシュパンツィヒから、当時注目されだしたばかりの若いヨーゼフ・ベーム(1795〜1876)に交替しての再演を要求する。

シュパンツィヒにしてみれば屈辱であっただろうが、これでベートーヴェンとの友情が壊れることはなかった。3月18日と23日にベームを第一ヴァイオリンに、他の3人はシュパンツィヒ四重奏団員で行われた再演は聴衆の喝采を得たのである。有望な若手ヴァイオリン奏者ベームが大きく成長するためのチャンスが与えられたということでもあったのだろう。

——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)192ページより

シュパンツィヒをシュパンツィヒ四重奏団から降ろしてしまうとは、一見すると深刻に見えますが、この後の弦楽四重奏曲ではシュパンツィヒが演奏者に戻っていますので、仲の良い2人の一時の喧嘩だったのでしょうか。

ヨーゼフ・ベームはこの後、名ヴァイオリニストとして、またヨーゼフ・ヨアヒムやハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンストら有能なヴァイオリニストを数多く育てた教育者として名を残します。

イグナーツ・シュパンツィヒ
ヨーゼフ・ベーム
作品紹介

「弦楽四重奏第12番 変ホ長調」Op.127

作曲年代:1824年6月~25年2月(ベートーヴェン53〜54歳)

出版:1826年3月ショット社(マインツ)

平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)
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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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