プレイリスト
2022.07.22
ただいまショパン第2回

モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の主題による変奏曲 変ロ長調 Op.2――「脱帽せよ! 天才だ」デビュー戦の勝負曲?

ショパンの作品を全曲聴いてみよう! ショパン自身がつけた作品番号順に聴くことで、ショパンの“設計図”が見えてきます。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

イラスト:本間ちひろ

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モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の主題による変奏曲 変ロ長調

16歳のショパンはワルシャワの中央音楽学校に入学。校長エルスネルに対位法と作曲を師事し、数々のピアノ曲を作曲しています。

エルスネルは、ほかの生徒には必修としていたオーケストラ作品を、ショパンに無理強いしようとはしませんでした。

オーケストラを使うのならば、ピアノをそこに加えたほうがいい、ショパンの才能にはピアノが必要であることをエルスネル自身がだれよりも知っていた。

そこに生まれたのが、《モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」のアリア〈ラ・チ・ダレム・ラ・マーノ〉による変奏曲》変ロ長調だ。この作品は、音楽学校在学中の1827年17歳のときに作られ、たいへんな評判となった。

——小坂裕子著 作曲家◎人と作品シリーズ『ショパン』(音楽之友社)26ページより

モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》第1幕第3場の二重唱「お手をどうぞ」を主題にした、ピアノとオーケストラのための作品です。

テーマとなったモーツァルトの二重唱

この曲は、1829年のウィーン・デビュー(場所はベートーヴェンの第九も初演されたケルントナートーア劇場)でも演奏されました。この演奏会は大成功で、ショパンは家族に宛てた手紙には「変奏曲が終わるごとに聴衆が熱狂するので、オーケストラのトゥッティが聞こえないほどだった」とあります。

1832年2月、終の住処となるパリでのデビュー・コンサートのプログラムにも、この作品を選んでいます。華やかなこの作品は、ショパンの勝負曲だったのかもしれませんね。

ちなみにドイツの大作曲家ロベルト・シューマンはこの作品に感激し、みずからが編集する雑誌で「諸君、帽子を脱ぎたまえ! 天才だ」と絶賛。ショパンにも送っています。しかし、ショパンはシューマンの熱狂ぶりに苦笑していたそうです。

作品紹介

《モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の主題による変奏曲 変ロ長調》Op.2

作曲年代:1827年(ショパン17歳)

出版:1830年

献呈:Tytus Woyciechowski ティトゥス・ヴォイチェホフスキ
ポーランドの政治活動家で、芸術家のパトロンでもあった。ショパンより2歳年上で、寄宿学校時代には連弾をしたり、その後も手紙のやりとりがあった友人。

「モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の主題による変奏曲 変ロ長調」の献呈を受けた、ショパンの友人ティトゥス・ヴォイチェホフスキ
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