子守唄すやすやプレイリスト~眠れない夜に聴きたいクラシックの名曲10選
子守唄をテーマに書かれたクラシック音楽のプレイリストです。10人の作曲家による10作品を、“すやすやポイント”とともに紹介します。眠れない夜に聴いたら、そのうち夢の世界に……?
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
これで今夜は安眠? 子守唄プレイリスト
1. クープラン:クラヴサン曲集 第3巻 第15組曲 「子守唄、またはゆるかごの中の愛」
2. プーランク:笛吹が廃墟に子守唄を聴かせる
3. 寺内園生:組曲《クリアー》より「子守唄」
4. デュロゾワール:子守歌
5. ブラームス:5つのリート op.49 第4曲「子守歌」
6. ショパン:子守歌 変ニ長調 op.57
7. ズベイ:ララバイ
8. グリーグ:抒情小品集 第2巻 第1曲「子守歌」
9. ラヴァネッロ:前奏曲—子守唄
10. フォーレ:子守歌 ニ長調op.16
各曲のすやすやポイント
1. クープラン:クラヴサン曲集 第3巻 第15組曲 「子守唄、またはゆりかごの中の愛」
タイトルにあるとおり、ゆりかごで揺られているかのような、ゆったりとしたテンポ感に、1曲目から爆睡していただけるかもしれません。フランソワ・クープラン(1668〜1733)による、およそ220曲からなるクラヴサン曲集の中の1曲です。
もともとはクラヴサン(=チェンバロ)で演奏される作品ですが、この音源ではアーチリュートという弦楽器も使用されています。透明感のあるクラヴサンと、奥行きのあるアーチリュートの音色が、メロディと伴奏とを代わる代わる奏でるところが、この録音の“すやすやポイント”。のこり40秒からのリタルダンド(だんだんテンポが遅くなる)、そして主音で終わらない……トラックが終わった瞬間、一気に眠りの世界へ落ちそうです。
2. プーランク:笛吹が廃墟に子守唄を聴かせる
そして遠くから聴こえてくるのは、フルートの調べ。フランシス・プーランク(1899〜1963)による無伴奏のフルート独奏曲「笛吹が廃墟に子守唄を聴かせる」です。原題はUn Joueur de flûte berce les ruines とあり、「子守唄」という単語はありませんが、ゆったりとゆりかごを揺らす(berce)ような曲想であり、上述のように訳されることもあるようです。第二次世界大戦で廃墟と化してしまったフランスの街トゥールへの悲しみが込められているというこの作品。ほんの13小節からなる短い曲です。
3. 寺内園生:組曲《クリアー》より「子守唄」
繊細で透明感あふれる寺内園生(1959〜)の作品から、ピアノのための組曲《クリアー》の2曲目です。6曲からなる組曲全体が素敵なので、ぜひ全曲もチェックしてみほしいですが、今回は「子守唄」しばり、ということで。キラキラとした夢の世界を浮遊している気持ちになれます。
4. デュロゾワール:子守歌
どこか懐かしい、ほのぼのとしたメロディの子守唄です。深みのあるチェロの低音にほっとします。そして、キラキラとしたピアノのアルペジョは、やさしく髪を撫でてもらっているかのよう。安心感こそ眠りの世界への切符かもしれませんね。
作曲者のリュシアン・デュロゾワール(1878〜1955)は、大戦前までパリで活躍したヴァイオリンの名手であり、作曲家としての活動とその力量は、ようやく再評価が進んでいる人物です。
5. ブラームス:5つのリート op.49 第4曲「子守歌」
「ブラームスの子守歌」の愛称で親しまれてきた、ヨハネス・ブラームス(1833〜1897)の名曲です。ブラームスの友人(指導していた女声合唱団のメンバー)に赤ちゃんが生まれたときに書き贈った曲なんです。やさしいね、ヨハネス。
6. ショパン:子守歌 変ニ長調 op.57
王道のクラシック子守歌を続けます。ぜったい外せないのがフレデリック・ショパン(1810〜1849)の「子守歌」op.57。低音域の伴奏の音型はほとんど変化せず、高音域のメロディは即興的に歌心豊かに紡ぎ出されていきます。1848年製のプレイエルのフォルテピアノによる演奏が、夢見心地にさせてくれる“すやすやポイント”。
7. ズベイ:ララバイ
アメリカの作曲家であり指揮者のデイヴィッド・ズベイ(1964〜)による作品です。この曲が収められているアルバムには『all water has a perfect memory(すべての水には完全な記憶がある)』というタイトルが付いていて、同名の曲も収められています。青々とした広い海を見つめる一人の男性(たぶんズベイ本人)の写真がジャケットになっています。
「ララバイ」は2015年の作品。ナレーションと音楽のための作品の一部として書かれ、のちにハープ独奏用、ギター独奏用にも書き直されたもの。これはハープ独奏の音源です。
8. グリーグ:抒情小品集 第2巻 第1曲「子守歌」
それにしても、クラシックの「子守歌」は、ピアノのために書かれた作品がかなり多いことに気がつきます(このプレイリストではピアノ独奏曲に偏らないように選曲しています)。19世紀半ば以降のロマン派の時代、タイトルのついた小さなピアノ曲がたくさん生まれました(キャラクター・ピースと呼ばれます)。サロンや家庭で演奏されるような、親しみやすい作品も求められていたのです。「子守歌」という題材は、そうしたピアノ小品にぴったりだったのでしょうね。
エドヴァルド・グリーグ(1843〜1907)の「子守唄」も、そんな作品の一つ。こちらもゆりかごの揺れる様子が目に浮かぶようです。
9. ラヴァネッロ:前奏曲—子守唄
イタリアのオルガニストで作曲家のオレステ・ラヴァネッロ(1871〜1938)による作品です。絶え間なく響き続けるオルガンと、体温を感じさせるハープの音色が“すやすやポイント”です。
10. フォーレ:子守歌 ニ長調 op.16
プレイリストのおしまいは、聴きながら眠ってしまった人も、そろそろふわりとお目覚めに……ということで、爽やかなガブリエル・フォーレ(1845〜1924)の子守歌を。ヴァイオリンとピアノのために書かれた小品です。「子守歌」というわりには爽快な曲調です。
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